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安倍首相「実態、わかってます」? 廃プラ、2050年に「ゼロ目標」の前途多難(鷲尾香一)

   2019年6月28、29日に大阪で開催された日本では初めてのG20(20か国・地域)首脳会議。安倍晋三首相の意気込みは空回りし、特筆すべき成果もあげられなかったものの、唯一の成果らしきものと言えば、国際的に問題となっている海洋のプラスチックごみ(廃プラ)を「2050年までにゼロにする」目標を導入することで一致した点だろう。

   だが、議長国だった日本は、果たしてこの目標を達成することができるのだろうか――。

  • 安倍首相、外ヅラよすぎじゃない?(2017年9月撮影)
    安倍首相、外ヅラよすぎじゃない?(2017年9月撮影)
  • 安倍首相、外ヅラよすぎじゃない?(2017年9月撮影)

レジ袋の有料化、小売業界の足並みそろわず

   廃プラは、毎年少なくとも900万トン近くが海に流出し、海洋生物や地球環境にとって深刻な影響を与えているとみられる。

   安倍首相は、

「日本の知見を生かして、途上国の適切な廃棄物の管理などに貢献していく」

と高らかに宣言した。

   廃プラの主要ごみであるレジ袋は、廃棄物資源循環学会の2017~18年の調査結果によると、一人当たりの使用枚数は年間約150枚となっている。レジ袋については、世界60か国以上で規制が導入されており、日本でも、これまで何度も規制が検討されてきているが、未だに事業者の自主的な取り組みに委ねられているのが実態だ。

   2000年に制定された循環型社会形成推進基本法では、リデュース、リユース、リサイクルの「3R」で循環型社会を目指した取り組みを進めることが打ち出された。そして、2006年の「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律」(容器包装リサイクル法)の見直しでは、レジ袋に対する規制が取り上げられた。

   その内容は、レジ袋などの容器包装を多く用いる小売業者は、国が定める判断の基準により、容器包装の使用合理化のための目標を設定したうえで具体的に取り組み、容器包装を年間50トン以上用いる小売業者(容器包装多量利用事業者)には毎年、リデュース対策の取り組み状況や削減効果などを国に対して報告することを義務付け、取り組みが不十分な事業者に対しては改善を促すことになった。

   また、この時にはレジ袋の有料化に対する検討も行われたが、小売業界の足並みが揃わなかったことなどから、有料化は見送られた経緯がある。

例外措置を設けている国も多いのに......

   一概にレジ袋に対する規制と言っても、有料化のほかにもさまざまな方法が考えられる。たとえば、マイバッグの配布、レジ袋辞退者へのポイント加算などだ。環境省の「2016年度 レジ袋に係る調査」によると、すべての都道府県で地域連携などによりレジ袋の削減が実施されているが、そのうち有料化を実施している自治体は、じつは約7割もある。

   環境省の中央環境審議会の「自治体と小売事業者のレジ袋有料化の協定の締結状況」によると、スーパーマーケットで約69%、ドラッグストアで約59%が協定を締結している一方で、百貨店は約15%、コンビニエンスストアは約3%にとどまっている。

   また、各自治体や協会などが行っている調査結果では、レジ袋を使わなくなるのは有料化で、おおむね90%程度、レジ袋代のキャッシュバックで50%程度、ポイントの付与で40%程度、マイバック利用は30%t程度となっている。

   こうした背景から、2019年3月 26 日に出された環境省中央環境審議会の答申「プラスチックの資源循環を総合的に推進するための戦略」には、「レジ袋の有料化義務化(無料配布禁止等)」が盛り込まれた。

   しかし、レジ袋の有料化には少なくない課題も残されている。第一に、レジ袋の製造業者にとっては確実に経営悪化につながり、事業の継続すら危ぶまれることだ。

   またレジ袋以外でも、たとえば紙製や布製の袋の強度を高めるためにプラスチックを使用していたり、袋の外側をプラスチックの袋で包装していたりするものなどを、どのような扱いにするのか。

   あるいは、レジ袋を有料化することで、これまでレジ袋を無料で配布していた小売業者などではレジ袋のコスト分が利益となるが、この利益をたとえばレジ袋以外の海洋廃プラ除去の資金に転用するなど、どのように扱っていくのかという点も見逃せない。

   現場は問題山積だが、海外ではレジ袋を規制している各国でも、例外措置を設けている国は多い。「モノには順序」ということもある。安倍首相は、いとも簡単に海洋廃プラを「2050年までにゼロにする」と宣言したが、当事者にとっては「そんなに簡単にいうな」と、恨めしげだ。(鷲尾香一)