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「パワハラ」は周囲も不快にする それが「生産性を下げている」認識あります?(篠原あかね)

「お昼休みに買って着替えましたが、いかがでしょうか?」

   これは今からはるか昔、私がまだ自他ともに「若い」と思っていた頃にアルバイト先の上司に対して放った言葉です。

   若い読者の方はご存知ないと思いますが、昔は「お局(つぼね)様」という勤続経験の長い女性を指す言葉がありました。

  • 「お局様」のパワハラ、会社は見て見ぬふりしていると大変なことに……(写真はイメージ)
    「お局様」のパワハラ、会社は見て見ぬふりしていると大変なことに……(写真はイメージ)
  • 「お局様」のパワハラ、会社は見て見ぬふりしていると大変なことに……(写真はイメージ)

部下はストレス解消のはけ口か!

   そのお局様が、後輩女性社員に睨みをきかせて、何かと口うるさく指導をするのは、よくあること。なので、職場で平穏無事に過ごすためには、お局様の機嫌を損ねないようにすることはとても大切なことでした。

   私が働いた職場のお局様は、とても服装にうるさい人でした。女性正社員は制服、アルバイト社員は私服での勤務でしたので、どのアルバイトも職場にふさわしい服装を心がけていました。今で言う「オフィスカジュアル」です。

   当時、アルバイトは10名近くいましたが、お局様のターゲットになるのは5名程度でした。この5名が毎日、交代で服装について「指導」を受けます。他の社員の面前で、時には女子トイレでマンツーマンです。

   「指導」が始まると、女性はもちろん男性も口数が減り、一気に職場が凍り付きます。女子トイレで遭遇した時には、トイレに入ることも憚られ、他のフロアのトイレへ行くという有様です。

   彼女の「指導」を直立不動で延々と聞き、自席に戻る時には涙目が当り前でした。

「安全配慮義務」って、ご存知ですよね?

   では、指導を受けるほどの服装なのかといえば、まったく問題なく、オフィスカジュアルの範疇でした。そう、単なるお局様のストレス解消の捌け口にされていたのです。今のパワハラですね。

   私もそのターゲットの一人でしたが、私はずっと心の中で疑問に思っていました。「この人、大丈夫? この時間、業務してないよね。会社は損しているよね?」と。そしてある日、私は昼休みに近所のショップで新しいスカートを購入。着替えてから、冒頭の「着替えましたが、いかがでしょうか」と言い放ったのです。

   まさか着替えてくるとは思ってもいなかったのでしょう。お局様は「わざわざ買いに行かなくても」と、ひと言つぶやきました。その次の「指導」の時も同じようにしました。ずいぶんと負けん気が強い女だと思ったのでしょう。それ以降、私は一切服装について言われなくなりました。まぁ、そんな職場に長居は無用。契約満了と同時にさっさと辞めましたけど。

   企業には、そこで働くすべての人が安全に働けるよう環境を整える「安全配慮義務」があります。また、先ごろグーグルが発表したことで話題になっている「心理的安全性」という概念があります。

   もし、お局様のパワハラを直接受ける社員のみならず、それを見ている周囲の社員が不快感や恐怖を覚えるのであれば、それは安全配慮義務に違反するだけでなく、この心理的安全性も大きく損なわれます。ひいては、チーム全体の生産性が下がります。(篠原あかね)