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「アフターコロナ」を見通していたスゴイ一冊!? 今後、仕事のやり方はこう変わる

   20世紀後半から21世紀初頭にかけて「優秀な人材」として高く評価された人材は、今後「オールドタイプ」として急速に価値を失っていく――。

   2019年7月に発売された著述家、山口周さんの「ニュータイプの時代」は、こう「予告」してビジネスパーソンらの注目を集めた。その年下半期の「ベストビジネス書大賞」にも選ばれている。

   そして今、世界は新型コロナウイルスの感染拡大に見舞われ、次のフェーズは、新しい生活様式が求められる「ニューノーマルの時代」といわれる。この機会に、本書が「アフターコロナの時代の働き方を見通していた」と、再び注目を集めているという。

「ニュータイプの時代」(山口周著)ダイヤモンド社
  • 緊急事態宣言で多くの店が休業。人出が途絶えた地下商店街
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「問題を発見し、意味を創出する能力」

   山口さんは慶應義塾大学文学部哲学科から同大学院文学研究科修了、電通やボストンコンサルティンググループなどで戦略策定、文化政策、組織開発などに従事した経験を持つ研究者。「世界のエリートはなぜ『美意識』を鍛えるのか?」で知られ、「アート」「美意識」などをキーワードにビジネス界のトレンドを生み出してきた。

   本書でいう「オールドタイプ」は、「『モノ』が希少で『問題』が過剰だった」20世紀の時代に「問題を解決し、モノを作り出す能力」に優れていた人材のこと。だが、21世紀に時代が変わり、社会は豊かになってモノやサービスは行き渡るどころか過剰に供給されるようになり、不便や不満は解消、問題解決のニーズはなくなってきている。

   必要とされる人材要件は大きく変わり、いまは「問題を発見し、意味を創出する能力」が「価値創出の源泉」という。そのことに秀でているのが「ニュータイプ」だ。

   だが、「人間のマインドはとても保守的」であるから、多くの人は相変わらず、偏差値に代表されるような「正解を導き出す能力」を、優秀さを量る指標として重視。社会背景はすでに「ニュータイプ」の時代なのだが、表立っては求められてはいない。時代の変わり目には、時代の変化と認識のネジレが社会のさまざまな局面で「悲劇と混乱」を巻き起こす。コロナ禍の初期の様子はそれに当てはまるかもしれない。

「ニュータイプ」へのアップデートを

   「人間のマインドが保守的」であることを示すため、19世紀の米西部開拓時代を舞台にした伝説上の人物、ジョン・ヘンリーの物語が引用される。

「誰よりも力強くハンマーを振るうことができた鉄道作業員のジョン・ヘンリーは、当時の最先端技術であった蒸気ハンマーに対して『鍛え上げられた人間がそんなものに敗れるはずがない』と戦いを挑み辛くも勝利しますが、心臓麻痺を起こして死んでしまいます」

このことは「優秀な人材」を示す指標は「筋力」などであった産業革命以前の時代から、もはやそれが通用しなくなりつつあった端境期で起きた混乱と悲劇を、象徴的に示している。

   本書では「これから求められる思考・行動様式とは?」と題して、「ニュータイプのポイントを、「オールドタイプ」と対照させて列記した。

   たとえば、

・オールドタイプが「予測する」のに対して、ニュータイプは「構想する」
・オールドタイプが「奪い、独占する」のに対して、ニュータイプは「与え、共有する」
・オールドタイプが「経験に頼る」のに対しては、ニュータイプは「学習能力に頼る」

などだ。

   依然、政官界、ビジネス界では「オールドタイプ」の人たちがリーダーを務めている。彼らの予測には、もちろんコロナの影響はなかった。

   だが、ニュータイプの人材であれば、予想をハズレることを前提として、柔軟性を持って、いくつかのパターンを考えておくのだろう。

   また、オールドタイプにはひたすら「量的な向上」を目指すという行動様式がある。現代のようにモノが過剰にあふれている中で、オールドタイプの人たちが舵取りを続けていくことは、ますますモノに埋もれていくしかないことを意味する。

   このことからも、新時代にはオールドタイプからニュータイプへと「人材がアップデートされなければならない」というのが著者の主張だ。

   コロナ禍で不確実さがさらに増す今後に向け、キャリア戦略を考えている人にとっては読んでおきたい一冊。

「ニュータイプの時代」
山口周著
ダイヤモンド社
税別1600円