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「へんちくりんな夢と希望で頭でっかち」 そんな就活生にならないために

「入社数年たって転職したい」

という人の相談を受けることが多くありました。

   どういう理由が多いと思いますか?

   いちばん多いのが「思っていた仕事と違った」です。

   そんな馬鹿な……と思うのですが、みんな入社してみたら、思っていたのと仕事がぜんぜん違うことに気づくのです。

「結局、会社の仕事の内容がわかっていなかった」

思っていた仕事と違った…
思っていた仕事と違った…

   そんなの企業が何をやっているかなんてすぐ分かるだろうに、と思うかもしれないのですが、学生にとってはそうでもないのです。

   私は、ある青年に会いました。彼は、某航空会社に入社したのですが、配属されたのは機体の整備部門でした。整備士と一緒になって、機体を整備する日々が続きます。

   こんなはずではなかった。整備の仕事を恐らくこの先4、5年はすることになるということ。その先には、もっと面白い仕事が待っているかもしれませんが、さすがに余りに長い時間軸に耐えられなくなってしまったようです。

   そして「結局、会社の仕事の内容がわかっていなかった」と言っていました。

   彼は見切りが早かったので、すぐ転職して、別の会社にいきました。そこでは思っていたとおりの仕事につけたようです。

   航空会社というのは、本質を突き詰めると、お客さんを飛行機で運ぶという運輸業です。国際エアラインはイメージはかっこいいのですが、本質的には運輸業なのです。トラック輸送やバス輸送や鉄道と一緒。旅客を運ぶというビジネスです。

   彼はイメージの良さと安定感に惑わされ、自分が就職する会社が「運輸業」であるという本質を見失っていたのです。彼はなにかを運ぶということに興味があったわけではないことに気づいてしまったのです。

   もし彼が、航空会社が運輸業であることを正しく理解できていたら、携わる仕事も想像できたはずです。

どういう業務でその会社がなりたっているのか

   運輸業の仕事とはどういうものが考えられるでしょうか?実際に運転するパイロットやドライバーを除いた部分で考えると、飛行機やバス・トラックのメンテ、運行スケジュールと乗務員の管理というのが、管理業務のほとんど大半を占めます。それにくわえてチケットの販売と管理です。ですから、それらの仕事のうちのどれかに携わるであろうこととは容易に予想できたのです。

   運輸業において、空港や駅との連携による活性化なんていう仕事に付いている人は、全社員のうち何人もいないわけです(企業は学生にそういう部分ばかりアピールしたりしますが…)

   しかしながら、99%の社員は、日々の飛行機や電車やバスを事故なく定時に運行することに全精力を注いでいるのです。

   飛行機にペイントをタイアップするようなプロモーション企画を一生懸命考えるほうが楽しそうですが、それが出世の早道というわけではありません。

   こういう不幸は起こりがちです。

   なぜなら、多くの学生が行う企業研究というのは、仕事内容を調べるのではなく、その企業の業界での知名度、ステータス、給与を相対比較して、どこがナンバーワンかを調べているだけに過ぎません。

   ですから、学生のみなさんは、いちど企業が具体的に何をしているのか理解したほうがいいとおもいます。「具体的に」というのは、どういう業務でその会社がなりたっているのかということ。オペレーションの流れです。

   商業銀行だったら、融資というセールス担当がいて、それを審査する審査部があって、そして顧客からお金をあずかる窓口業務、この3つがほとんどを占めます。憧れの企業再生なんてほんの一握りのひとしか携わりません。銀行はお金を貸すのが本職で、経営コンサルタントではありません。

   小売業だったら、仕入れて、倉庫で管理して、店舗で販売する。これが殆ど。新規の業態開発を企画するひとは、わずかです。既存店舗で実績をあげ、エリアを統括して、利益をあげられるひとが出世します。地味な仕事です。

   こんなことをいうと夢も希望もなくなるという方もいるかもしれませんが、へんちくりんな夢と希望という名の妄想で、頭でっかちになりっぱしになるよりマシです。

   企業再生がやりたければ、都市銀行ではなく、ゴールドマン・サックスやマッキンゼーを経て再生ファンドに入るのが一番いいと思います。

   マーケティングがやりたければ、はじめからマーケティング・コンサルティング会社に入りましょう。

   こうした、仕事選びや就職のヒントに関しては、拙著『英語もできないノースキルの文系学生はどうすればいいのか?』

   という電子書籍に考えを纏めています。興味をもった方がいれば、手にとっていただければ幸いです。(大石哲之)