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「グローバルな仕事」に大事な能力とは何か

   先週まで短期で日本に帰国しておりました。GEなどグローバルな企業の要職をつとめてきた事業開発コンサルタントの方と、トークショーを行いました。

   その中で、グローバルな仕事をするために大事な能力とは何ですか?という質問がでました。英語はもちろんですが、英語を除くともっとも大事な能力というのは何でしょうか?

   異文化理解力でしょうか?

   それとも日本人としての誇りでしょうか?

   もしくは、コミュニケーション能力でしょうか?

   それとも相手の懐に飛び込む度胸でしょうか?

   もしくは、MBAといった経営の知識でしょうか?

仕事を分解して定義する能力

その件については……
その件については……

   意見が一致したのは、「仕事を分解して定義する能力」が大事だという事です。これは、多くの日本での仕事のやり方に欠けがちな部分ということでもあります。

   日本人同士で仕事をする場合、狭い部屋のなかで、密にコミュニケーションをして、阿吽(あうん)の呼吸を合わることができました。ポテンヒットのように中間におちて溢れる仕事は、誰かが自主的に拾って解決していました。その結果、精度の高い仕事ができてきました。

   グローバルな仕事では、いろいろな国籍の人が業務にあたります。文化的背景も違えば、それぞれの仕事のクセといったものも違います。日本のようなやり方では、中間におちてこぼれてしまう仕事が頻発します。

   言ったことが、ちゃんと実行されない。ああいったのに、こういうものができていた。期限を守らないといったトラブルが頻発します。

   価値観が違う人々を束ねて、コミュニケーション密度も薄いなかで、プロジェクトを進めていくという能力が、グローバルな仕事をするためには不可欠です。

   「仕事を分解して定義する能力」というのは、文字通り、これは仕事を適切に切り分け、進捗を管理して、まとめるという能力です。

・仕事(業務)のフローを定義する
・それぞれの業務を分解する
・それぞれの業務でやることを定義して、役割ごとに人にふる
・その仕事の業務のゴールや、品質の基準などを定義する
・チェックとフィードバックの仕組みを作る

仕事を定義して振って管理していく

   これは、仕事の設計能力と同義です。マネージャーの役割は、こういう仕事を定義して振って管理していくということと、中間に落ちて溢れる仕事を拾って、判断してあげることです。

   コンピュータのプログラミングをしたことがあるひとはわかると思いますが、プログラミングでは、処理の内容をしっかりと定義して、どういう情報を受け渡して、何の処理をしてもらい、どういう結果を返してもらうのか、ということを厳密に記述していかないといけません。

   仕事においても同じことが求められます。

   面倒くさいですね。

   たしかにめんどうくさい。

   しかし、これが出来ないと、なかなか仕事の規模を大きくできず、また海外の安い人材を活用してコストを抑えるということもできません。

   日本の会社が海外のアウトソーシングを使うのが下手、というのも、仕事の内容を適切に分解して定義することが苦手だという背景があります。

   更に、在宅ワークができず毎日オフィスにいかないと仕事がすすまない、といったことも、根本にはこの問題があると思います。

   さて、このような能力はどのようにしたら身につくのでしょうか?

プログラミングを勉強すると…

   2つの提案があります。

   ひとつは、あえてコミュニケーションを分断してみるということです。つまり、在宅だったり、海外とやりとりしたりという状況を擬似的につくってみるのです。

   私は、昨年からベトナムに住んで、日本の仕事も受けておりますが、対面でミーティングなどをする機会は激減しました。

   仕事のミスがないように、仕事に際するルールをお互いに取り決めてから取りかかるということが多くなりました。プロトコルというようなものでしょうか。

   日本で仕事をすると意識することがないのですが、あえて場所を離れてみることで、こうした能力が鍛えられるとおもいます。

   ふたつ目は、少しハードルが高いのですが、プログラミングをすこし勉強してみることです。プログラミングをするときに考える、処理フローは、まさに仕事の設計にほかなりません。関数やオブジェクトの設計は、

・だれに仕事をふるか
・どういう情報を与えてやってもらうか
・どういうことをやってもらうのか
・どういう情報をアウトプットとして返してもらうのか

ということを考えるということとほぼイコールです。

   グローバルな仕事では、理系やプログラミングをしたことがあるひとが意外とスムーズに仕事を進められる、というのは、こういう背景があるのかもしれません。(大石哲之)