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「現場で役立つ」クレーム対応策 このガイドラインが威力を発揮する

   今回は、クレーム対応の流れに沿って、基本的な考え方を解説しましょう。前回説明した通り、多くの企業で「お客様苦情対応マニュアル」が作られていますが、1分1秒を争うこともあるクレーム発生現場では意外に役に立ちません。そこで、私はクレーム対応のポイントを簡潔にまとめた「ガイドライン」の作成を勧めています(次ページのガイドライン参照)。

   このようなガイドラインをA4サイズの用紙にまとめてラミネートして机の上においておけば、いざと言うときも臨機応変に対応できるはずです。

「謝って済む問題」にすることが、初期対応のポイント

「謝って済む問題」にする
「謝って済む問題」にする

   また、名刺サイズにコンパクト化できれば、お守り、魔よけの札代わりに財布などに入れて身につけておくこともできますし、仲間うちで意思の徹底を図ることにもなり一石二鳥です。

   ガイドラインの基本方針から確認したいのは、「クレームを金銭で解決しない」「根拠のない金は支払わない」。「誠意を見せろ!」はクレーマーの常套句ですが誠意とはお金ではありません。ここをしっかりとおさえて欲しいと思います。

   クレームの大半は「たいへん失礼しました。すぐに商品をお取り替えいたします」とスピーディに対応し、誠心誠意お詫びをすれば、収束に向かいます。つまり、「謝って済む問題」にすることが、初期対応のポイントとなるわけです。

「誠意」とはお金ではありません

『クレーム対応のガイドライン』


I 基本方針:安易に金銭で解決しない。「誠意」とはお金ではありません。


II 行動指針 ≪クレーム対応の流れ≫

   1:スピーディな対応 → 誠心誠意お詫びの姿勢
   2:確実な実態把握 → 上手に聞き、見極め判断材料を収集
   3:悪質なものは組織(チームワーク)で解決 → 有機的な連携[警察相談・弁護士との協議を有効活用し組織連動]


III 対応要領

1:現場の初期対応で勝負は決まる

   ≪まず親切丁寧にご不満を聞き、全力で取り組む姿勢が重要≫

   ○スピーディな対応で多くのクレームが現場(電話)で処理可能。

   [担当者のお詫びの気持ち、一所懸命さこそが顧客満足の鍵]

2:現場で判断できない場合

   ≪安易な回答は禁物≫

   ○言いがかり、あるいは責任の所在がはっきりせず、因果関係が明確でない。

   ○小さなミスなのに要求過大の場合、あえて現場判断しない。

   ……申し出内容・連絡先をしっかりと聞き、ギブアップトークなどを上手に使いながら、速やかに組織対応します。


3:典型的な特殊クレームの追及パターン

   ≪大声で迫り、即答を要求する場合は、悪質クレームの可能性大≫

   「どうしてくれる。誠意を見せろ」

   「マスコミ、インターネットで流す。消費者団体に言うぞ!」

   「今すぐ結論を出せ。責任者として回答(文書)を出せ」

   「精神的苦痛を受けて仕事が手に付かない。補償しろ! 迷惑料をよこせ」など

   ……さらに、追及する言葉の背後に[金銭や特別扱いの要求]が見て取れる場合は、悪質(特殊)クレームです。

   [こうしたケースはCS(顧客満足)からRM(リスクマネジメント)に対応方法をチェンジします]


4:特殊クレームへの応答

   ≪過剰反応せず複数で対応。冷静に録音・メモを取ること≫

   ○「こうしてお詫びしています。どのように対応すればよろしいのでしょうか?」

   ○「私の一存では答えられません。上司に報告して協議の上で回答しますので、お名前・ご連絡先を教えてください」

   ○「協議する時間が必要です。現時点では対応のしようがありません」

   ○「当社の責任が明確になり、因果関係がはっきりしたら、会社全体で誠意を持って対応します」

   などと、毅然と組織対応していきます。


5:組織(チームワーク)で解決

   ≪特殊クレーム・過大要求に単独判断は禁物!! 迅速に報告し、組織連動します≫

   ○現場を混乱させ、パニック状態を作るのがクレーマーの手口。スタッフが連携、冷静に勇気をもって粘り強く毅然と対応する。

   ○暴行や器物損壊が発生したら、即110番、警察に届ける。

   ○普段から役割分担を決め、訓練してこそ実行できる。


   以上のような点を踏まえ、解決を焦らず、組織全体が法律・社会通念の範囲内で判断すれば、大きな問題に発展することはありません。(援川聡)