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SupershipHDが事業戦略発表会 攻めの「ハイブリッドスタートアップ」、その新たな1歩

   デジタルマーケティング事業を主軸にさまざまな事業を展開している「Supership(スーパーシップ)ホールディングス(HD)」は2018年10月11日、事業戦略発表会を開き、社長で最高経営責任者(CEO)の森岡康一氏が新たなプロダクトなどについて意気込みを語った。

   同社が報道関係者を一堂に集め、こうした発表会を開催するのは初めてで、森岡社長はや緊張した面持ちで登壇。「こういう舞台は初めてなので、上手にいくかわかりませんが」と、これまで歩みから語り始めた。

  • 「大企業のもつリソースとスタートアップ企業のスピード感を活かした」(写真は、森岡康一社長)
    「大企業のもつリソースとスタートアップ企業のスピード感を活かした」(写真は、森岡康一社長)
  • 「大企業のもつリソースとスタートアップ企業のスピード感を活かした」(写真は、森岡康一社長)

「ハイブリッドスタートアップ」による「共創」

   「スーパーシップ」の始まりは2013年。森岡社長がKDDIの革新担当部長として、KDDIのインターネット領域の推進を目的として立ち上げたプロジェクトがそれ。日本のインターネットを大きなひとつの共同体として、新たな第3機軸とする「Syn.構想」を掲げ、はてなブックマークやNAVITIMEなど、さまざまなプラットホームを有する会社と提携をした。

   プロジェクトを進めていく中で、提携各社の足並みを揃えることは難しかったが、その一方、各社のデータ蓄積と顧客の循環によって利益が上がることに気づく。そこで、KDDIを資本主にスタートアップ3社とともに2015年「スーパーシップ ホールディングス」を発足した。

   大企業の持つリソースと、スタートアップ企業のスピード感、両者のメリットを活かした「ハイブリッドスタートアップ」を武器に、初年度は150億円の売上高を達成。年平均成長率は35%を誇る。

   森岡氏は、

「今後、日本の企業が海外でも活躍していくためには大企業とスタートアップが連携し、急成長と価値を『共創』することが大事。スーパーシップがそのモデルケースになればと思う」

と語る。

3つのグループ戦略方針で、14兆円市場を目指す

   経営戦略本部長 執行役員CSOの八重樫健氏が語ったのは、同社の事業戦略と、新規M&A、新規サービスの説明。メディア、広告主それぞれに向けた「デジタルマーケティング事業」を主軸としている同社だが、データ活用事業は現在も成長過程にあり、スマホ向け広告市場でのシェアは1位だ(3rdpartyベンダーを利用し、広告マネタイズしているアプリが対象。App Anine 日本での8月時点実績)。

   また、この事業発表会と同時発表された新サービス「Fortuna(フォーチュナ)」は、関係各社や各メディアで有するプライベートDMP(DMP=別々に管理されているデータをまとめて分析し、顧客とのコミュニケーションを最適化するプラットフォーム)と、パブリックDMPの両面を活用することで国内最大級のデータをユーザーに提供できることを強みとする「ハイブリッド型DMP」をいう。

   さらにデータをもとに顧客像を可視化して、施策を実施。先行して、たとえば資生堂のブランドコミュニケーション活動に、フォーチュナが導入されている。

新サービス「Fortuna」は、「ハイブリッド型DMP」だ!(写真は、八重樫健氏)
新サービス「Fortuna」は、「ハイブリッド型DMP」だ!(写真は、八重樫健氏)

   八重樫氏は今後の戦略方針として、「データプラットフォームの構築」と、「アドプラットフォーム展開」を挙げた。前者は「DATUM STUDIO(データム スタジオ)株式会社」をM&A(企業の合併・買収)して、データ活用による利益を求める企業に対するリーチを狙う。後者は、今後日本でも広まるであろう5G通信に対して、同社の技術を横に展開して海外企業とのパートナーシップを組みつつ、グローバルな展開に広げていくことを視野に入れている。

   八重樫氏は、

「所有している膨大なデータに対して、それを活用する動きが海外と比べて開きがある」

と話し、データ活用こそ現在の日本企業に必要であると締めくくった。

   スーパーシップHDでは、「デジタルマーケティング事業の強化」と「データプラットフォーム構築」、「アドプラットフォーム展開」の3つのグループ戦略方針で、14兆円市場を目指すとしている。

世界を意識して「スタートアップ」する

   発表会では、事業構想大学院大学の学長で教授の田中理沙氏と、内閣府製作統括(科学技術・イノベーション担当)官付企画官の石井芳明氏を招き、森岡社長とパネルディスカッションも行われた。

大企業とスタートアップ企業が手を取り合って世界で活躍する未来(写真は、パネルディスカッションの模様)
大企業とスタートアップ企業が手を取り合って世界で活躍する未来(写真は、パネルディスカッションの模様)

   「日本の未来を拓くスタートアップエコシステムとは?」をテーマに、それぞれの考えが飛ぶ。時価総額10憶円を超える企業の半数がアメリカ、約2割が中国という現状に着目し、「世界へ出て行って成長するスタートアップをつくることは、政府の命題でもある」と石井氏。森岡氏は、「スタートアップの時点で、海外マーケットを意識した目線の高さを持つことが必要だ」と語った。

   両者に共通したのは、大企業とスタートアップ企業が手を取り合い世界で活躍することで、日本が豊かになる。そんな将来像だった。