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もし「がん」になったら かかる「費用」とかけるべき「備え」は?

   自分や身近な人ががんになったら、大きな不安に襲われる。「完治するだろうか」という心配と同時に、治療費の心配もしなければならない。日本人の国民病とも言われ、死因のトップを走るがん。一般的に、がんにかかった場合の入院費用はどのくらいかかるのだろうか。

   父親ががんを経験したというある男性は、かかりつけの内科に外科手術を勧められ、家族会議の末、紹介状を頼み込んで東京のがん専門病院に飛び込んだそうだ。

平均の「窓口負担額」はどれくらい?

入院日数が延びるほど、かかる費用が心配に
入院日数が延びるほど、かかる費用が心配に

   高齢だったこともあり10日ほど前に入院し、十分に体調を整えてから手術することになった。術後もほぼ1カ月間はベッドから離れられなかった。親の命はお金に代えられないという自負もあったが、会計の段になって不安ばかりが募った。

   しかし、そんな心配は取り越し苦労に終わった。手術した年に父親は67歳を迎えていたからだ。高齢者医療制度の恩恵で窓口負担は1割で済んだ。患者用のおむつ代にベッド代、入院食だのを入れても「えっ、こんなもんなの?」と拍子抜けしたぐらいだったそうだ。ただし、これは相当運の良かったケースだったのかもしれない。

   全日本病院協会の「診療アウトカム評価」という調査は、診療内容、治療結果に関するデータを各病院から集め、主な病気にかかる医療費をまとめている。2012年7月~9月のデータによると、診療報酬点数(医療費)を1点10円、窓口負担額を総額の3割として計算した場合は、胃がんの場合で約31万円、直腸がんで約28万円、乳がんが約25万円、肺がんは意外に安く約20万円だ。

   さらに、所得によっても違ってくるが、高額療養費制度を申請すればかなりの金額が戻ってくることになる。ただデータはあくまで平均値ということを忘れてはならない。それぞれの病状やステージ、術式によって入院日数は大きく変わってくる。日数が延びれば、費用もかさんで来ることが推測できる。

   また、高額療養費制度で返金されるのは、保険診療に関する費用に限られている。特定療養費となる差額ベッド代や病院での食事代は、高額療養費制度の対象外になり、全額自己負担になることも忘れてはならない。病院によって日額数千円程が徴収されるので、留意が必要だろう。

先進医療である「陽子線治療」を利用すると、平均約260万円

   忘れてならないのが先進医療だ。もし、局所的に限定された状態の陽子線治療を行なうとすると、生命保険文化センターのデータでは、平均約260万円の技術料がかかる。入院費や薬代は健康保険が適用されるが、技術料だけは全額本人負担となる。

   子どもの進学や老後の資金はイメージしていても、病気への備えは想定していないのでは。医療費に加えて、入院中は働けず収入がないことになる。

   大手企業ならいざ知らず、有給休暇とは別枠で傷病休暇まで備えた中小企業は少ない。そうなると、保険の備えは欠かせないのかもしれない。公的制度などをきちんと理解しておくことも、重要になるだろう。