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修行期間中は「恋愛・携帯電話」禁止 「現代の丁稚」は時代錯誤か最先端か

   先日、秋山木工(横浜市)の秋山利輝社長のセミナーに参加してきました。

   私自身が学ぶことが多かったので、今回は共有という形でお伝えさせていただきます。

   秋山木工は、宮内庁やスーパーブランドに納品するくらいの高品質の注文家具を製造、販売している会社です。家具の品質でも有名ですが、未経験の新卒から一流の職人を育てる 人材育成の手法も注目されています。

1年間は見習い、4年間の丁稚期間を経て職人に

ケータイ・スマホは禁止!
ケータイ・スマホは禁止!

   秋山木工は、現代の丁稚制度と呼ばれる人材育成の制度を取り入れており、まずは秋山学校で「1年間の丁稚見習いコース」を学び、それから採用されると丁稚になります。それから4年間の丁稚期間を経て職人となります。丁稚の期間は、男女問わず丸坊主です。朝5時に起床し、朝食の支度をし、朝食の前にマラソンを行うそうです。丁稚期間中は恋愛禁止・携帯電話も禁止です。休みは盆と正月のみで、それ以外は家族との面会・電話は許されず、手紙のみが許されています。

   丁稚制度とは、江戸時代に商家奉公人の間で行われた制度です。10歳位の子供を無給で働かせる代わりに、衣食住を保障し、商売の基本を教えて育てていった制度のことです。今では、こういうのはほとんど見受けられないと思います。

   なぜ丁稚制度が無くなったのか?

   ウィキペディアには以下のように記載されていました。

   第2次世界大戦後、GHQの指令により労働法規が整備されたことや、義務教育の年限が9年に延長された結果、「長期間の住み込みによる衣食住以外は無給に近い労働」という丁稚奉公のスタイルを維持することが困難となった。丁稚を採用していた企業は近代的な契約による従業員に衣替えさせた。これにより、200年以上の歴史を持っていた丁稚制度は消滅した。

   こうして見ると、秋山木工が行っている丁稚制度は時代に逆行していると見えるかもしれませんが、こういうのは私は必要だと感じています。

「一流の職人になるには、技術よりまずは人間性が重要」

   秋山社長は、ご自身が7年間の丁稚修行で職人として必要なものを得ることができたという実体験もあり、本気で一流の職人を育てるためにやられています。

   一流の職人になるには、技術よりまずは人間性が重要と仰っていました。

   この丁稚の期間で人間性を育んでいるのです。

   実際に19歳の1年目の女性の丁稚さんがいましたが、1分間の自己紹介をしてくれました。そして職人心得30か条というのを暗唱していたのですが、自己紹介を聞いてさらにこれを見て、私は驚愕とともに感動しました。立ち居振る舞いも素晴らしいのです。

   1年も経っていないのに、こんな高いレベルになるのか・・・

と驚きました。これだけでも、秋山木工の人材育成の仕組みがしっかりしていることが見受けられました。

   秋山木工では、入社するとまず1分間自己紹介をやるのですが、上手くできるようになるまで何回もやるので、まる1日かかるそうです。

   1分間の構成は次のようになっています。


   最初の20秒で自分の生い立ちや家族の話

   中間の20秒で現在どのようなことをやっているか

   最後の20秒で自分の志、将来の夢


   これを相手にインパクトが残るように話します。

   できるまで何回も、繰り返し練習させられます。

「1分間自己紹介」の順番が・・・

   セミナーの参加者が1分間自己紹介をやることになり、私の前に数人やっていましたが、1回終わるごとに改善点を指摘され、やり直しをされていました。

   その様子を見て私は、頭の中で一生懸命考えていました。

   なんとか無事に終えることができ、ホッとしました。それにしても、この1分間自己紹介には、いろいろな意味があります。


   自分を見つめ直し自分を知ること

   自分の志や夢を発することで天命を自覚すること

   自己紹介を通じて先祖のありがたみを感じること


   私はこの年末に改めて考えていこうと思います。

   秋山木工の書籍を読んだり、DVDを見たりしてはいましたが、今回のセミナーに参加して、秋山社長の生の声を聞くことで腑に落ちた気がします。

   なぜ1分間自己紹介をできるまで延々とやらせるんだろう?

   なぜ職人心得30か条を暗唱させるんだろう?

   疑問に思っていた全てに意味があったのです。

   良い人材を採って一人前に育てるより、どんな人材でも一流の人材に育てるということの方が凄いことだ、というのは言うまでもありませんが、なかなかできることではありません。

   それを実行するために、このような取り組みを行っている会社もあって、頑張っている若い人もいるということを知って欲しいと思い、ご紹介しました。(野崎大輔)