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退職時の給与、早めにもらうの無理ですか? 会社は「通常通り25日しかダメ」
【「フクロウを飼う」弁護士と考える】

   先日、弊所に新人弁護士たちが入所してきました。一般企業は4月入社になる事が多いと思いますが、弁護士事務所は一足早めに年明けごろ事務所に入ることが多いです。

   さて、出会いもあれば別れもあるもので、12月にボーナスを貰った後や3月になると転職をする方が増えるように思えます。今回は、転職をした人が会社を辞めた後の給与支払いに関する話題です。転職をしたら、次の会社でお給与をもらうまで生活が厳しいという話も良く耳にします。今回はそんな悩みを解決する解説をしていきます。(文責:「フクロウを飼う弁護士」岩沙好幸)

退職金が入金されていない

なんとか早めに・・・
なんとか早めに・・・

   私はこのほど会社を退職し、もうすぐ新しい会社に入社することになりました。何かと出費がかさむので早く給与を支払って欲しかったのですが、「働いた分の給与は、通常通り25日にしか支払えない」と説明され、その通りに入金されました。

   しかし、口座を確認すると、出るはずだった退職金は支払われていませんでした。どういうことかと思い、前の会社に問い合わせたところ、「退職金の支払いは、ボーナス月の6月か12月のみの支払いになっている」とのこと。そうなると自分の手元に入ってくるのは、随分先になってしまいます。こういった支払い方ってありなのでしょうか?(実際の事例を一部変更しています)

弁護士解説 「給与」は請求あった7日以内に支払義務

   退職後、次の職場が既に決まっているのであれば、1か月~2か月程度持ちこたえれば新しい職場の給与が入ってくるので、そんなに困窮を極めることがないかとは思います。しかし、次の職場が決まっていない場合や、引っ越しを伴う転職だった場合、貯蓄が一切ない場合など、やはり先立つものが必要となってきます。そのため退職したら、早めに給与や退職金を支払って欲しいものですね。

   まずは、「給与」について、ご質問のように、早く支払ってもらうことができるのかどうかについて考えてみましょう。労働基準法を見てみますと、その23条1項には、「使用者は、労働者が退職した場合、労働者の請求があった場合には、7日以内に賃金を支払わなければならない」との定めがあります。

   つまり、この法律によれば、労働者である相談者が、退職後に、会社に対して「今から給与を支払ってください」と請求していたのであれば、会社は、その請求のあった日から7日以内に、労働者に対して給与を支払わなければならないのです。

   そのため、本件の事案のように、会社において、就業規則等で、賃金の支払日が毎月25日であると定められていたとしても、労働者は、退職後に会社に対して請求をした日から7日以内に、会社からその月に働いた分の給与を支払ってもらうことができます。

   それでは、「退職金」についても、「給与」と同様に、早く支払ってもらうことはできるのでしょうか。残念ながら、労働基準法の同規定は、退職金には適用されないことになっています。「退職手当は、通常の賃金と異なり、予め就業規則等で定められた支払時期に支払えば足りるものである」との行政通達があるため、予め労働契約や会社が定めた就業規則に、退職金の支払い時期が定められていれば、会社は、労働者に対して、その定められた日に、退職金を支払えばよいことになるのです。

退職金は、就業規則次第

   今回のご相談内容で言いますと、労働者が「退職金の支払いはボーナス月の6月か12月である」との退職金の支払時期に関する規定について知らなかったので、会社と労働契約を結んだときの労働契約書には、この規定が記載されていなかったと思われます。しかし、労働者が、会社から「6月か12月」に支払うと言われていることからしますと、そのような退職金の支払時期に関する規定が、会社の就業規則に定められていた可能性があります。その場合、残念ですが、次の6月なり12月なり、規程の支払い時期まで退職金が支払われるのを待つしかありません。

   新しい職場に転職する時に、前の会社の事でもめ事があると、気持ちの良いスタートが切れませんよね。まずは会社を辞める前に、労働契約書や就業規則に、退職金の支払時期が記載されているのかも確認するようにしましょう。

ポイント2点

●「給与」に関しては退職後、退職者から請求があった場合に、その請求のあった日から7日以内に会社は支払う義務がある。

●一方、「退職金」は会社が就業規則上で支払い日時を指定することができ、指定されている場合は、それに従わなくてはならない。