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起業家に向くのは「男性より女性」 打たれ強い・ニーズに敏感…こんなにある理由

   「女性は起業家に向いている」。国内ではまだまだ男性起業家の数が多いが、資質面では少なからぬ面で女性の側に「一日の長」がある、という声は少なくない。

   日本経済新聞電子版にこうした記事がこのほど載ったほか、海外でも、起業家としては女性の方が優れているという論調がある。

米経済誌でも「女性の方が責任のある起業家」

起業しようかな?
起業しようかな?

   日経電子版2014年3月3日付に掲載されたのは、女性起業家の加藤百合子氏のブログだ。東大農学部卒、米航空宇宙局(NASA)でのプロジェクト参加やキヤノンでの勤務経験をもち、2009年に農業支援を手掛ける会社を立ち上げた。

   加藤氏が「女性は起業家に向いている」とする根拠はこうだ。ベンチャー企業に求められる資質として「打たれ強さ=鈍感力」があるが、この点で女性が適している。家事や育児など仕事以外の役割があるため多様な価値観を持つので変化への対応力があり、めげずに取り組めるようだと説明する。ほかにも、女性従業員が子どもと一緒に出勤したり、子どもの参観日や病気のため早退したりする場合も、女性経営者なら事情を理解して柔軟な働き方を認めてくれるはずだ、と主張する。

   米国でも、女性起業家への期待の声は大きい。経済誌「フォーブス」電子版は2013年12月11日付記事で、女性が男性よりも責任のある起業家であるとの主張を展開した。例えば女性起業家の場合、社会的責任を当然のものとして考えるという。成功者となった女性は、男性よりも事業運営を手掛ける傾向が強いため、より多くの利益を世の中にもたらす。逆に会社への課税が増えたからといって従業員の福利厚生を削ったり、リストラしたりという手段は最後までとらない。「社員を大事にする」のが女性起業家だというのだ。

   手にした富を、社会変革や慈善活動に用いるのも女性が多い。収入の水準にかかわらず、寄付する額は平均的に男性を上回るそうだ。

   「ダイヤモンド・オンライン」2012年10月29日付記事では、新事業コンサルタントの本荘修二氏が、女性起業家が男性より優れている面を指摘していた。人類の半分は女性なので、顧客の半分も女性。だが買うことを決めているのは8割が女性だそうだ。「女性は日常生活の当事者として家事や育児・介護を担っていることが多いから、男性よりも問題を実際に感じ、自分のこととして解決したいと思う。だから、消費者のニーズや起業するアイデアに、男性よりも気がつきやすいということはあるだろう」という。しかもモノを買う時の決定権は多くの場合、女性が握っている。男性だけでビジネスをやっている場合ではないという主張も、うなずけよう。

家事、育児、介護がカベに

   だが、国内の女性起業家の数はまだまだ少ない。日本政策金融公庫が2014年1月9日に発表した「起業意識に関する調査」によると、2008年以降に自分が起こした事業を現在も継続している「起業家」は、男性73.5%、女性26.5%と圧倒的に男性が多い。一方で起業に関心がある「予備軍」の女性は39.8%に上る。「起業に関心があっても踏み切れない人の割合が男性よりも高い」という分析だ。また企業そのものに「無関心」という女性は6割を超える。

   「起業しない理由」を見ると、トップは男女とも「自己資金不足」だが、女性は2番目に「家事・育児・介護等の時間がとれなくなりそう」が入る。これらを女性が担っているからこそ、男性よりも問題意識が高く事業の運営にも生かせる半面、物理的に仕事との両立が難しくなり、望みだった起業を果たせなくなる恐れもあるということだろう。

   同じく日本政策金融公庫が2013年12月24日に発表した調査結果によると、別の側面が見えてくる。採算状況を調べた項目で、開業1年後の「黒字基調」の割合は、女性が男性を8.6ポイント下回るが、その差は年々縮まって4年で男女が逆転、5年目には女性が5.9ポイントの差をつけている。開業以降、右肩上がりで着実に業績を伸ばしていくタイプのようだ。