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「私が開拓した取引先だもん」 新米フリーの甘え、世に通るか

   自分の実力を確かめたい、もっとフレキシブルに働きたいといった理由で、フリーになる道を模索する人は少なくないだろう。ただ、商品やサービス、技術などを買ってくれる相手を一から見つけなければならないとなると、二の足を踏みたくなるのも当然ではないか。

   では、勤務先の取引先から「独立しても一緒に仕事しよう」と言われたら? セーフか、アウトか、ネット上に相談が寄せられている。

「誰に依頼するかは取引先が決めることでは」

何がいけないのか
何がいけないのか

   Q&Aサイト「教えて!goo」に、今まさにフリーのデザイナーになろうとしている25歳女性からの投稿が(2016年10月20日)。

   3年ほど勤めている、社長を含めて10人もいない小さな会社は、残業あり、給料低い、営業がいないので自分で仕事を取ってくるというスタイル。それでも社員同士の仲はよく特に不満はなかったが、先輩たちがあまり仕事ができず、投稿者の負担が増え、うつ病と診断されてしまったそう。

   自宅で作業するなど負担を減らすようにはしたが悪化の一途で、自身もうつ病の経験がある社長から退職を勧められ、辞めることに。遠方に引っ越し、フリーランスとして働く決意をしたという。

「その際に、前職で懇意にしていた取引先とも仕事をするようになりそうなのですが(その取引先は私が営業し、私自身がデザインを手がけていました)、それらを社長に伝えた際に、物凄く失望した、お前はそんなことをするなんて...といった感じに言われました」

   会社に仕事を依頼するか、それとも自分に依頼するかは取引先が決めることで、何がよくないのか分からないという投稿者。「何か私の行動、思考は間違っているのでしょうか」と、ヘルプを出している。

違法とされる可能性も

   回答者からは、投稿者に対する厳しい直言が相次いでいる。

「たとえ、あなたが開拓(営業)なさった取引先であったとしても、それは前会社の社員としての付き合いで個人ではありません。今後も、取引先等、競合する可能性が大ですから、話し合いをし、取り決めをするのが妥当だと考えます。まずは前会社の下請け的感覚で始められるのも一考かと思います」
 「可愛がって円満退社した社員が、自社の顧客にちょっかいを掛けていると判れば・・。『飼い犬に手を噛まれた』『可愛さ余ってなんとやら・・』の世界じゃないでしょうか?」
 「こういった事例では、本来は3社(者)間で話をして正式に手打ちを行うのが礼儀なので、今回はしょうがないけど、今後は気をつけたほうがいーと思う」

   このように、主に「礼儀」「商道徳」の面でよくなかったと諭す書き込みが多い。世間の常識はこのあたり、ということなのだろうか。

   「弥生会計」などのビジネスソフトウエア製品で知られる弥生株式会社が運営するサイト「スモビバ!」には、「独立・起業後は会社員時代に自分が開拓した顧客から契約を取れるのか?」という記事が掲載されている(2015年4月23日)。

   それによると、会社の顧客情報は「営業秘密」にあたる可能性があり、これを不正に持ち出したり使ったりすると「不正競争防止法」違反になる。また、会社の雇用契約や就業規則などの「秘密保持義務」を破る形になるおそれも。礼儀や道徳といった慣習の面でアウトというだけでなく、法律や規則に違反しているかもしれないのだ。

   もし独立・起業後に前の会社での取引先と仕事をしようとするのであれば、そのあたりをよくよく確認すべし。(MM)