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イマドキ新人は「仕事が楽しくない」? 変わるのはアナタだ!(江上剛)

「新入社員が入ってくる季節がやってきます。わが身を振り返ると、仕事を始めた頃は楽しかったなあと思い出されますが、今の新人を見ると、あまり楽しくないのかな、と余計な心配をしてしまいます。どのようにアドバイスすればいいのでしょうか」

   先日、60歳代の高名な演出家の話を聞いたけど、あなたと同じ悩みを話していたね。

  • みんなでつくり上げる!
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心の襞が少ないのかも...

   芝居って情熱をぶつけるものだから、心の底からの激しさが必要だ。ところが若い劇団員は、確かに演技はできるんだけど、どうも形だけをなぞっているみたいなんだって。

   全体的に無表情で、言われたことはそれなりにこなすけど、どうも心がないような気がするらしい。最近は、反抗期もないらしいから、「心に襞が少ないのかな」とその演出家も悩んでいた。

   でも、芝居を造り上げる過程で、若者と話し合い、自分の考え方をぶつけ、議論し、叱り、泣き、笑いすれば、変わって来るらしい。

   心に襞ができ始め、それが表情になって表れ、心のこもった演技ができるようになってくる。

   演出家曰く、「若者と心を通わす過程で、自分も心の襞が無くなって来ていることに気づきました」。

   そうなんだね。若者が無表情で、楽しくないように見えるのは、あなたの心の鏡なんじゃないかな。あなたの心が、襞をなくし、つるつるになっている。若い頃は、あなたはなんにでも感動し、心に襞をいっぱい作っていた。

   ところが、会社の仕事に慣れてくると徐々に感動がなくなり、襞がとれてつるつるになってしまった。その襞がなくなった心で若者を見るから、若者は楽しくなさそうに見える。

   おそらく、今の若者とあなたや私とでは、楽しさが違うだろうね。同じものを見ても同じようには感動はしない。たとえば、いちごのショートケーキがあるとしよう。私なら、初めて食べたケーキがいちごのショートケーキだったので大いに感動し、いちごのショートケーキにまつわる思い出話を10も20もできる。大いに感動し、パクつく。

   しかし、今の若者は生まれた時から、いちごのショートケーキなんか見慣れているし、食べなれているから、感動はあまりないだろう。分かるかな、分かんないかもしれない。このショートケーキの例じゃね。

若者とアナタでは楽しさの基準が違う

   要するに、若者は楽しくないのではなく、あなたと楽しさの基準が違うだけだということ。それでどうするかと言えば、先ほどの演出家のように若者と徹底的にぶつかって、新しい関係を構築していくしかない。

   演出家は自分の芝居のイメージがある。それが絶対だと思っている。それをぶつける。若者は反応しない。楽しくも面白くもないからだ。仕方がないので言われた通りに演技はするが、心が籠っていないため、演出家は不満だ。それでもっと議論する。喧嘩腰だ。徐々に若者が自分の意見を言いだす。何が自分たちにとって興味のあることなのか。何が嬉しいのか。何に感動するのか。若者の口から出てきた言葉に演出家は驚く。それは今まで自分が気付かなかったことだからだ。

   演出家は、若者の意見を取り入れ、新しい演出を試みる。すると、そうしたことだろうか。過去に演じた劇なのに、まったく新しい劇になったではないか。演出家と若者が共同でつくり上げた新しい芝居が完成したのだ。

   この例なら少しは感じが分かるかな。「アドバイス」なんていう上から目線ではなく、若者と新しい何かを造り上げてみようよ。あなたも変わるから。あなたの心にも新しい襞ができるから。