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ミクシィの「優しすぎる配置転換」 追い出し部屋とまでは言えない

   「ミクシィが、従業員約30人をカスタマーサービス部門へ異動させた」と一部で報じられた。同社が「複数部署から」の同部門への異動を認め、事実上の追い出し部屋ではないかと話題となっている。同社グループの従業員数は430人ほど(2013年の第2四半期)だから、仮にそうだとするなら社員の6%以上が追い出し部屋に送られたことになる。それは本当に追い出し部屋なのだろうか。そして、同社の選択は正しかったのだろうか。

   通常は、コスト部門であるカスタマーサービス部門に少なからぬ人員を送る以上、同社が雇用に強い余剰感を抱えているのは間違いない。ただ、通期での初の赤字を予測しているとはいえ、まだまだ赤字が慢性化しているわけではないし、ほぼ無借金経営で現金が120億円以上ある同社の場合、整理解雇のようなハードなリストラは認められないリスクが高い(この辺りは裁判やってみないとわからず、手間と時間もかかる上、負けると同社にとっては深刻なイメージダウンだろう)。

現状の枠組みでは「合理的」だが…

   となると早期退職募集だが、これは地盤沈下中で経営刷新が必要な状況でおこなうと「逃げられる社員の背中を押す」というデメリットしかない。というわけで、なんとか雇用吸収余地のあったカスタマーセンターに余剰人員を集め、キャリアの伸び代が欲しい人は転職しろよというメッセージを送ったというのが実情だろう。

   一応は自社のための仕事も与え、強制的に転職活動させるわけでもないのだから、追い出し部屋とまでは言えないというのが筆者の意見だ。「人のつながり」を打ち出してきた同社としては、バランスのとれた合理的なアプローチと言えるだろう。

   ただし、これはあくまで現状の枠組みの中で考えた場合に"合理的"だということで、それが同社復活のために合理的かどうかはまた別の話だ。

電機各社がいつか来た道を思い出す

   恐らくもっとも同社に必要な改革は、事業内容を大幅に見直しビジネスモデルを刷新するような大手術だ。もちろんそれなりの数の従業員に去ってもらうことも必要になるだろう。幸い今はまだ現金がそれなりにあるから、リスクを取る体力も十分で、リストラ対象者への再就職支援も可能なはずだ。

   ただ、既に述べたように、現状ではそれは難しい。

   「まだ黒字事業があるから」とか「現金があるから」といった理由で"大手術"を避け続け、やがてめでたく慢性赤字になって整理解雇も出来るけど「今さらやってどうすんの?」状態に追い込まれている日本企業は少なくない。手術というものは体力のあるうちに行うべきものなのだ。

   ミクシィの優しすぎる配置転換を見ていると、電機各社がいつか来た道を思い出すのは筆者だけだろうか。(城繁幸)