2024年 4月 20日 (土)

制御不能の資本主義経済 「いますぐ満足を」が暴走する時

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『「衝動」に支配される世界』(ポール・ロバーツ著、東方雅美訳、ダイヤモンド社、税別2400円)

   PCからアマゾンに注文した本が即日届き、クレジットカードで決済。スマホに語りかけて近くの飲食店を探す。もはや日常と化した超便利さが、どうにも危ういものに見えてくる本である。

   ポール・ロバーツは本書で、21世紀の米国経済がそれ以前と本質的に変化し、社会を破滅に向かわせているのではないかということを、ジャーナリストらしく、私たちの生活そのものから描き出している。

「今」しか見ない古い脳には勝てない

   原題「ザ・インパルス・ソサイエティー」は、欲しいものをすぐに手に入れることを消費者に促すことで膨張してきた米国経済が、もはや人間には制御できなくなり、逆に、人間がその原理に支配されつつあることを示す。

   産業革命からフォードの大量生産、そしてインターネットと経済の金融化が同時進行した結果、企業は個々の消費者の「衝動」(インパルス)を即座に満足させることが繁栄の原理であることに気づいた。しかも、企業経営自体が、株価の上昇という「衝動」に支配されてしまってもいる。

   冒頭に紹介されるオンラインゲーム依存症の青年を例にとって、「いますぐ満足を」という感情に衝き動かされる資本主義経済は自己破壊に向かっている、という指摘は妙に説得力を持つ。

   ロバーツは、人間の脳の中で進化的に古い「爬虫類脳」とも呼ばれる部分が、衝動社会によって刺激され続けることで、クレジットカード破産や過食による肥満などが起きると説明する。人類の新しい脳が理性的に判断しようとしても、「今」しか見ない古い脳には勝てないという。「爬虫類脳のなかには、将来は存在しない」という言葉は、衝動社会そのものの未来も暗示している。

   ゲームアプリやSNSサービスの向上、頻繁な車や家電のモデルチェンジ――。現代のイノベーションを象徴する新商品を次々に繰り出すテレビCMも、見る者の「爬虫類脳」に「衝動」を刷り込ませる役割を担っていると思えてきた。

   技術革新に伴う社会的な摩擦や混乱は常にある。だが、ここ100年ほどの間に私たちが行き着いた経済は、いずれ人類社会をも飲み込むようなブラックホールを作ってしまったのではないか。「近未来小説」を読んでいるような気がして、すべては既に現実だと気づくと、空恐ろしい気になった。(MD)

『「衝動」に支配される世界』
『「衝動」に支配される世界』
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