2024年 4月 26日 (金)

「エヴァンゲリオン」は予見していた 正社員「補完計画」の正体

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『エヴァンゲリオン化する社会』(常見陽平著、日経プレミアシリーズ、税別850円)



   「働き方」についてこれまで多くの著作を発表してきた常見陽平氏の新刊本は、タイトルが目を引く。「エヴァンゲリオン」とはもちろん、大ヒットアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」を指す。

   常見氏は、このアニメを通じて「日本社会における雇用・労働の問題を社会学的に捉えようとする試みである」と前書きで宣言している。エヴァが「日本の労働社会の変化を予言していた」というのだ。

キャラの名セリフが想起させる諸問題

   最初の章では、「新世紀エヴァンゲリオン」を知らない読者向けに、ストーリーやキャラクターの特徴、人気や議論をよんだ内容や背景に触れ、同様に大ヒットしたアニメ「機動戦士ガンダム」との世界観の違いについても詳しく解説している。そのうえで第2章以降、新世紀エヴァンゲリオンの登場人物や敵役について、作品上での位置づけ、振る舞い、セリフを分析しながら1995~2015年に起きた日本の雇用・労働問題の諸問題を論じている。

   例えば、主人公の碇シンジに焦点を当てた第2章で、「逃げちゃ駄目だ」という「名セリフ」を取り上げた。このスタンスが「職場や仕事から逃げられない時代、居場所が不安定な社会を物語っている」と指摘する。具体的に、作品がその出現を予言していたとして挙げたのが「ブラック企業」だ。

   14歳のシンジは父・碇ゲンドウから、エヴァンゲリオンのパイロットになるよう命じられる。敵との激しい戦闘で消耗し、時にはエヴァに乗ることから逃げ、引き込もる。だがゲンドウはシンジを「実に淡々と駒のように使う」。直属の上司であり保護者でもある葛城ミサト、科学者の赤木リツコも、一見寄り添うような姿勢を見せるが、それもすべてシンジをエヴァに乗せるため。「この姿は、若者を酷使する、ブラック企業経営者や管理職、そのものではないか」と常見氏は指摘する。

   ほかにも、綾波レイの「私が死んでも代わりはいるもの」という言葉から、「大卒者の就活、そして非正規雇用者が増大した光景」を連想させる、またシンジや綾波レイと同じくエヴァのパイロットで、エリートとして描かれる惣流・アスカ・ラングレーという女性キャラからは、現代企業が求めるグローバル人材、そして「すごい人にならなければならない」という求職者側を追い込むような問題を想起させる、といった視点で論述する。

   そして、「ただひたすら不気味に襲ってくる」敵キャラ、「使徒」の存在。これは、日本の労働社会の何を予見していたのだろうか――。

   常見氏は2012年に発売した「僕たちはガンダムのジムである」(ヴィレッジブックス)でも、人気アニメを用いて雇用・労働問題を論じた。本作も、そのユニークな切り口で諸問題を解説、考察する手法が随所にちりばめられている。

『エヴァンゲリオン化する社会』
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