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「ありのまま」の会社員じゃダメですか? アナ雪「レリゴー」現象で新たな悩み

   国内では十数年ぶりに興行収入が200億円を突破するなど、大ヒットとなっているディズニー映画「アナと雪の女王」。2014年3月の公開から3か月以上たっても興行成績ランキングのトップをキープし、7月のDVD発売を機にさらに話題を集めそうだ。

   アナ雪といえば映画のストーリーのみならず、「レリゴー」(『Let It Go』)の楽曲も幅広い層の人気を得ている。日本語吹き替え版で松たか子さんやMay J.さんが歌う『レット・イット・ゴー ~ありのままで~』は、もはや知らない人はいないのではないかというほど、テレビをはじめ、あちこちでよく耳にする。その影響は、勤め人にも出始めているようだ。

メタボで眉毛がボーボー ダメ過ぎる自分が嫌でたまらない

   「ありのまま」という日本語は、観客の心に刺さる何かを孕んでいるのだろうか。この言葉について、Q&Aサイト「OKWave」にこんな質問が寄せられていた(2014年6月11日)。

   日本語版の歌詞の「ありのまま~」という箇所が妙に気になるという質問者は、「当方がありのままの自分でいたとしますと、友人も家族もいなくなりそうな気がしてなりません」という。ありのままの自分は「運動をしなければメタボ、眉毛がボーボー」「見るも無残な外見」「本当は仕事はしたくないし、遊んでいたい」という。「私個人は、ありのままの自分がダメ過ぎて嫌でたまらないです」と断言し、「ありのままの自分が好きですか」と質問している。

   回答へのお礼コメントの中で質問者は、この歌詞を真に受けると「何もやらなくなるんじゃないか」「勘違いしそうで怖くなる」と述べた。

「ありのまま」でいたいので今日は遅刻します これでいいの?

   職場で「ありのまま」に過ごした場合、仕事に支障は出るのだろうか。コンサルタントの中土井僚氏は、「Yahooニュース 個人」の記事「『アナと雪の女王』のように『ありのまま』で生きても職場で浮かないのか?」(6月1日)で、職場で「ありのままに生きる」ことについて論じている。

   氏によれば、「自分らしくいたいので、今日は遅刻することにしました」というような自分勝手な行動は一見「ありのまま」に生きているように見えるが、実は違うという。本来の「ありのまま」は行為の領域ではなく内側の領域の問題で、「過去の自分の思考パターンや、否定的なセルフイメージ、『周りからどう見られるのか?』といった心理的な恐れなどから離れる」ことが1つの到達点だという。だから「ありのまま」でいることは職場での貢献を生み、リーダーの素質を呼び覚ますとしている。

   先に紹介した質問にある「ダメ過ぎて嫌でたまらない」自分は、本当の「ありのままの姿」ではないのかもしれない。歌詞になぞらえて言えば、このままじゃだめなんだと風が心にささやいている段階なのか。自分の価値観に照らし合わせて嫌だと思う部分があるならそれをクリアし、否定的なセルフイメージを手放してはじめて「レリゴー!」といえるのかもしれない。

   「アナと雪の女王」は、ネット上でも多くの解釈が飛び交っている。楽曲のよさだけでなく、ストーリーや歌詞に触発されて、自分の内面、仕事、世の中などについて「一言、言いたくなる」こともこの作品の人気の秘密なのかもしれない。(RH)