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推薦入試を始めたくらいで品質が維持できない高等教育は、一度壊した方がいい

   東大が2016年より推薦入試を始めるというニュースが話題となっている。筆者自身は、企業も大学も多様な人材を入れた方が活性化するというスタンスなので、大いに結構なことだと考えているが、ネット上での議論を見ていると、どうも9:1くらいで批判されているようにみえる。

   批判者自身がどこまで意識しているかは分からないが、彼らの主張からは、以下の点が浮き彫りになっている。

「ものすごいおバカな東大生」が間違いなく量産されるけど

・大学4年間で学生は勉強なんてしない

   「入試でバカが入ってきたら、東大生の評判に傷がつくじゃないか!」と心配されているOBはとても多いが、そういう方の中では4年間で勉強して成長するケースは稀らしい。

・大学は勉強なんてしなくても余裕で卒業させてもらえる

   特に、大学教授で「推薦=卒業生のクオリティが下がる」という冴えわたる直観力を発揮されている方は、きっと単位認定もザルなのだろう。勉学に自信のない学生の皆さんに受講を強くおススメしたい。

・実は採る企業もあんまり自信がない

   「内定者に推薦枠の子が入ってたらどうしてくれるんだ!」と青筋を立てておられる企業人は、言い換えれば「面接で見抜く自信なんてないですよ」と言っているようなもんである。


   と、ビシビシ書きだしてはみたが、実は上記3点、筆者自身もかなり危惧している事実である。というか、仮に私学並みの推薦制度を導入すれば、間違いなく「ものすごいおバカな東大生」が一定数量産され、量産型バカ東大生は伝統ある大企業の現場を混乱させることになるはずだ。

茶番はおのずと変わらざるを得なくなる

   でも、筆者はそれもまた、今の日本に必要不可欠なステップだと考えている。新卒で一度入社したら定年まで雇う終身雇用はもちろん、大学の成績すら見ずインプレッションと大学名だけで40年契約をオファーする企業人事も、大して勉強してない学生にも「可」を与えてぼんぼん追い出す大学教授も、筆者はすべて茶番だと考えている。

   その一連の茶番は、良くも悪くも、偏差値というデジタルな基準が機能することで支えられている面がある。そこにイレギュラーな人材が混じることで、茶番はおのずと変わらざるを得なくなるはずだ。

   私学のAO入試は、賛否両論あるけれども、質的な変化をもたらしつつあるのも事実だ。たとえば近年普及しつつあるインターンシップは、なんとかして採用と学業の質的水準を高めようとする企業、大学双方の努力の賜物だと筆者は考えている。

   企業側は学校名だけに頼らない採用をすればいいし、大学は勉強しない学生を留年させればいいし、学生は入学したらしたで一生懸命勉学に打ち込めばいい。それこそ、日本を草の根から変える第一歩だというのが筆者の意見だ。(城繁幸)