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「令和」元年度、企業の業績厳しく アベノミクスの評価、2年連続で下がる

   令和元年、企業の業績はどうなる――。2019年度の企業業績が、前年よりやや厳しい見通しとなることが、帝国データバンクの調査でわかった。企業の「アベノミクス」に対する評価も、2年連続(19年3月時点)で下降した。4月11日の発表。

   調査によると、2019年度(2019年4月~20年3月期決算)の業績見通し(売上高および経常利益)が、「増収増益」(見込みを含む)になると回答した企業は、4社に1社の24.8%で、前回の2018年度見通しから4.5ポイント減った。逆に、「減収減益」(同)は5.1ポイント増えている。

   「増収増益」の減少幅より、「減収減益」の増加幅が大きいうえに、前年より「増収増益」を見込む企業が減っていることから、2019年度の業績はやや厳しい見方となった。

アベノミクスの評価は61.8点

   2019年度の業績見通しを押し上げる材料は、「個人消費の回復」が27.0%で最多。8年連続でトップだが、前回調査より6.0ポイント減少。次いで「消費税引き上げによる駆け込み需要」「公共事業の増加」「東京五輪需要」「人手不足の緩和」が続いた。

   反対に、下押しする材料のトップは、「人手不足の深刻化」で39.0%。「中国経済の悪化」「個人消費の一段の低迷」などが続いた。なかでも、前回より5ポイント以上増加した材料は、中国や欧州、米国など、海外の経済悪化に関連していた。

   労働力の確保とあわせて、海外経済の減速や、消費税引き上げ後の景気低迷を危惧する様子がうかがえた。

   また、安倍政権による経済政策「アベノミクス」を100点満点で評価した場合の平均点は、18年3月調査時から0.6ポイント低い61.8点となった。

   6年余りにわたる政策に対して、企業は60点以上の評価をつけているものの、2年連続で点数を下げている。企業からは、

「バブル崩壊後、実態の有無にかかわらず、景気の高揚感を感じさせた」(ビルメンテナンス、広島県、100点)
「アベノミクスで設備投資し、増収増益につなげた」(鍛工品製造、富山県、95点)

といった声があがった。

   また、高く評価しつつも、

「企業は利益を上げているが、消費者の購入意欲は低いまま」(土地売買、広島県、75点)

というように、個人消費の回復まで実感を得ていない企業もあった。一方、

「中小企業にとっては不景気。求人難なうえに、一人あたりの仕事量が増えている」(ゴム製品卸売、東京都、25点)

という声や、

「恩恵は大企業のみ。中小企業は雇用悪化、販売価格の抑制、仕入れ単価の上昇に直面しており、受注量は増えるが、利益は減少している」(一般食堂、群馬県、10点)

など、中小企業や地方において、アベノミクス効果が実感できないという指摘もみられた。

   国内景気は、全国的に低調な状態が続いている。アベノミクスに対する評価は、企業規模や地域による差が大きく、個人消費や、地方経済全域にまで波及していない状況がうかがえた。帝国データバンクは、政府が引き続き人手不足対策や、海外経済のリスクに対応した政策を打ち出す必要性があるとみている。

   なお、2018年度の実績見込みは「増収増益」が29.9%。「減収減益」が22.5%となり、前回の17年度より悪化した。景気の低迷が続いているもよう。

   調査は2019年3月15日~31日、全国2万3181社を対象に実施。9712社の有効回答を得た。