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「報われない」優秀な社員の我慢のしどころ

   どの会社にも優秀と認知された社員がいるものです。決して社内プロモーションがなされているわけではないのに、

「同期で1番優秀と言えば○○」
「営業部員では〇〇が特に優秀だ」

といったように、「××といえば○○」と、社内ブランド化されている人のこと。「優秀」であることは、このように社内で存在が認知されていることが前提にあります。

引き抜き警戒で「顔と名前出しNG」

言いたいことはあるが・・・
言いたいことはあるが・・・

   ただし、「優秀な社員」に関して対外的に表に出てしまうと引き抜きにあう可能性が高いため、その存在を隠すようになっています。取材したメーカーでは新卒採用の広報用パンフレットに「若手期待の星」と紹介されたところ、ヘッドハント会社から夥しいオファー(転職を促す)連絡が殺到。ついには競合会社に引き抜かれる事件が起きたとのこと。これに経営陣が大慌て、社内で優秀と誉れ高い社員に関して、「顔と名前出しNG」のお達しを出しました。

   同様の理由で優秀社員の名前を隠す会社は少なくありません。そのため、現在は「社内で優秀な社員」イコール「世間で有名な人」ではないケースが増えています。要するに、社内で有名な優秀社員が、社外においては実は「マイナーな人」だという、不思議な構造となっているのです。では、そんな社内だけで知られた優秀社員になる意味とは、どんなところにあるのでしょうか。

   当然のことながら、優秀な社員に対しては、周囲もその優秀さに見合った仕事を任せるものです。例えば営業の場合、実績が伸びる見込みが低い取引先を社内で優秀な社員にあえて担当させても得るものがありません。今話題の人気企業や、その人に任せたら大きく化ける可能性がある仕事、はたまた社中で皆が注目しているプロジェクトなど、いわゆる「おいしい仕事」を任されることになります。

   また、社内で「優秀」とされる有名人であるがゆえに、「この仕事は、誰にお願いしようか?」となった時に、「誰でもいい」ではなく、「できれば○○さんにお願いしたい」「○○さんでないとこの仕事はできないので、是非お願いしたい」といった具合に、バイネームで仕事が集まる状態になっていきます。

仕事の報酬は仕事

   ただし、「優秀」な人が皆、高い報酬がもらえているかといえば、必ずしもそうとは言えません。なぜなら、えてして会社の中で得られる報酬、つまり給料やボーナス、あるいは昇進や昇格といったものは、今日1日の仕事ぶりで決まるものではなく、中長期的な昇進などを経て差が出るもの。このため、日々忙しく仕事をして成果を出しているにもかかわらず、同期と大差がないということは意外と多いもの(特に若い社員たちは違いが出づらい)。ならば「自分は優秀と呼ばれるべく努力をしているのに差がつかないと意欲が下がる」と思うかもしれません。ただ、優秀社員を維持して中長期的に高い報酬を得たいのであれば我慢が大事。おいしい仕事が集まること自体をありがたく受け止め、目の前の仕事に取り組むこと。「こんな仕事をやらせてもらえて光栄です」と、前向きな反応を見せて元気に仕事に取り組む。そして、その結果またさらにいい仕事が集まる。「仕事の報酬は仕事」なのです。

   当方も入社5年目のころ、仕事の報酬が膨大な仕事を生み出して多忙な日々を過ごしていました。当初、業務量に比べて給与が大幅には増えない。役職があがるわけでもない。自分より働いていない人が自分より上の立場で偉そうにしているのは不満・・・と感じたときもありました。ただ、そんな不満を口にすることをたしなめてくれた先輩がいました。

「ここが我慢のしどころ。不満を口にしたら、貯金してきた成功を失うことになるかもしれない」

   その先輩は、社内で不満を口にして社内で批判を受け、損な役回りをしていた時期があったようです。ありがたい一言でした。そして、その成果が大きく開いたのは約5年後。事業部長として報酬面、ポジション的にもジャンプアップする機会を得ることになりました。

   同様に優秀と呼ばれて活躍、その後に同期と大きく差がつく活躍をしている方々に我慢の時期に何をしたか、取材しました。そして、分かったこととは?

   こうした内容を含む新著『入社5年目から差がつく「優秀社員」の法則』をこのたび(2015年7月16日頃)、日本経済新聞出版社から発売することになりました。是非とも読んでいただけると幸いです。(高城幸司)