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儲からない貸金業者、約8割が「減収・横バイ」 2016年度

   貸金業者が儲かっていない――。

   銀行のカードローンの「貸し過ぎ」をめぐる問題が表面化するなか、過払い利息にかかる返還請求や、個人の借り入れ総額を制限する総量規制の影響で、厳しい経営環境にさらされている。貸金業者の2016年の経営実態を、帝国データバンクが2018年3月23日に明らかにした。

  • 貸金業者、今後の「強敵」はフィンテック!?
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「増収」、21.3%にとどまる

   調査によると、貸金業者(消費者金融と、不動産担保ローンなどの事業者金融の合計)294 社のうち、2015 年度、16 年度決算の年収入高が判明した277 社の業績推移をみると、16年度に「増収」となった企業は59社(全体の21.3%)。「減収・横バイ」となった企業は218社(78.7%)で、全体の約8割を占めた。改正貸金業法の総量規制で、貸出残高が減少した。

   277 社の貸金業者を業歴別でみると、「30~50 年未満」が114 社で最多。次いで「10~30 年未満」が95 社となった。業歴10~50 年未満が全体の7 割を占めている。その一方で、「50~100 年未満」は66 社、「100 年以上」の老舗は、商業手形割引を手がける東信商事(東京都中央区)など2 社となった。

   従業員別でみると、「10 人未満」が226 社となり、次いで「10~100 人未満」は59 社。「1000 人以上」は3 社だった。全体の76.9%が、小規模企業が占めている。

   貸金業者は、1986年のピーク時には4万7504社にのぼった。消費者金融は、「高金利」で稼いでいた時代を経て、その後は過払い利息の返還請求が多発。武富士などの大手が経営破たんしたり、アコムやプロミスがメガバンク傘下に入って再生を目指したりと、業界再編を余儀なくされた。

   さらに、銀行のカードローンには適用されていない総量規制(改正貸金業法)が2010 年6 月に施行。個人の借入総額が年収の3 分の1 までに制限されたこともあり、銀行のカードローンに利用者を奪われる事態にもなっていた。

   日本銀行の「貸出先別貸出金」によると、国内銀行139 行の2016 年度末時点のカードローン貸出残高は、前年度と比べて9.4%増の5 兆6024 億円。一方、消費者金融を含む貸金業者の貸出残高は4 兆円となっている。

急成長の「クラウドファンディング」 が新たな競合先に!?

   帝国データバンクは、都心部でのビル・マンション建設や東京五輪・パラリンピック関連工事の融資案件の増加に伴い、事業者向けの「不動産担保ローン」を手がける貸金業者は「収益が改善傾向にある」と指摘。また、消費者金融は2009 年9 月以降、過払い利息の返還請求が減少しており、ピーク時に比べて利益率が改善しつつあるという。

   しかし今後は、ソーシャルレンディングやクラウドファンディングなどのIT を活用した新たな金融サービス「フィンテック」との競合が激しくなりそうで、独立系の中小貸金業者の淘汰が加速する可能性がある、とみている。