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「子供が小1に」ワーキングマザーを襲う 職場の新たなプレッシャーとは

   前回は、ワーキングマザーたちを悩ませる「小1の壁」について取り上げました。多くの企業では昨今、子育て中の女性を支援しようと、「子供が小学校に上がるまでの時短勤務、自宅勤務制度」などを充実させています。保育園も「19時過ぎまで」など、長時間、子供を預かってくれるケースが多く、育休から復帰したワーキングマザーたちは、ある程度「安心」して、働くことができました。

   ところが、子供が小学生になった途端、状況は一変します。小学校の授業は15時頃に終わってしまい、それ以降、預ける場所がない。学童保育クラブ(正式には「放課後児童クラブ」)もありますが、18時には閉まってしまう施設がほとんど。職場では、子供が「もう小学生だから、時短制度はNG」。さらに、小学生になると「宿題」や「明日の教科書類の準備」など、自立への負担が、多くのしかかります。ワーキングマザーたちは、「保育の場所と時間が確保できないこと」、「子供の『自立へのストレス』に向き合うこと」に悩み、頭を抱えてしまうのです。これが「小1の壁」の本質です。

「育児もラクになったと思うし・・・期待してるよ」

ああ、プレッシャー
ああ、プレッシャー

   7歳のお子さんがいる、営業職のOさんは言います。

「うちの上司は50代で、私の子供が小学生になったと知った途端、『育児もラクになったと思うし、これからはもっと成績を上げてね、期待してるよ』みたいなことを言うんですよ」

   Oさんは、優秀な営業ウーマン。30代前半で出産、産休・育休・時短勤務と、会社の制度を利用してきましたが、いずれも「周りに迷惑をかけないよう」、できるだけ短い期間しか利用しなかったそうです。

「子供が保育園だった頃は、時短で効率よく働いていました。その時は結構、成績も良かったんです。だから、上司が『子供が小学校になったら、もっとバリバリ働いてくれるはず』と言う気持ちは分かるのですが・・・時短勤務ができない今、小学生の子供をどこに預けたらいいのか分からない。学童は18時に閉まっちゃうから、その後は仕方なく、習い事をさせてますね。それでようやく、急な残業や顧客対応もこなしている感じです」(Kさん)

放課後児童クラブの「待機児童」は1万人

   今(2015)年4月に始まった「子ども・子育て支援新制度」の政府資料によると、日本には現在、放課後児童クラブが2万2000か所あり、登録児童数は93万6452人もいます。それでも、待機児童数は、約1万人(9945人)。待機児童の数は、ここ数年、じりじりと増えています。昨(2014)年7月に政府が策定した「放課後子ども総合プラン」では、2019度末までに、放課後児童クラブについて、「約30万人分」の受け皿を用意すると書かれていますが、うち、15年度に、まず「約16.9万人」の受け入れを行うとのこと。政府も「小1の壁」について、まったく対策を考えていないわけではないようです。

   ただ、営業職のワーキングマザー、Iさんいわく、

「受け入れ人数を増やすのも歓迎だけど、延長預かりをして欲しい。支援員さんを増やして、シフト制で遅くまで預かって欲しいのよ。政府は、そこまで考えているの?」

   現在、保育士資格をもちながら、保育士として働いていない「潜在保育士」は、全国に約68万人いるといわれています。彼女たちに「学童」で働いてもらうことは、可能でしょう。「子ども・子育て支援新制度」では、学童で働く「放課後児童支援員等」の処遇改善等、「放課後児童支援員等の処遇改善経費の補助」にも取り組むと書いてあります。どのくらい実現するのかは未知数ですが、きちんとした待遇が得られるのであれば、学童での仕事には「やりがい」があると思います。

   早急に「学童」の支援員を増やすなら、将来、保育士や教員を目指す学生らを、ボランティアの研修員として受け入れるのも、ありかもしれません。Iさんだけでなく、放課後児童クラブの存在で救われるワーキングマザー、ファーザーは沢山いるはずなのですから。(北条かや)