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お騒がせトランプ、今度は世界中が「考え直せ!」と迫る?(井津川倫子)

   2018年3月、トランプ米大統領が突然「鉄鋼やアルミの輸入製品に高関税をかける」と表明をして世界中を騒がせています。

   まるで貿易戦争を奨励するような発言に、世界各国が猛反発! すでに戦いが始まっているかのようなヒートアップぶりですが、「目には目を」タイプから「静かな脅し」まで各国の反応はさまざま。今回は、各国リーダーの生々しい反応から「生きた英語」を学んでいきましょう。

  • お騒がせトランプ、今度は「鉄鋼」の輸入に高関税を表明
    お騒がせトランプ、今度は「鉄鋼」の輸入に高関税を表明
  • お騒がせトランプ、今度は「鉄鋼」の輸入に高関税を表明

「オレンジジュース」で「目には目を」!

   トランプ米大統領が、「鉄鋼に25%、アルミニウムには10%の関税をかける」と表明したとたん、海外メディアは直ちに「トランプ、戦争宣言」と大々的に報じました。

   Trump has declared a trade war against the whole world.
(トランプは全世界を相手に、貿易戦争を宣言した)

   ※「declare」(宣言する)
 「trade war」(貿易戦争)

   何だかおどろおどろしい表現ですが、トランプ大統領の発言に真っ先に反応したのがヨーロッパ諸国でした。

   We are not going to sit on our hands while our industry is at risk of being hit with unfair measures.
(自分たちの産業がアンフェアな手段でリスクにさらされるのを、傍観はしない)

   ※「sit on one's hands」(手をこまぬく)(傍観する)
「手を膝の上におく」から「手を出さない」という意味

   さらに欧州連合(EU)のユンケル欧州委員長は、具体的なアメリカ製品の名前を挙げて「報復関税をかけるぞ」と通告しました。まさに、「目には目を」の反応です!

   ちなみに、報復関税の対象として名前が挙がったのは、

「Harley Davidson」(ハーレーダビッドソン)
「Bourbon whiskey」(バーボンウイスキー)
「blue jeans」(ブルージーンズ)

   などでしたが、なかでも「orange juice」(オレンジジュース)の輸入制限は「キラーカード」の一つだと言われています。オレンジジュースの産地フロリダ州が選挙の結果を左右する「swing state」(激戦州)なので、中間選挙を控えたトランプ大統領としてはフロリダ州に打撃を与えたくないだろう、というのがその理由だそうです。

   「貿易戦争」の最大の標的とされる中国も「傍観しないぞ」と、けん制。具体的な報復策には触れていませんが「(バカなことをしたら)どうなるかわかっているだろうな」と暗に脅しているような凄みを感じます。

   China would take "necessary measures" if its interests were hurt.
(中国は、自国の利益が損なわれることがあれば必要な手段に訴える)

   英国は少しもったいぶった反応ですが、きっと腹の中は煮えくりかえっていることでしょう(笑)。

    British prime minister Theresa May expressing "deep concern".
(英国のメイ首相は強い遺憾の意を表明した)

   ※「express concern」(遺憾の意を示す)はTOEIC L&Rテストの頻出表現でもあります。

   一番ストレートな反応は、イケメンでおなじみのカナダのトルドー首相でした。

   Absolutely unacceptable!
(断じて、受け入れられない!)

   カナダにとって隣国・米国の影響力は甚大ですから、心の底からの憤りが伝わってくるようです。46歳の若きリーダーらしい、短いけれどインパクトがある発言でした。

身内からも「トランプよ、考え直せ!」と

   トランプ大統領の「戦争宣言」には、身内である共和党からも反発の声が上がっています。ライアン下院議長までもがトランプ大統領に「考え直せ」と迫っていると報じられました。

   そこで、今週のニュースな英語はコレ!

   Mr. Ryan urged Trump to reconsider his plan.
(ライアン氏はトランプ氏に計画を考え直すように迫った)

   今回のニュースでは「urge someone to reconsider」(考え直せと促す)という表現が目に付きました。まるで世界中がトランプ大統領に「考え直せ」と迫っているように見えます(実際、そうなのでしょうが......)。

   European leaders urge U.S. to reconsider steel, aluminum tariffs.
(ヨーロッパのリーダーたちは、アメリカに鉄とアルミニウムの関税について考え直すよう迫っている)

※「tariff」(関税)

   「reconsider」(考え直す)という単語の応用バージョンを紹介しましょう。「再度検討する」という意味で、ビジネスの場面でよく使われます。

   Please reconsider a plan.
(計画を再検討してください)

   取引先に提案の再考をお願いする時や、部下に「やり直し」を命ずる時に使えそうです。

   Iurge you to reconsider your decision.
(決定の再検討を求めます)

   交渉で「相手に強く要請する」時に使います。強いニュアンスなので使うタイミングとシチュエーションには気をつけたほうがよいでしょう。

   同じような言いまわしでも、「beg」(お願いする)を使うとずいぶんと印象が変わります。

   I beg you to reconsider your decision.
(何とか、再検討していただけませんか?)

   うまく使えば「そこまで言うなら仕方ないなあ」と、相手の譲歩を引き出せるかもしれません。「reconsider」を使いこなして、交渉上手を目指してください。

   それにしても、世界中から総攻撃されたトランプ大統領が「考え直す」かどうか、今後のニュースに要注目ですね。(井津川倫子)