2020年 6月 3日 (水)

油断禁物「会長と社長の椅子のグレードが違う」 M&Aの成否をも分ける

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   私の周囲で、事業の拡大を狙って同業もしくはそれに近い中小企業を買収してはみたものの、なかなかうまくいかずに結局大手相手に手放すことになったという話が相次いで舞い込んできました。やはり中小企業には他社を自社に取り込むM&Aという手法は難しいのでしょうか。中小企業のM&A仲介を多数手掛けるC社M社長に、お話を聞いてみました。

   M&Aと言うと、新聞紙面で話題になる国内大手企業による海外企業買収の話や、海外資本による『モノ言う株主』としての国内企業『乗っ取り』といった話が思い浮かぶ人も多いかもしれません。しかし、近年M&Aはむしろ中小企業における事業承継難を手助けする有力な手段のひとつとして、取扱件数が飛躍的に伸びてきていると言います。

一目で分かった不調の原因

「椅子」は重要
「椅子」は重要

   私がM社長に聞きたかったことは、「中小企業にM&Aはハードルが高くないのか」ということと、「M&Aでよくある失敗例と、成功裏に事を運ぶためのポイントは何か」ということ。社長は最初の質問には「基本さえ押さえていれば、規模の大小は関係ない」と答え、後者の質問には「ありがちなケース」としてひとつの事例をあげて説明してくれました。

   それは、従業員100人規模の電気工事業で東京本社のA社が、関西を地盤とし自社の2分の1ほどの規模の同業B社を買収した時の話でした。A社は営業エリアを全国に広げたい、B社は後継不在で創業者健在のうちに雇用の確保を確定したい、そんな双方の思惑が一致してA社によるB社買収の話はトントン拍子にすすみ、半年後には正式契約となりました。

   A社社長は将来のA社事業承継の予行演習を兼ねて社長の長男37歳をB社の社長に据え、売主で創業者のB社社長は売却後1年での完全リタイヤを目途として一時的にB社の会長職に座り、経営譲渡を成功させるべく二人三脚経営で新スタートを切りました。しかし、譲渡後のB社の経営は当初思い描いていたようにはうまくはいきませんでした。

   3か月後には、B社主要取引先からの工事発注額が徐々に減少しはじめ、業務の中核となるベテラン社員が相次いで退職するなど、原因が分からぬままよどんだ空気が流れはじめました。A社社長は何か事前に知らされていない悪い情報があったのではないかと、仲介役のM社長宛にほとんど怒鳴り込みに近い勢いで相談に訪れたと言います。

   もちろん隠された事実など何もなく、M社長は部下を引き連れB社の実態調査と長男社長の経営手腕の確認に、大阪に飛びました。長男社長と売主である会長は仲良く新大阪駅まで出迎えてくれ、特に揉め事があるようには見受けられませんでした。

「ところが会社に足を踏み入れた途端に、すべての原因を象徴するものが目に入り、『ああ、これだ』とすぐに合点がいきましたよ。私は東京のA社社長にすぐその場で電話して、『原因が分かったので、申し訳ないが最後の買収費用と思って追加で50万円をすぐに出していただきたい。それですべて解決です』と伝えました」
「50万円で解決?その原因を象徴するものとは何だったのですか?」

   私は、皆目見当がつかずM社長に尋ねました。

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。 連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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