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人事異動で「SEから営業へ」 「SEを続けたいからイヤ」は「わがまま」?

   みなさんは職場で上司から、「来月から別の部署で頑張ってもらいたい」などと人事異動の内示を受けたことがありますか?

   多くの社員にとって、部署や勤務地が変わる人事異動は「小さな転職」といってもいいほど、衝撃があるもの。それゆえ、辞令を聞いたときには人それぞれ、様々な反応があると思います。素直に従う人、文句を言う人。あるいは理由を徹底的に追及する人。そんな「人事異動」について、今回は考えてみたいと思います。(事例を一部変更しています。)

「会社として、より功績が残せる場所に社員を配置しなければ・・・」

そんな異動ってアリ?
そんな異動ってアリ?

   わたしは、コンピューターのソフト開発を担当するSEとして働いています。

   技術を必要とする専門職なので、営業などの総合職の様に異動等がない為、先日、都内にマンションを購入しました。

   そんなある日、上司に呼び出されました。

「君は社交的だし、SEだからソフトに関する知識もあるし、取引先からも評判だよ。これを機に営業としてソフトを売る側に回ってほしい」

   給与などの待遇については申し分ない条件を提示してくれたのですが・・・

   マンションを買ったばかりなのに、営業となると今後転勤などもあり得ますし、何より、わたしはSEの仕事が好きなので今の仕事を続けたいんです。

   その事を上司に話すと・・・

「会社は、その社員の可能性を見出して、会社として、より功績が残せる場所に社員を配置しなければならない。君一人のわがままを聞いてあげるわけにはいかないんだよ」

と言われました。

   会社の利益の為なら、素直に従わないといけないのでしょうか。

弁護士解説 「採用時に職種が限定されているか」がポイントの1つ

   給料などの待遇も重要ですが、自分のやりたい仕事やプライベートとの兼ね合いも働く上ではとても重要ですよね。希望の部署で働き続けられるかについて、関心が高い方も多いのではないでしょうか。

   みなさんがよく耳にする「人事異動」ですが、職務内容または勤務場所が長期間にわたって変更されるものを「配置転換」、略して「配転」。その配転の中でも、勤務地の変更を「転勤」と言います。

   就業規則などに定めがあれば会社には配転命令権があり、職種や勤務地を限定せずに採用された労働者は、会社の労働力の調整のため広範囲に配転が行われていくのが通常です。

   但し、労働者の職種を限定して採用した場合は、会社は労働者の職種を一方的に変更することはできません。例えば、医師、看護師、アナウンサーなどの特殊の技術、技能、資格を有する者については、契約上、職種が限定されていることが多いので、一方的な職種の変更は認められません。

   今回のご相談者は、システムエンジニア(SE)とのことですが、SEは高度の専門性を有する職種なので、職種限定で雇用されているケースが多いと思います。労働契約上、職種が限定されていることを前提とすると、会社はSEとして採用したご相談者を一方的に営業に変更することはできません。上司の方は、「会社は、より功績が残せる場所に社員を配置しなければならない」と言っていますが、SEで働き続けたいというご相談者の希望は、会社との契約上保護される可能性が高いのでご安心ください。

   万が一、営業に配転された場合は、弁護士を入れて交渉しましょう。注意しなければならないのは、配転に同意したとみなされないようにすることです。そのために、配転に一旦は従いつつも、今回の配転に同意していない旨を内容証明で会社に通知するなどの対応が重要です。会社が交渉に応じないようであれば、配転命令の無効を争う労働審判や訴訟を起こすことをおすすめします。(文責:「フクロウを飼う」弁護士 岩沙好幸)


   ポイントを2点にまとめると、

1:就業規則などに定めがあれば会社には配転命令権があり、職種や勤務地を限定せずに採用された労働者は、会社の労働力の調整のため広範囲に配転が行われていくのが通常。

2:労働者の職種を限定して採用した場合は、会社は労働者の職種を一方的に変更することはできない。

・・・以上で法律の話はおしまいです。以前、この連載記事(2014年11月25日配信)の最後で、私が飼っているフクロウ、コキンちゃんの写真を紹介したところ、「お散歩とかどうしてんだろうなあ?」というコメントを頂きました。お答えしますね。

   コキンちゃんは、室外へのお散歩はしてません。フクロウは、じっと動かない動物ですし、外に連れていくとカラスなどの外敵に襲われる危険もあります。

   部屋の中では、ヒモはつけていますが、オリには入れずに飼っているので、コキンちゃんは自由を謳歌していますよ!