J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

「仮説営業」で脱「出たところ勝負」を

   営業先を訪問したときにあなたは「まず」何をしますか?次の中から選んでください。

【考えてみてください】
お客様にお会いした商談の冒頭に、次の3つならどの行動をとりますか?
(1)相手の要望にじっと耳を傾ける
(2)相手の困っていることを想定して、解決方法を提案する
(3)相手に好印象を与えるよう、楽しい会話を心がける

   さて、どれを選びますか?すべてありがちな行動です。

『課題は~ではないでしょうか』と想定

もしかしたら、こうなのかな?
もしかしたら、こうなのかな?

   中には(3)で世間話に花を咲かせる方もいるでしょう。或いは聞き上手に徹するのが得策と、いきなり聞くモードになる方もいるかもしれません。が正解は(2)です。この行動を仮説営業と呼びます。

『課題は~ではないでしょうか』

   と想定するスタイルです。最近は多くの営業が重要性を感じて取り組みようになりましたが、ここで私なりに仮説営業の必要性を感じた体験をご紹介させていただきます。

   入社3年目に営業担当として首都圏の東京23区、それも中央区の八重洲地域を任されたときの話です。それまでは都内でも中小企業の多い台東区や文京区などを担当していましたので、会社に受付があるわけでもなく、飛び込めば社長に会えるといった環境で仕事をしていました。

「社長。元気ですか?昨日は阪神負けましたね」

   野球の話や趣味の話を聞くだけでお客様に立ち寄ることも頻繁にあり、「顔を出す」ことで仕事がもらえたことも多く、このフラリと飛び込む営業スタイルが身につきつつある時期でした。ところが八重洲地域の担当になって、このフラリと社長に会える営業スタイルが真っ向から否定されることとなります。そもそも受付に訪ねても冷たく「ご用件は何ですか?」或いは「飛び込み営業ご法度」と張り紙がされた会社もたくさんありました。これまでのやり方で八重洲の街を歩き回っても、アポイントさえ取れない状況に陥ってしまいまったのです。

シナリオをつくるために「お客様の状態を想像する」

   そこで「このままではまずい。やり方を変えよう」と、会うための目的を設定してアポイントを取って訪問をすることにしました。このアポイントのために「会うために理由」を考えたのが仮説営業のきっかけでした。分析すると、当時の八重洲地域には大手の子会社・不動産関連のオフィスが多かったので景気も悪かったこともあり、管理部門は厳しいコスト削減に取り組みの真っ最中でした。そこで、大幅なコストダウンの実現をテーマに同じ地域の活用事例を準備して仮説をぶつける営業を開始しました。すると驚くほどにアポイントも取れて、しかも仮説をぶつけると

「うちの問題点を想定した事前準備が立派だ」

とお褒めの言葉までいただき、大型を含めて八重洲地区から20社以上の新規契約が取れるまでに半年かかりませんでした。

   確かに訪問しようとする企業、その企業の部門、その部門の担当者に応じた「課題」が存在します。その課題を仮説としてぶつけるとアポイントも取れ、更に商談が冒頭から前にすすむようになります。では、どうしたら仮説力が高まるか説明しましょう。仮説とは、営業の訪問前に今日の商談のシナリオをつくるために「お客様の状態を想像すること」です。幾つか例をあげますと

●最近の関心があるテーマは何だろうか?
●優先順位が高い取り組みは何だろうか?
●誰かに相談したいことは何かあるだろうか?

などと思いをめぐらせてシナリオを準備するのです。こうした仮説を立てた状態で訪問するのと無いのでは大分冒頭に切り出す言葉も違ってきます。

   仮に仮説があると

「御社の課題はコストダウンと想定して今日は訪問させていただいています。私なりの想定の範囲ですが御社のコストダウンに貢献出来るプランを準備してきました。まずはお聞きいただけますでしょうか?」

   仮に仮説が無いと

「御社のことをお聞きして具体的なご提案をしたいと思います。その前に当社の事業内容と主な商品についてご紹介させてください」

   このように次の展開も大きく変ります。私が担当者であれば、仮説ありの方が「やる気」「誠意」を感じて前向きに聞くでしょうし、仮説が違っていても本当の情報を提供したくなるのではないでしょうか?逆に仮説無しの営業だと、ありきたりの会社説明や長々とした商品説明を聞かされることになり、「またかよ、眠いな」と意欲が下がりませんか?

   ただ、日々の業務が多忙だと、つい営業が出たとこ勝負になりがちです。ですから、短時間に仮説を立てられる力を身に付けるようにしましょう。(高城幸司)