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経験者だからわかる、言える 知られたくない男性の悩みに寄り添うウィッグ開発秘話!

   カッコよさと髪のボリュームが持続して、驚くほど簡単に髪形が決まる。ハリとコシのある、太さの違う専用の毛髪を採用することで、少ない毛量でもベタっとしないで、ふんわりと仕上がり、朝決めたヘアスタイルが1日中キープできる。そんな、まるで自分の毛髪のような男性用ウィッグが開発された。

「年齢相応の自然な髪の量でヘアスタイルを長時間キープしたい」
「毎日使うものだから、着脱がしやすく快適でありたい」
「生え際や分け目、どこから見ても自然でありたい」

   ウィッグへのこうした思いは男性、女性の別はない。

   じつは、アートネイチャーで男性用ウィッグの開発に取り組んできた担当者は、自身も毛髪に悩みを抱えていた。商品開発室の矢内大輔課長が、その開発秘話を語る。

  • 「自身も髪の悩みを抱えていた」という商品開発室の矢内大輔課長
    「自身も髪の悩みを抱えていた」という商品開発室の矢内大輔課長
  • 「自身も髪の悩みを抱えていた」という商品開発室の矢内大輔課長

人事部時代の採用活動がウィッグ着用のきっかけ

―― 男性用ウィッグの開発にかかわる前から、ご自身が頭髪のお悩みを抱えていたと聞いています。具体的に、教えてください。

矢内大輔氏「頭髪が薄くなってしまうと、就職や結婚に、大きく影響するのではないかと、高校生ぐらいから将来への不安を強く感じていました。神社にお参りしても、『将来若ハゲになりませんように。』と本気でお願いしていましたから(笑)。ですから、激しいスポーツや帽子を被るバイト、友達と温泉に入るといった行為は、ヘアスタイルが崩れるのがイヤで、ずうっと敬遠してきました」

―― 頭髪の悩みは、なかなか他人に話すような機会がないと思います。どのように解決してこられたのでしょうか。

矢内大輔氏「解決しようと努力したことはありません。ただ、弊社に入社すると、社内では自然と髪の話になり、じつは自分の体験が、他の人にはない強みになるのではと感じました。ですから、自分はこんな悩みがある、こんな商品が欲しい、と積極的に意見を言いました」

―― 「ウィッグ」というと、女性用を思いつきます。男性用があることはご存じだったのでしょうか。また、ご自身でウィッグをつけようと思われたきっかけは、なにかあったのですか。

矢内大輔氏「私は『ウィッグ=男性用』と思っていました。この業界には昔から興味があったので、情報は自分から収集していましたし、テレビCMもたくさん流れていて、よく知っていました。
私が初めてウィッグを使用したのは29歳ごろだったと思います。いよいよ生え際が薄くなってきて、ヘアスタイルではカバーできなくなってきました。当時、人事部で新卒の社員と中途採用を行っていたのですが、応募者から見た私のイメージは、そのままイコール会社のイメージになりますので、見た目にはとても気に遣っており、それがウィッグを着けようと思った一番の理由です」

「ウィッグを自分で加工して使っている」とウワサに......

―― 「ウィッグ」の研究・開発に携わろうとお考えになった、直接のきっかけはどのようなことだったのでしょうか。

矢内大輔氏「当時の開発部長からスカウトされました。人事部で、『ウィッグを自分で加工して使っている者がいる』とウワサになり、それが開発部長の耳に入ったらしいのです。それ以降、外ですれ違う度に『開発やろうよ』と声をかけられていました。最後は、役員からも説得され、同意しました。半面、私が入社した一番の理由は、『手先の器用さを活かした仕事をしたい』ということだったので、商品開発部は興味のある部署でしたし、うれしくもありました」
太さの違う髪の毛を取り混ぜる(頭皮のイメージ)
太さの違う髪の毛を取り混ぜる(頭皮のイメージ)

―― 企画開発者の立場から、アートネイチャーの「ウィッグ」のよさと、開発にご苦労されたところを教えてください。

矢内大輔氏「とにかく自然であること。また、どの角度、たとえばお客様がウィッグを外し、裏面から見た時の美しさにまでこだわっています。また、縫製1本でも、その本数、位置を計算し、耐久性と自然さの両立を図るよう努力しています。『神は細部に宿る』という言葉がありますが、本当に細かい所までかかわることで、商品からオーラが生まれ、お客様に品質のよさが伝わる、そう思って開発しています。
いろいろと大変なことがないわけではないのですが、苦労という意識はあまり持ったことがありません。それに、どんな新商品を出したらいいのかを、考えるのが大変だという話を時々耳にするのですが、自分は楽しいんですよね。やはり自分が好きなことを仕事にしていますからでしょうか。商品のことを考えるスイッチが入ると、ずうっと考えています(笑)」

課題は自然さ、快適さをどんな状態でも維持すること

顧客の声を聞いて開発に協力(荒木拓課長代理・左と松永博史次長)
顧客の声を聞いて開発に協力(荒木拓課長代理・左と松永博史次長)

―― 男性用ウィッグの開発には、営業企画部メンズ企画グループの松永博史さんと荒木拓さんが、顧客の声を集めて、後押しされたとお聞きしています。

松永博史氏「お客様に直接ヒアリングして、『前髪を上げたスタイルをやってみたい』『誰かが後ろに立つと気になる』という声をとても多くいただきました。そこで開発には、自信をもって前髪を上げるスタイルができる商品、後ろに誰かが立っても気にならない、360度自然に見える商品を開発してほしいと伝えました」
荒木拓氏「今までは、年配のお客様が希望する髪の量感を再現(髪の量を少なく)すると、ベース(下地)が見えやすくなってしまい、納品が非常に難しかったのですが、今回の『レクアソリッド』は理想の髪の量で、なおかつお客様ご自身でセットがしやすいという喜びの声をいただいています」

―― 今後、どのような商品が登場してくるのでしょうか。

矢内大輔氏「ウィッグの構造は、『ベース』『毛髪』『装着』の三つしかありません。ですので、ある程度成熟した商品環境の中で、突然大幅な進化が起きることは考えにくいです。
ただ、三つそれぞれの課題を一つずつ丁寧に改善し続けることで、まだまだ進化の幅が残っていると思います。特に自然さ、快適さをいかなるシチュエーションでも維持することが今後の課題です。
逆にウィッグの手前、我々が『増毛』と呼んでいる分野では、どのようなお客様ニーズにもお応えするという点で、多くの課題が残っており、今後ますます追求して行く必要があります。この分野での新商品の開発が、弊社の成長を促すうえで、とても重要と認識しています」