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インド発「やりたいことを仕事にする」 「めげない」動画が大人気

   食品メーカーのネスレがインドで展開する「#ItAllStarts」キャンペーンが話題になっている。

   キャンペーンの対象製品は、同社の看板で日本でもお馴染みのコーヒー「ネスカフェ」。ユーチューブやツイッター、フェイスブックの広告で公開された動画が見どころの本キャンペーンは、「ミレニアル世代」をターゲットに据えている。

自分の漫画をSNSに投稿

紙がだめなら、デジタルへ
紙がだめなら、デジタルへ

   ミレニアル世代とは、2000年代に成人、社会人になった世代のこと。ネットやデジタル端末がある環境で生まれ育ったいわゆるデジタルネイティブ世代とも重なるが、この動画はその世代の内面を映している。

   2015年9月4日に公開された本動画の主人公は、とある新聞社に勤める4コマ漫画家。彼はある日突然、上司から「新聞社に漫画は必要ない」と告げられてしまう。

   自分がこれまで携わってきた仕事が否定された彼は、自分がこれからどこに向かうべきか、そのヒントを日々の何気ない生活から得ようとする。

   彼は街中の人々の生活に自分の「妄想フィルター」をかけることで、新しいアイデアを得ようとする。窓際に腰掛ける美女には「恋のはじまり」、ベンチに微妙な距離をあけて座る男女には「恋が終わった瞬間」とテーマ付けをして、自宅にある四角いキャンバスにひたすら描いていく。

   明確な答えが見つからないまま、時間だけが過ぎていく。しかしあるとき、何気なく手にとったコーヒーがきっかけで 『逆転の発想』 を思いつく。

   「新聞社に自分の作品を認められないなら、新聞社とはまったく異なる場所で自分の創作活動を続けてみよう」と考え、行動に移し始めたのだ。

   そして自分の漫画をSNSに投稿した結果、多くのひとから高い評価を受け、自分の創作活動や自分への自信を取り戻していく。

ミレニアル世代に訴求

   SNSなどを通して自己表現をすることがストーリーの一部に組み込まれているのは、まさにミレニアル世代向けの動画ならでは。

   また、主人公は、自分の漫画を描き続けるためにはどうすべきか、と悩み続けていた。その姿は、ミレニアル世代の若者に見られる、仕事をやりたいことにするのではなく、やりたいことを仕事にする志向を映し出している。

   同社はこれまで、顧客層を「Y世代」とよばれる1980年代のベビーブーム以降に生まれた世代と定めていた。しかし、次世代を担うミレニアル世代の存在感の強さを感じ、このキャンペーンをきっかけに顧客層をシフトしたという。

   Youtube上で公開された動画の再生回数は、公開からわずか9日間で約265万回を記録。Facebook上でも、4.5万いいね、5600シェアと好評を得た。視聴者からは「感動した」「いつもは動画広告はスキップしてしまうけど、これは最後まで見てしまった」といった前向きなコメントが多く付いている。

   やりたいことを仕事にする志向は日本のミレニアル世代だけかと思いきや、インドにも共通しているようだ。国は違えど世代で共感を集める企画だからこそ、これだけの反響を得たのでは。(文:井上美穂、編集:岡徳之)