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なぜかくも多き女性引きつける しまむら「ハッシュタグ」の秘密

   すでにいろんなところで書いているが、私は「ファッションセンターしまむら」が大好きだ。お金がなかった(今もないが)学生時代、それまで失礼ながらバカにしていた「しまむら」へ行ってみたときのことは忘れられない。こんなに可愛くて流行のデザインの服が、こんなに安い値段で売っているのか。

   店内で掘り出し物を見つけるワクワク感は誰にも教えたくなかったが、世は「プチプラ」ブーム。しまむらは、私だけが知っていたインディーズバンドが瞬く間にメジャーデビューし、スターダムをのしあがって私の手を離れたように(大袈裟なのは承知である)女性たちの支持を集めた。今やインスタグラムには「#しまむら」のハッシュタグがあふれ、ブロガー界では「しまむらコーデ」のテーマで月に何百万アクセスを誇る女性も珍しくない。なぜ、こんなにも多くの女性を引きつけるのか。

「#しまパト」は最強だ

服を掘り出すワクワク感、その糸口は?
服を掘り出すワクワク感、その糸口は?

   しまむらファンの間には、「#しまパト」なる用語がある。「しまむらパトロール」の略語で、定期的にしまむらを回って「可愛いもの」「オトクなもの」がないか探す行為のことである。良いものが見つかれば「#しまむら戦利品」「#しまむら購入品」とハッシュタグをつけて、SNSに投稿する。女性ユーザーが多いアメブロやインスタグラムでは、このハッシュタグが大変な人気だ。

   いろんな人に「自分を好いてもらう」というより「嫌われてはならない」SNS空間において、しまむらのハッシュタグは最高の自己アピールである。「激安店で、こんなに可愛いものを見つけちゃった庶民派の私」を嫌味なく演出できるからだ。

   これが「#エルメス購入品」とか「#シャネル・パトロール」なら、見る人によってはかなりの嫌味である。見栄っ張り消費を自慢するな!と、反感を買うこと必至である。

「#プラダ戦利品」とはわけが違う

   「しまパト」なる秀逸な造語を考えついた人は誰なのだろう。「#しまパト」「#しまむら戦利品」のハッシュタグさえつければ、「基本的に安物を売っているお店」に行く日常を示すことで、庶民派アピールができる。「私なんて、しまむらを定期的に『パトロール』しちゃうくらいだから、庶民のヒマ人なんですよ。こーんな安い娯楽で満足できちゃうんです」と、軽い自虐もかませられる。

   そして「戦利品」である。「#プラダ戦利品」と「#しまむら戦利品」ではわけが違うのだ。しまむらはネット通販をしていないこともあって、「今ここで買わなければ売り切れてしまうかも」と謎の競争意識をあおられ、購入を即決しやすい。980円均一のワゴンに群がる人混みから、売り切れ寸前のアイテムを文字通り「掘り出す」作業は、ちょっとした戦場である。そんなことに夢中になってしまった自分を軽く嗤うセンスも、「#戦利品」には含まれているのだろう。

   ゆっくりブティックを歩きまわり、店員にお茶を出され、優雅に買い物をする高級ブランドには「#戦利品」ハッシュタグが似合わない。どちらで買うのが正しいわけではないが、とにかくしまむらには「パトロール」という軽い自虐や、掘り出し物をゲットする喜び=「戦利品」の表現がピッタリ。戦いに勝利した味はクセになる。

   だから今日も女たちは「しまむら」へと足を運ぶのだ。もちろん私も。(北条かや)