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駅にも「格差」? それは住んでいる人、利用する人を映す「鏡」かも... 【気になる本の散歩道】

   「駅格差 首都圏鉄道駅の知られざる通信簿」(首都圏鉄道路線研究会) SB新書

   世は「格差社会」らしい。資産・所得、階級、教育...... いろいろな格差があるが、本書は「駅」にみられる格差に注目した。

   「駅格差 首都圏鉄道駅の知られざる通信簿」(首都圏鉄道路線研究会)は、首都圏の「駅」に存在する、あらゆる「格差」について紹介している。

駅チカの充実度やトイレ利便性が高い駅をランキング

   通勤や通学、買い物やレジャーなどで利用する駅は、そこに住んでいる人、利用する人の生活水準や暮らしぶりを映しだす、いわば「鏡」のようなものなのかもしれない。

   たとえば、「ライバル駅対決」(第2章)で登場するJR中央線の国分寺駅と、京王線の調布駅の対決は、乗り入れている路線数から電車の通勤トラブル時の選択肢に注目した。

   どちらも人気の住宅地で乗り換えなしで新宿まで行かれて、交通の利便性がよい。国分寺駅からは、中央特別快速で21分。調布駅からは特急を使えば15分で着く。

   ところが、電車のトラブルで運転見合わせが起きると、国分寺駅であれば乗り入れている西武線を使って、なんとか新宿駅に出られるが、調布駅ではバス便しかなく、ヘタすれば立ち往生してしまう。なるほど、「速い」だけでない、メリットが国分寺にはあるわけだ。

   また、社会デザイン・消費社会研究者の三浦展氏へのインタビュー(第4章)では、「下北沢の凋落と三軒茶屋の人気上昇」を紹介。魅力的な飲食店が増えている、小田急線の下北沢駅はその魅力が伝えきれていないと指摘。同じ世田谷区内で、よく比べられる東急・田園都市線の三軒茶屋は、女性の年収が上がると「住みたい街」ランキングが上がるという。

   ママチャリ姿の女性も目立ち、渋谷や表参道、大手町までも電車1本で行かれる立地に、最近は中央線沿線や下北沢に住んでいた出版関係者や編集者が移り住んでいるそうだ。

   乗り降り人数に乗り換えの利便性のほか、駅とその周辺を形づくる「駅前横丁指数ベスト5」や「駅地下街の充実度ベスト5」、「駅トイレ利便性が高い駅(女性編・男性編)」、さらには駅そばの名店やファストフードがない駅、利用者が少ない駅に自殺者数が多い駅...... さまざまな特徴をもつ駅を、ランキングをまじえて取り上げている。

   首都圏にある駅の数は日本一だ。JRや地下鉄、東急線、小田急線、京王線、西武線、東武線、京浜急行、京成線...... 路線も数多く存在。読後、駅にみられるさまざまな「格差」を感じながらホームに降り立ってみると、新たな楽しさが見つかるかもしれない。