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女子のオフィス服「ツインニット」 アピールするのは「従順な主体性」!?

   20代OL向けのファッション誌を読んでいたところ、「今年の春は、ツインニットが再ブーム!!」という記述を見つけました。「ツインニット」とは、半袖のニットやブラウスと、カーディガンがセットになった服のこと。着るだけで女らしいシルエットが完成するので、毎日、コーディネートを考えなければならない女性社員にとっては、重宝するのです。

   しかもツインニットは、オフィスで『絶妙な主体性』をアピールするのに役立つという、意外(?)なメリットもあるんですよ。

エビちゃんがブームの火付け役

ツインニットですって?
ツインニットですって?

   ファッションにあまり関心のない人のため、念のため説明しますと、ツインニットが流行したのは、2000年代前半から人気を博したモデル、蛯原友里さんが着用したのがきっかけでした。彼女が専属モデルを務めた雑誌、「CanCam」では、『エビちゃんOL』が「ツインニット+膝丈のふんわりスカート」というコーディネートで、度々登場。「誰でも真似できる、簡単な組み合わせなのにモテる!」と、同じようなファッションのOLが、大量発生したのです。ツインニットには、「着るだけで『モテ系コーディネート』が完成する」という利点があるのですね。

   こうして大流行したツインニットですが、ファッションの専門家からは、批判もされました。ちょうど、エビちゃんOLのツインニットが流行り始めた頃に出た、評論家のピーコさん×作家の山田詠美さんの対談本『ファッションファッショ』(2003年、講談社)では、山田詠美さんが、次のように発言しています。

「日本では、カーディガンって単品ではなく、ツインニットという形で隆盛を誇っているよね。みんな着てるじゃない?」

   これに対し、ファッション評論家のピーコさんは、「ものすごく売れてるよね」と同調し、「でも、あれつまんないでしょ。別々のもの買えばいいのに」と批判。「若い子がツインニットをそのまま着ているのって、お洒落を放棄しているみたいでいやなのよね」、「気も遣ってない。朝起きて時間がないからそのまま着ましたというふうに見える」と、辛口です。

   専門家からすれば、着るだけで『モテ系』のコーディネートが完成するツインニットは、おしゃれに対して「頭を使っていない」ように見えるのでしょう。ところが、その「頭を使っていないように見える」点が、職場では役立つこともあるのです。

「私は自己主張をし過ぎない人間です」

   アパレル系の企業や、一部のベンチャーなどは別として、お固い雰囲気の職場には、「オフィスカジュアル」という暗黙のコードが存在します。女性誌を見ると、「お局様に嫌われない色の組み合わせ」とか、「スカートは膝上何センチまでなら嫌われない?」とか、「流行のガウチョパンツ、職場に着て行ってOK?」などの特集が、頻繁に組まれています。

   多くの職場には、「ファッションで自己主張し過ぎてはダメ!」という雰囲気があるのでしょう。確かに、やたらと「おしゃれアピール」をする女性社員は、悪目立ちしがちです。でも、流行のアイテムが着られず、ダサいと思われるのもイヤ。ああ、女子って大変・・・。そんな中、ツインニットは、着るだけで次のようなメッセージを発することが可能です。

   「安心して下さい。私はファッションで自己主張をしすぎないタイプ。やたらと尖った主体性を発揮しない、規範的な社員なんです」。ツインニットは、洋服の組み合わせに「頭を使わなくていい」。よって、職場を乱すことのない「従順な主体性」をアピールできるのですね。だからこそ、十数年に渡って売れ続け、今年も「再ブーム」なんて言われているのかもしれません。私も今シーズンは、ツインニットを大量に購入・・・いや、やっぱり止めておきます。自己主張、したいですから。(北条かや)