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仮想通貨が流行したワケ 飛びついたのは新興国、その事情とは......(ひろぴー)

   はじめまして。ひろぴーです。株式や外国為替証拠金(FX)取引をはじめ、差金決済取引(CFD)や仮想通貨などのアクティブ運用を得意とする個人トレーダーです。しかも、「わたし、負けません」(笑)。

   さて、今回のテーマは「仮想通貨」。いまや知らない人はいませんよね。でも、仮想通貨の流出や詐欺まがいの事件が起こり、「大丈夫かな」「どうせギャンブルでしょ」といった印象を抱いて二の足を踏んでいる。その半面、「安全・安心であれば、やってみたい」なんていう人も少なくないと思います。そこで......

   まだ、間に合います! ただ、仮想通貨のこと、きちんと理解しておいてください。わたしが、伝授します!

法定通貨とビットコインの送金・決済の違い

   2017年は仮想通貨元年といわれ、ビットコインをはじめとする多くの仮想通貨に注目が集まり、その価格が何十倍にも上昇しました。価格の上昇ばかりに目が向いてしまいがちですが、今回は仮想通貨、なかでもビットコインの技術が注目され、世界的に使われるようになりはじめたワケを、説明しましょう。

   まず、米ドルや日本円などの法定通貨と、ビットコインとの送金・決済の違いを簡単にみていきましょう。

【決済】
法定通貨:現金や電子マネーで支払います。支払い時間は数秒で完結
ビットコイン:ウォレットから店舗側のQUコードでアドレスを読み込み、金額を確認し送金。30秒から1分ほどの時間を要す場合もある。

【送金】
法定通貨:基本的に送金は銀行に限定。手数料は他行の場合は数百円、海外送金となると数千円の手数料が必要。また、送金時間は国内では送金依頼によると翌日になる場合があり、海外送金では数日かかる。

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※ビットコインの送金状況、取引所の送金手数料による

   これらをみると、ビットコインは送金面では有利でも、決済面では劣るように思えます。 では、実際にビットコインが使われているケースをみていきましょう。

新興国での利用が活発

   日本ではビックカメラなどの家電量販店や一部の飲食店でビットコイン決済が可能となっています。しかし、実際に日本人がビットコイン決済を行うメリットはあるのでしょうか?

   たまたま手元に現金がないなどの場合を除き、現金決済やクレジットカード決済の方がポイントも貯まります。わざわざビットコイン決済にするメリットはないように思えます。

   しかし、新興国や発展途上国の場合どうでしょう? 事例をみていきます。

インフレ体質の国に、仮想通貨は救世主!?

   たとえば、南アフリカ共和国の例です。
この国は、自国通貨の不安定さが欠点です。

   南アフリカの通貨ランド(ザールとも呼ばれる)は、常に不安定な状態であり、円や米ドルに対して長年下落が続いています。そうすると、貯蓄していたとしても、その価値が減少してしまう事態に直面します。それゆえ、これでは安心して生活していけません。

   そこで不安定な自国通貨のまま保有しているくらいなら、米ドルを使うようになってしまうのです。

   ただし、その米ドルでさえも偽札の可能性もあります。また、20ドル以上の紙幣は信用がありません。結局のところ、新興国や発展途上国は先進国以上に安心して資産を蓄えることが困難なのです。

   さらに新興国の銀行でも、自国通貨と米ドルの換金手数料が非常に高く、生活に余計な出費があるのは現在でも問題となっているのです。 そこで昨今、ビットコインを保有していたほうが値上がり益も期待でき、なおかつ偽物の可能性はゼロといってよく、安全に管理できるということで「デジタル資産」に注目が集まりました。

   彼らは銀行口座を持つ割合が少ないのですが、スマートフォンや携帯電話は普及しています。そのため、銀行に貯金できなくてもスマホを保有していればビットコインで資産管理をすることが可能なのです。

   もともと南アフリカでは自国通貨不安が広がっていたために、Tポイントなどのポイント経済が普及していた背景がありました。その規模は巨大で、一説によると南アフリカの国内総生産(GDP)の半分がポイント経済ともいわれています。

   そのため、ビットコインによる決済は、南アフリカのほうが日本よりも遥かに普及しており、街のカフェや本屋で当たり前のようにビットコインで買い物ができる環境にあるそうです。

   ちなみに、韓国でも仮想通貨が非常に流行っていますが、これは北朝鮮による不安で、自国通貨が売られやすくなっていることが要因にあるともいわれています。

中国政府、「キャピタルフライト」にNO!

   もう一つの大きな要因は、キャピタルフライト(資本逃避)です。少し前は、ビットコインといえば中国で流行っていたことをご存知の方が多いでしょう。

   中国では、自国資産を海外に移動させることに多くの制限があります。たとえば、外貨両替は1年にたった5万ドルとされています。しかし、ビットコインであれば取引所で両替して、そこから米ドルやユーロに替えることができます。また、国内を出る時もウォレット(仮想通貨を保管する場所、電子財布)に入れておけば札束を持ち出すより遥かにラクです。

   しかし、そこに目を付けた中国当局は主に「仮想通貨と人民元の取引を規制」。国内の資産流出に歯止めをかけはじめました。その後、ICO (イニシャル・コイン・オファリング=企業がプロジェクトを遂行するために仮想通貨を使用して行う資金調達のこと)やマネーロンダリング規制に乗り出した後は仮想通貨取引の禁止や関連アプリの利用なども禁止しています。

   法定通貨と違って、法整備や本人確認などが追い付いていなかった仮想通貨は、電子マネーなどと違い法定通貨と両替できる特性を持っています。そのため、資産の移動手段としてもってこいの決済手段であったといえるでしょう。
新興国の政府が躍起になる理由はこれです。

「国境を超える」新たな投資対象として注目

   また、日本や米国でも新たな投資先として、仮想通貨の人気が出ました。ビットコインを保有しておけば、投資金額の100万円があっという間に1000万円にまで増えるなどと、その価格上昇のダイナミックさが報じられたことで注目を浴びたのです。

   仮想通貨は、新興国の人でも投資がしやすい環境が整っていることから、世界中から資本が集まりやすい環境であることは間違いないのです。たとえば、東証の株式をアフリカの人が購入することは困難ですし、同様に日本人が南米の証券会社の株式を購入することは困難です。

   しかし、仮想通貨であればスマホ1台あれば、国境を超えて同一の商品に投資することが安易なのです。
各国、それぞれ事情は違えども、こういったタイミングが重なりビットコインをはじめ、仮想通貨が上昇に至ったというワケです。

   2018年4月時点で、仮想通貨市場は一時の盛り上がりと比べると、低迷しているようにみえます。ただ、ビットコインの価格はいまだ2017年11月の水準にあります。インターネットに次ぐ発明と言われているブロックチェーン。仮想通貨の価格が、このまま終わりを迎える可能性は到底考えられません。

   今後はさまざまなブロックチェーン技術が実用化されると思われますし、新規参入企業も相次いでいます。2017年に、ようやく一般の人にも注目されはじめた仮想通貨。今後はより大きなムーブメントを巻き起こすのではないでしょうか。(ひろぴー)