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業界を破壊! 第2の「GAFA」はどこにいる? 「候補」20社を紹介

   「ITプラットフォーマー」のビジネスモデルに注目が集まり、その代表的存在である4社を総称した「GAFA」という造語が現れたのは10年ほど前。急速に進んだデジタル化のなかで、突如飛び出してきた感のある「GAFA」だが、それぞれ着々とプラットフォームを築いていた。

   「GAFA」に目を奪われている間に、世界の産業界では、次代のリーダー候補が胎動しているという。その動きをいち早く紹介したのが、本書「業界破壊企業 第二のGAFAを狙う革新者たち」だ。

「業界破壊企業 第二のGAFAを狙う革新者たち」(斉藤徹著)光文社
  • 東京の街にも育て!「ディスラプター」
    東京の街にも育て!「ディスラプター」
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破壊者か、革新者か

   米国のテレビネットワーク局の一つ、NBCの経済系ニュースの専門局であるCNBCは毎年、「ディスラプター50」という企業ランキングを発表している。ディスラプター(disruptor)の動詞「ディスラプト(disrupt)」の直訳は「破壊する」で、ディスラプターはその流れでは「破壊者」。だが、disruptの「破壊」はdestroy(デストロイ)とは違い、常識や標準、前例を覆すことを意味するもの。だから、ディスラプターは「破壊者」ではなく、「革新者」に近い。

   本書は、その「ディスラプター50」の最近のもののなかから、ユニークで革新的なビジネスを行っている20社ほどを選び、ビジネスの着眼点や創業者の考え、成長ストーリーを紹介したもの。それでタイトルにも「破壊」と「革新」が並列されている。

   著者の斉藤徹さんは、コンピューター関連の大手企業に勤務した後に起業して成功した経験を持ち、現在は「ソーシャルメディア活用とイノベーション創出」を核としたコンサルティング会社の経営をする一方、ビジネス・ブレークスルー大学で「イノベーション」をテーマに講義を行っている。

   斉藤さんの経験は「成功」ばかりではなく、「成功の裏側にあった現実」は厳しいものだったいう。斉藤さんいわく「蟻地獄のような借金、脅しまがいのクレーム、銀行の貸し剥がし、資金ショートの綱渡り...」など。40歳のときには、自分で創業した会社を追われ、個人で3億円の借金を背負ったことも。

   こうした「ジェットコースター」のような経験をもとにして、いま上り調子の企業をとらえて「ビジネスの特徴や基本パターン」「イノベーションの作り方」などについても詳しく解説。基本的なビジネスモデルやそのパターンを知ると「なぜそのビジネスがうまくいくのか」とか「どんな考えや理論をもとにビジネスを展開しているのか」という仕組みが見えてくるという。

フリーミアモデル

   本書で紹介されている企業は20社ほど。日本の企業などが関係している企業もいくつかあるが、ほとんどはまだ名前も知られていない。なかには、微生物を使った農業効率化、植物を使った人工肉製造、半導体を使った冷蔵庫など、不可能とも思えるようなことに挑戦している企業もある。

   日本で過ごすわれわれにも分かりやすいのは「オンライン教育」だ。米国をはじめとする各国では2012年ごろからオンライン教育業界は猛烈な勢いで変わってきているという。どのように変わってきているのか。

   激変をもたらしたのは「MOOC(ムーク)」。「Massive Open Online Course」の略で、直訳は「大規模に公開されたオンライン講義」。受講料は基本的に無料で、インターネット環境があればどこでも誰でも世界の名門大学の講義を受けられるというサービスの総称だ。2011年から始まり、2013年からは東京大学も参加している。このMOOCを配信しているプラットフォームが「Udacity(ユダシティ)」と「Coursera(コーセラ)」、それに、非営利の「edx(エデックス)」。それぞれ専門領域が異なり、うまく住み分けながら教育コンテンツを配信している。

   コンテンツ配信だけでは社会に影響をもたらすプラットフォーマーにはなれにない。MOOCがビジネスとして可能性を秘めているのは、フリーミアモデルだから。フリーミアムは、基本的なサービスや製品は無料で提供し、さらに高度な機能や特別な機能については料金を課金する仕組みのビジネスモデル。MOOCでは、講義の受講は無料だが、修了証の発行や成績・評価を受けるなど付加サービスを希望すると有料になるという仕組みなのだ。

   「大学から小学校までの学びの本流においては、決まったキャンパスに通い、そこで講義を受けるというスタイルが当たり前です。しかし『MOOC』が作り出したオンライン教育のトレンドは、2020年におけるコロナウイルスの世界的なパンデミックにより、教育の本流を劇的に変えていく可能性を秘めているでしょう」と斉藤さんは述べている。

「業界破壊企業 第二のGAFAを狙う革新者たち」
斉藤徹著
光文社
税別820円