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若者社員「意外とやるじゃないか!」 もう止めよう「ゆとり世代は弱い」論

   私は社会保険労務士として企業で発生する労使トラブルの解決に取り組んできました。

   やがて「労使トラブルを防ぐにはどうしたらいいんだろう?」と考えるようになり、人材育成が大事なのだという結論に至りました。それから試行錯誤しながら泥臭く取り組んできました。特に若手社員(20代~30代)対象の研修が多く、彼らと接する中で感じたことがあります。「それは意外とやるじゃないか!」ということです。

「最近の若いヤツらは……」

やる気、ありま~す!
やる気、ありま~す!

   そこでこの連載では、私が現場で感じていることをお伝えしていこうと思います。

   4月に新入社員が入ってくると、会社では「今年の新人は大人しいな」「今年の新人はなかなか良いぞ」という風に新人品評会が繰り広げられます。

   よく言われるのが「最近の若いヤツらは……」というダメ出しでしょう。

   世間では、このような図式があるのではないかと思います。

若いヤツら = ゆとり世代 = 弱い、使えない

   さらに恐ろしいことに若い新入社員達は毎年奇妙なネーミングでレッテルを貼られているのです。日本生産性本部では毎年3月に「新入社員の特徴とタイプ」というのを発表します。2014年の今年は「自動ブレーキ型」だそうです。

◆自動ブレーキ型
知識豊富で敏感。就職活動も手堅く進め、そこそこの内定を得ると、壁にぶつかる前に活動を終了。何事も安全運転の傾向がある。人を傷つけない安心感はあるが、どこか馬力不足との声も。どんな環境でも自在に運転できるようになるには、高感度センサーを活用した開発(指導、育成)が必要。(同本部HPより抜粋)

   ちなみに過去は以下のようになっています。

   2013年度 「ロボット掃除機型」

   2012年度 「奇跡の一本松型」

   2011年度 「はやぶさ型」 (東日本震災により発表を自粛)

   2010年度 「ETC型」

   2009年度 「エコバッグ型」

   2008年度 「カーリング型」

「俺はカロリーメイトじゃねぇ」

   前職の人事部で新卒採用に携わった時に、ある女性社員がこんなことを言ってましたよ。

「私達はカーリング世代と言われてますけど、そういうのを見返すくらいに頑張ろうと思います」

   そして彼女は本当に頑張っていました。毎年大人がつけたネーミングによって彼らはある意味、偏見を持たれるわけです。憲法 第14条では

「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」

と定められています。私の超偏った意見を言いますが、若さや入社年度でゆとり世代とか〇〇型とひとくくりに決めつけるのは差別なんじゃないかとすら思えます。

   発表団体はそういう意図でやっているわけではない、というのも分かりますが……。

   ちなみに私は2000年度に大学を卒業しました。在学中に就職活動をしませんでしたから無職となり、その年には就職しませんでした。その年は「栄養補給食品型」と命名されています。

◆栄養補給食品型
ビタミンやミネラル(語学力やパソコン活用能力)を豊富に含み、企業の体力増強に役立ちそうだが、直射日光(叱責)に弱く、賞味期限(試用期間)内に効果(ヤル気)薄れることあり。

   私だって基本的に怒られるのは嫌ですから、試用期間中に上司や先輩に怒られたらやる気は下がりますよ。そして上司に

「やっぱ今年の新人は栄養補給食品型だから使えねーな」

とか言われたら「俺はカロリーメイトじゃねぇ」とムカついて辞めると思います。

若者のやる気を失わせているのは…

   新卒に限らず若手社員に至らない点があると、中高年の上司は「ゆとり世代は辛抱できない」「ゆとり世代はすぐ辞める」「ゆとり世代は弱い」と言います。そもそもゆとり世代ってどの時期に生まれた人達なのか知っているのでしょうか?

   「若者=ゆとり世代」でひとくくりにしてるところはないでしょうか?

   調べたところによると1987年4月2日生まれから2004年4月1日生まれの人を概ね指すそうです。

   現在27歳から10歳の人です。私は37歳なので、ゆとり世代ではありません。

   ゆとり世代ではありませんでしたが、辛抱できずに会社を3か月とか6か月で辞めたこともあります。世の中にはこういう人は意外といます。

   ゆとり世代かどうかは関係なく、あくまで個人の気質によるものだから、世代でひとくくりにレッテルを貼るのは、もうやめて欲しいものです。「どうせ俺達はゆとりだから」と若者のやる気を失わせているのは、こういう中高年世代の対応も関係あるのではないでしょうか。(野崎大輔)