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人生設計もG型、L型に 「昭和」な人生設計にサヨウナラ

   1か月ほど前に、大学を、G型(グローバル)、L型(ローカル)大学に分けようという議論が提唱され、ネット上で賛否を呼びました。

   簡単にいえば、G型はアカデミックな大学として世界のトップの競争力を狙う。つまり、ノーベル賞などを今後も輩出する組織にする。

   L型は、レベルの低いアカデミズムをしてもしかたがないので、職業訓練学校として、弥生会計ソフトや大型第二種免許などの取得を目指すというものでした。

   この強烈な割りきりに、教育論を巻き込んで、大きな議論になりました。

偏差値の高い大学に入り、有名な企業に入社し・・・

グローバルとローカルと
グローバルとローカルと

   私はG型、L型の区分に大賛成ですが、それは、そちらのほうが、多くのひとの人生設計は楽になるし、自信をもてるようになると思っています。

   たとえば、いままでの昭和の典型的な人生設計はどういうものか振り返ってみましょう。

   簡単にいえば、偏差値の高い大学に入り、有名な企業に入社し、適齢期に結婚し、家を買って、子供を作り、60歳で引退して、老後は悠々と暮らす。こいう感じでした。

   そしてそのタイミングそれぞれに、好ましい年齢がありました。22歳で就職、30歳くらいで結婚、子供ができたら、35歳で家を買うなど。

   模範(基準)的な人生の時間軸みたいなものが暗黙の了解としてあった気がします。

   そこからズレている、遅れていると感じるときに、「あ、僕の、私の人生設計が狂っている・・・」と感じるわけです。これが、人生設計が狂うと感じる原因です。

   人生設計が狂うためには、そもそも模範となる設計図が必要です。模範がないのに、ズレているとは感じませんから。狂うのは、その「ズレ」です。

グローバルマッチョに煽られる人々

   しかし、この昭和の人生設計図は、高度成長期をモデルにしたものであって、今となっては、現状とのズレが多くなり、みなも悩んでいます。そして新たな模範を探し始めました。

   代わりに出てきたのが、グローバルといわれるマッチョ論です。

「東大ではなく、ハーバード大学を目指す。卒業後はグローバル企業に入社し、MBA取得、戦略コンサル会社をへて、40手前には執行役員を狙う。45にはグローバルで影響力を発揮するリーダーにならねばならない」

といった極端なものです。この基準が適用されると、日本人の99.99999%くらいは、人生設計が狂うどころか、設計すらできないことになります。

   現在多くの人が、グローバルマッチョに煽られ、むしろ昭和時代よりも拡大した「ギャップ」に悩み、マッチョになれない自分を攻め立てるようになります。

   これではさすがに負け組をたくさん生み出してしまいます。そもそもグローバルで活躍できるひとなんていうのは、どんなに多く見積もっても1%くらいでしょう。

   のこり99%のひとは、グローバル競争とはあまり関係ない世界で生きています。地元密着型のサービス業で、その地域にいてその場でサービスすることが大事な職業です。

   バスやタクシーの運転手、看護師、介護士、宿泊施設の運営、地元の飲食店などが代表的です。

   これらのL型産業のひとが、グローバルマッチョ論に煽られて負い目を追う必要は全くありません。むしろ、もっとプラクティカルなことを学び、たとえばマイケル・ポーターの戦略論を学ぶのではなく、食材ロスを防ぐための方法や原価の計算といったことを学んだほうがいいといえます。

キャリア設計も、すっきり分けたほうが・・・

   現状の日本の単一線のキャリア設計は、G型L型どちらのひとにとっても問題を起こしています。

   G型グローバルマッチョの人にとっては、日本のキャリアは、甘すぎるのです。日本の会社に就職して、ぬくぬく育っていてグローバルエリートを目指しても、世界の人材市場では、使い物にならないでしょう。中国人やインド人のトップエリートとは競争になってないのです。

   日本でグローバルに属する人々は、自分たちが過酷なグローバル競争にさらされているということに対する自覚が圧倒的に足りません。昭和の方法や組織に回帰してもしかたないのです。

   一方で、ローカルで生きたいひとにとっては、ハーバードは関係ない話です。それよりも、現場で役立つスキルのほうが大事です。もしくは、国内市場が縮小するなかで、外国からお客さんにきたお客さんに対する対応(インバウンド)としての、英会話といったほうが役に立ちます。

   キャリアの話をするとき、やれグローバルだ、やれ里山だとか、やれ昭和復古だとか、日本全体でどちらのほうに行くべきかという話になりますが、G型L型大学のようにキャリア設計も、すっきり分けたほうが、わかりやすく、いらぬギャップに苦しむ必要はなくなるのではないでしょうか?

   本連載で今後のキャリア論を論じるときにも、G型L型を分けて考えることにしたいと思います。


   最後にお知らせです。ちょうど今月の15日に、『英語もできないノースキルの文系はこれからどうすべきか?』という新書を出版しました。英語もできない文系ノースキルというのは、Gには程遠いが、Lのような手に職がないという状態。これらの人がどうすべきかという処方箋を書いていますので、あわせてご一読ください。(大石哲之)