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「袋叩き」マックの二の舞にならないために 押さえておきたい「異物混入問題への対処法」

   マクドナルドの商品(チキンナゲット、フライドポテト、サンデーチョコレート、ホットケーキ)に異物(ビニールやプラスチック片、人の歯、ネックレスかブレスレッドの留め金)が混入した問題で1月7日(2015年)、担当役員が記者会見を行った。厚生労働省は1月9日、保健所のある都道府県や市などに対し、食品事業者の異物混入防止の取り組みが徹底され、食品の安全性が確保されるよう通知を出した。

   経済産業省の工業統計調査(2010年)によると、食品製造業は従業員299人以下の中小企業が64%、従業員3人以下の零細企業が35%を占め、大企業はわずか1%に過ぎない。これら中小・零細企業にとって、異物混入問題が発生し、消費者からツイッターやブログ上で問題が指摘されれば、死活問題になりかねない。広報の視点から、異物混入問題を起こさないために何をすべきか、もし起こしてしまったらどう対応すべきかをアドバイスしたい。

リーダーが仕事の社会的な意義や役割を教える

   東京都福祉保健局によると、食品の異物混入の苦情は681件(2012年度)と多く、このうち56%が飲食店、残りの約300件が工場などでの製造トラブルとなっている。また、製造トラブルによる自主回収は全国で年間1000件にも及ぶ。とくに虫や髪の毛の混入を完全に防ぐことは難しく、インターネット上にもみられる「騒ぎ過ぎ」との意見は当たっている。それにもかかわらず、マクドナルドが注目されてしまったのは、同社の企業姿勢に不信感が寄せられたからと思われる。

   記者会見のタイミングが遅く、トップが出席しなかったうえ、担当取締役は「品質問題への取り組みと、1件ごとの個別具体的なご指摘に対する対応は、種類の違った案件と理解している。対応は適切だった」と言い切ってしまった。商品に異物を混入させてしまったのは品質問題であり、対応が適切かどうかは消費者が決めるものだろう。記者会見の設定、参加者、発言の面からみて、稚拙さが否めない。

   以上の状況を踏まえ、中小の食品事業者は異物混入にどう備え、もし異物混入の事態を招いたらどうすればよいのだろう。

   まず大事なことは、異物混入を起こさない企業づくりをあらためて進めることである。厚生労働省の通知では、

(1)食品取扱設備等の衛生管理に当たり、分解や組み立てを適切に行うとともに、速やかに補修し、常に適正に使用できるよう整備しておく
(2)施設及びその周囲は、そ族及び昆虫の繁殖場所を排除するとともに、窓、ドア、吸排気口の網戸、トラップ、排水溝の蓋等の設置により、そ族、昆虫の施設内への侵入を防止する
(3)食品取扱者は、衛生的な作業着、帽子、マスクを着用し、作業場内では専用の履物を用いるとともに、装飾品、腕時計、ヘアピン、安全ピン等を持ち込まない
(4)洗浄剤、消毒剤その他化学物質については、使用、保管等の取り扱いに十分注意するとともに、容器に内容物の名称を表示する等、食品への混入を防止する

――という4点をあげている。その際、重要なことは、経営者やリーダーが仕事の社会的な意義や役割を教え、仕事と顧客、働く仲間を愛する意識を、あらゆる機会をとらえて植え付けていくことである。これらは顧客の獲得や、職場のルールよりも優先しなければならない。社会や顧客への思い、仕事のやりがい、働く仲間への思いを共有できれば、不祥事はおのずから減っていく。

健康被害につながるかで分かれる対応  ネット上の写真公開に備えを

   もし異物混入を招いたらどうすればいいかは、ケースごとに対応が分かれる。健康被害につながる恐れが否定できない場合は、保健所に速やかに報告するとともに、メディアに公表して被害の拡大を防ぐ必要性が生じる。この時に大事なのは、事実確認、原因究明、対応策、再発防止策である。健康被害の拡大を防ぐ観点からは、原因究明の途中でも、事実確認と対応策を明らかにし、後日、原因究明の結果と再発防止策を発表することが望ましい。

   一方、健康被害にはつながらないものの、顧客に不快な思いをさせる虫や髪の毛の混入については、一般的に当該顧客に誠心誠意お詫びし、原因と再発防止策を説明して収束を図る。ここで注意しなければならないのは、ツイッターやブログで写真が公開されるケースである。ペヤングのカップ麺への虫の混入については、写真が公開された結果、出荷停止と製造ライン見直しにつながった。マクドナルドのケースでは、健康被害の拡大につながるとは言えないものの、度重なる写真の公開によって企業姿勢や安全性に関する不信が生まれた。ネット社会の中で、顧客に不快な思いをさせるケースもクローズアップされ、企業の信用失墜につながる恐れが増していることには留意する必要がある。ツイッターやブログで公開された場合は、速やかに先に述べた事実確認、原因究明、対応策、再発防止策を説明できるように準備をしておいたほうがよさそうだ。(管野吉信)