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社員旅行や親睦会の意外な落とし穴 「着服リスク」はこうして高まる

   社員の絆を強めて風通しのよい職場をつくるために、社員旅行や社員寮の価値が見直されているという。皆さんの会社ではどうだろうか。

   確かに、それらの活動によって社員の連帯感が高まり、コミュニケーションがよくなれば、仕事の効率化や業績アップに役立つだろう。社員がお互いに関心をもって声を掛け合うようになれば、ミスや不正の防止にもつながる。

「職場の親睦会費84万円着服」で懲戒

親睦会はいいけれど…
親睦会はいいけれど…

   しかし一方で、親睦会費や寮費は不正リスクを高める一面もある。集めた資金を着服してキャリアを棒に振る人たちが少なくないのだ。例えば、ここ1、2年のニュースを検索しただけでも、次のような事例がヒットする。

   自衛隊駐屯地で、隊員の冠婚葬祭用積立金の監査担当者(男性、46歳)が、積立金から計14万円を横領して懲戒免職処分となり、書類送検された。「遊興費のために借りた金を返済するためだった」と容疑を認めた。

   寮の電気やガス代約34万円を着服しスロットマシンに使ったとして、県警本部に勤める男性巡査(22歳)が停職処分を受けて辞職。業務上横領の疑いで書類送検された。同巡査は、寮の会計係として、約20人の職員から毎月徴収した代金を管理口座に納めず3回にわたり流用。横領を把握しながら上司に報告しなかった別の巡査ら3人も注意処分を受けた。

   市の職員(女性、50代)が、課内の手提げ金庫で管理していた職員の親睦会費約3万5000円を着服し、停職処分を受けた。他の職員が金庫内の現金がないことに気づいて発覚。「生活費に充てた」と話している。

   都立高校の事務職員(男性、40歳)が、職場の親睦会費84万円を着服したとして懲戒免職となった。その後の調べで、転任先でも郵便切手500枚(8万円分)を不正に換金したことが判明。「生活費と家族の病気の治療費に充てた」と供述。

もうすぐ新入社員が入社、不正防止は最初が肝心

   これらはすべて公務員による不正である。公金横領に準ずる行為として、厳正な処分と公表が求められるためにニュースになりやすい。恐らく、民間企業でも同様の不正は少なからず起きているのだろうが、あまり公表されず、されても金額が少なければニュースにならないのだろう。いずれにしても、魔が差したでは済まされず、厳しい懲戒処分は免れない。

   この手の不正の発生原因としてまず挙げられるのは、親睦会費や寮費に対する管理の甘さだろう。着服されるのは職員個人の資金であり、組織の決算には影響を及ぼさないために、内部統制の対象にはなりにくい。また、仲間内で管理しているため「まさか悪いことはしないだろう」という気のゆるみも生じやすいといえる。

   しかし、もし皆さんの職場で親睦会費などを集めているのであれば、世間でこれだけの事件が起きていることを重く受け止め、次のような点から管理のあり方を見直すといいだろう。

   まず、給与天引きや口座振替をできるだけ活用し、現金のやり取りをできるだけゼロに近づけることだ。現金の動きが多くなればなるほど、着服のリスクが高まる。

   その上で、集金、口座入金、支払の手続きを1人に任せず、ダブルチェックや監査を徹底する。もちろん、預金通帳と印鑑の管理は別々にする。時々、抜打ち点検もしてみるとよい。

   担当者を定期的にローテーションさせることも必要だ。おカネの管理は面倒なので、まめな人についつい任せきりにしたくなるが、実はその人が長年にわたり……ということにもなり兼ねない。

   より重要なのは職員の意識づけだ。ほどなく4月。多くの組織に新人が加わる。新人研修でいきなり横領の話は気が引けるかもしれないが、不正防止は最初が肝心。「分不相応な生活をしない」「おカネに困ったら1人で悩まない」「1円でも横領は横領。決して許されない」「不正は必ず見つかり、キャリアは台無しになって大切な人たちを悲しませる」というメッセージをきちんと送りたい。(甘粕潔)