漫画「ドラゴンボール」の主人公・孫悟空の名せりふにこのようなものがあります。
ブルマ「パパやママも殺されちゃうわ!」
孫悟空「大丈夫だ、ドラゴンボールで生きかえれる」
人の生き死にに関して非常に軽く、たくさんの人が殺されることを容認する発言として叩かれがちで、「サイコパス」「人でなし」と罵られたりもします。ただ、このせりふ、ちゃんと物語の背景を理解していれば特に問題ないということも分かるはずです。
ドラゴンボールは、死んだあとも死後の世界で結構楽しくやっていけるという話。しかも、ドラゴンボールを使えば、結構簡単に現世にも戻ってこれるのです。まだ死んだことがないブルマにとって、「死」というのはものすごく恐ろしいものですが、孫悟空にとっては、死後の世界は簡単に行き来できる場所であり、一時的に地球人が全員殺されても、どうってことないと分かっています。だからこその冷静な言葉であるわけです。
この部分を読んでみて私が感じるのは、日本人にとって「海外で働く」ということに関する感覚も、この悟空とブルマくらいの感覚の開きがあるんだろうなということです。
あまり日本を出たことがない人にとって、海外とは未知の場所です。普通に生活していても物を盗まれる、仕事をしようとしたら騙される、夜道を歩いていたら殺される――それくらいの、恐怖を感じている人がたくさんいます。
東南アジア海外就職に対して、いまだに「ブラジル移民は......」などと、戦前の話を持ち出す人までいます。当時は、ブラジルまで船で行くのに2か月近くもかかる、気持ちとしては命がけの渡航でしたが、現在東南アジアに行くのは片道2万円、6時間の小旅行なのですが。
人は未知の場所に恐怖を感じます。しかし、実際に行ってみると、その恐怖は薄れる場合が多いです(実際に恐怖であることを確認する場合もなくはありませんが)。
私は日常的に日本と海外を行き来しており、海外で楽しく暮らしている日本人1000人以上に会っています。そういう経験をしていると、
「海外なんか行ったら、殺されちゃうわ!」
「大丈夫だ、飛行機乗れば帰ってこれる」
と、気軽に言ってしまいます。
ちなみに、物理的に帰ってくるのはものすごく簡単ですし、海外から帰ってきて日本で仕事がないってこともあまりありません。普通に日本国内で転職するのと変わりません。死後の世界には行ったことがないし、そもそもこの世界にドラゴンボールはないので、死ぬのはすごくイヤですが、飛行機も転職エージェントもあるこの世界で、海外に恐れをなす必要はありません。
怖がらず、どんどん外の世界に足を踏み出してみてください。(森山たつを)