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「『修行半年のすし』は寿司じゃない」は本当か 日本国内の中華料理、イタメシ、カレーから考える

   先週の「海外で寿司職人やるなら寿司アカデミーで半年修行すればOK!」という話を取り上げたコラムに対し、予想通り「そんなまがいものを寿司と呼ぶな」的な意見が散見されました。

   でも、その寿司をまがいものと呼ぶのなら、皆さんが日本で食べている海外発の料理も結構「まがいもの」率高いですよ。

「まがいもの」であることが悪いとは全く思いません

これは、タイの味千ラーメン。アジアではホントそこらじゅうにあります。
これは、タイの味千ラーメン。アジアではホントそこらじゅうにあります。

   スパゲティの「ナポリタン」がナポリにないのは、まず当たり前ですね。

   「カレーライス」は、インドのカレーとは全く別物です。牛を食べないヒンズー教徒の友人が「インド名物ビーフカレー」という看板をみて悲しそうな目をしていました。

   これくらいあからさまに違うものだけではなく、日本にある多くの料理は現地のオリジナルからアレンジが加えられています。

   タイ料理は辛さが控えめになっていたり、甘さが控えめになっていたり、パクチーが少なくなっていることが多いです。ベトナム料理も同様。

   そして、一番違うのが中華料理。以前「中国の餃子は水餃子がほとんどで、焼き餃子はマイナー。また、餃子は主食なので、餃子でご飯を食べるのは、寿司でご飯を食べるようなもの(だから餃子の王将は中国で流行らなかった)」という記事を書きましたが、それ以外の中華料理も現地のものとは全く味が違います。古くから日本に入ってきたので、思いっきりアレンジが加えられているのです。

   私は、「まがいもの」であることが悪いとは全く思いません。商売の基本は、お客様が喜んでくれる物を提供すること。だから、メインのお客様である日本人の人が喜ぶようにアレンジするのは素晴らしいことなのです。

   元々中華料理であったラーメンは、日本流にアレンジしまくられて、様々な形で派生していき、本場を遙かに上回る種類と質に進化しました。私の複数の中国人の友人も「日本のラーメンは中国のと違うけど、日本のラーメンの方が美味しいです」と言っています。こうやって、お客様のニーズにあわせてアレンジしていくことで、どんどん進化が進んで行くのです。

「日式」ラーメン、中華風に再アレンジ

   しかも、進化はさらに加速しています。最近プノンペンに「味千ラーメン」というラーメン屋が出来ました。中国に580店舗以上、アメリカやアジア、オセアニアなど10か国以上に展開している、おそらく世界最大の「日式」ラーメンチェーン店です。

   この味千ラーメン。日本人の我々が食べると「日本のラーメンだけど、ちょっと違う」と感じます。しかし、中国生活が長い人に話を聞くと「あのラーメンは、本場中国の中華料理を食べ慣れた人が、日本式のラーメンを食べる時のちょうどいい入り口なんだよ」と言っていました。

   中華料理と日本料理の中間よりちょっと日本よりくらいの味なのでしょうか。実際、プノンペンでもたくさんの中華系のお客さんが入っています(西洋人の人も美味しそうに食べてます)。

   元々中国の料理だったものが日本風にアレンジされ進化し、さらにそれがさらに中華風にアレンジされる。これを繰り返すことによって、どんどん新しい料理が出来ていくわけです。

   インドカレーがイギリスでアレンジされて日本に伝わり、今のカレーライスが生まれたように。

   「本場オリジナルの伝統の味 = 絶対正義」なわけではなく、こうやってお客さんにあわせてどんどんアレンジされていくこと。それが進化を生み出していく。文化はこうやって生まれてくるのだと思うのです。

   伝統を頑なに守って、保存しておくのも素晴らしいことです。しかし、守ることだけを絶対正義とすると新しいモノが生まれなくなってつまらない世の中になっちゃうなあと思うわけです。


   インターンのイノベーション。インターンを受け入れるために作られたお店で海外起業体験する、サムライカレープロジェクト。1/30(金)に東京・新宿で無料説明会を開催するので、寿司とカレーのイノベーションに興味がある人はぜひこちらをクリックしてみてください。(森山たつを)