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食わず嫌い国民にチャレンジ カンボジアで「わたあめ」売る

   日本は今、猛烈な暑さのようですが、みなさん、いかがお過ごしでしょうか? 私はいま、カンボジアのイオンモールでわたあめを売っております。

ここだけ違う国のよう

おっかなびっくり、わたあめに人が寄ってくる
おっかなびっくり、わたあめに人が寄ってくる

   カンボジアでのイオンモールの位置づけは「国内で唯一最大のスーパーショッピングモール」です。言ってみれば、リトルリーグにイチローがやってきたくらいの衝撃で、このモールの中だけ違う国のようです。

   実際に物を売ってみると、本当に別の国だということがわかります。

   ここにたどり着く前、準備の段階では、不安がありました。カンボジアでは、わたあめはメジャーなお菓子ではありません。と言うより、ほとんどの人は見たこともありません。そして、見たことがない食べ物にチャレンジするのを恐れるという国民性もあります。

   なので、我々の「サムライカレー」というお店がある、市内のちょっと外れの地域で、わたあめの試食会をやっても、誰も食べてくれません。日本人がわいわい騒いでいるので寄っては来るし、なにか変なものが作られているようだ、とのぞいてはくれるのですが、いざ食べてもらおうと差し出すと、逃げていってしまいます。

   「これは......大丈夫か......」イオンモールでの販売本番に暗雲が立ちこめます。

   まずは1日販売してみて、様子をみて、わたあめがだめそうなら別のものに切り替える。その代替案も考えておく。そんな感じで販売をスタートしました。

   イオンモールでも、最初は遠巻きにしてあまり寄りつかないお客さん。ところが、実際にわたあめ機を回してみると、人が寄ってきます。「食べてみる?」というと、イヤイヤ...って顔をするのですが、「まあまあ」とか言いながら押すと食べてくれます。

   「やってみる?」とけしかけると、1人が割り箸を手に持ってわたあめを作りだしました。

様々なトラブル乗り越え

   そこからは、お祭りです。わたあめの綿が段々大きくふくれるように、次々と人が集まってきて人だかりができ、次から次へとわたあめが売れていきます。

   その商品がいい物だとお客さんに納得してもらうためには、まずは誰かに手にとってもらわなくてはなりません。そして、その商品をいいと思ってくれる人が増えると、物は次から次へと売れるようになります。営業という職種の大切さ、フリーミアム(基本のサービス・製品は無料で、より高次の機能は有料で提供するビジネスのしくみ)が成功している理由、それがリアルなお客さんの動きで理解できます。

   この取り組みは、「サムライカレープロジェクト」という研修プログラムの一環で、大学生を中心とした研修生が、自分たちで商売の売り物、価格などを考え、実際に海外で商売をしながら、ビジネスを学んでもらうというものです。

   イオンモールのあとも、「価格を変えると客足はどのように変わるか?」「場所を変えて、サムライカレー店舗周辺で売るにはどのようにプロモーションをすべきか?」など、マーケティングの4P(product price promotion place)を実地に学んでもらっています。

   途中でわたあめ機が故障する、病欠でスタッフが足りなくなるなど、様々なトラブルを乗り越えながら、商売を回していき、日々逞しくなっていく研修生を見るのは実に楽しく、こういう人たちが「わたあめ」みたいな日本の文化を世界各地に広げてくれたら面白くなるな、と思っています。(森山たつを)