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高人件費が「辛い世の中」生む 日本でカレー売って感じたこと

   私はカンボジアで「サムライカレー」というカレー屋を経営しているのですが、先日、「出張! サムライカレー!」ということで、福岡のJリーグチーム、アビスパ福岡の試合会場で販売させていただきました。

   その時に感じたのが「日本の人件費、高い」ということです。

  • カンボジア、人件費の安い国
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カンボジアと同じでは大赤字

   日本とカンボジア、物価が全然違う国なのですが、モノ自体の値段はさほど大きく変わりません。野菜などは日本のほうが高いですが、工業製品などは日本のほうが安く、トータルでは2倍弱というところです。

   それに対して、人件費や人件費がコストの大半を占めるタクシー代などは、日本が途方もなく高くなります。カンボジアでバイトを雇うと時給50円から100円。対する日本は1000円。

   カンボジアでタクシーを使って数キロ移動すると200~400円。日本だと2000~4000円。10倍です。

   ちなみに、カレーの売価は3~5倍程度。間違いないのは、カンボジアと同じような人の使い方をしていると大赤字になることです。そのため、日本で商売をやるときは、人の使い方がシビアになります。限られた人数で必要な仕事を全てやる必要があるため、一人に任せる仕事量が多くなり、その仕事も複雑かつ密度が高くなります。

   カンボジアのレストランや小売店にいると、無駄にたくさん従業員がいることがわかります。下手すると、半分くらいの従業員は何もしていない。これには理由があります。彼らは息をするように自然に朝来なかったり、ランチから帰ってこなかったりするので、多めの人数が必要ですし、そもそも複雑な仕事を任せるとミスを連発するという事情があります。

   ただ、従業員たちを見ていると楽しそうに仕事をしており、過労自殺などとは遠いところにいます。日本の外食産業がブラック企業の巣窟となっているのと大きな隔たりを感じます。

辛い世の中でないと成り立たない

   これも、経営者目線で見ると仕方がないことです。原価の中で人件費の比率が低いカンボジアでは、人を余計に雇っても、その人がサボっていても問題は少ないです。しかし、人件費の比率が高い日本だと、そんなことを言っていられません。高い給料の分稼いでもらわなくてはならないので、キッチリと難度の高い仕事をこなしてもらわないと経営が成り立たないのです。

   日本でブラック企業がはびこっている理由のひとつは、この辺にありそうです。難しい仕事をキッチリこなさないと怒られるというのは、能力の低い人には辛い世の中です。休む間もなく働かされるのは、体力のない人には辛い世の中です。しかし、その辛い世の中にしないと経営は成り立たない。

   もちろん、日本よりも人件費が高いであろう欧州では、ブラック労働はあまり問題になっていないので、理由はこれ以外にもあるのでしょう。しかし、たった1日、日本の飲食業経営者をやってみただけで「これは、ヤバイ」と思ってしまう、そんな状況にあると感じたのは事実です。(森山たつを)