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80歳以上の相談件数が過去最高に! 高齢者の消費トラブル、訪問販売や電話勧誘で多く

   訪問販売や通信販売などをめぐる消費者トラブルで、2019年度に全国の消費者センターに寄せられた80歳以上の高齢者からの相談件数が、過去最高の7万8303件にのぼったことが国民生活センターの調べでわかった。敬老の日を前にした2020年9月17日に発表した。

   相談件数は、前年から2920件(3.9%)増えた。80歳以上になると、訪問販売や電話の勧誘販売によるトラブルが多くなる傾向があるという。

  • 80歳代の消費者トラブルが増えている
    80歳代の消費者トラブルが増えている
  • 80歳代の消費者トラブルが増えている

健康食品や化粧品の定期購入でトラブル増える

   高齢者は、犯罪者に狙われている。国民生活センターによると、全国の消費生活センターに寄せられる相談のうち、契約の当事者が60歳以上の人の相談件数は、2018年度がピークで、43万4826件と過去10年で最も多く、消費者トラブルの相談件数全体の49.4%を占めていた。それが19年度には、37万787件に減少。全体の45.2%だった。

   減少の原因を、国民生活センターは「公的機関などを名乗り、郵送や電話で利用した覚えのない架空請求に関する相談が減少したことが一因と考えられます」としている。

   19年度の60歳代の相談件数を年代別にみると、60歳代は14万763件(前年度比25.8%減)、70歳代が15万1721件(10.9%減)、80歳以上が7万8303件(3.9%増)だった。60歳、70歳代の相談件数が減少しているのに対して、80歳以上の相談件数は増加しており、過去10年で最も多かった=下表参照

60歳代、70歳代は2019年から減ったが、80歳代は増えている。
60歳代、70歳代は2019年から減ったが、80歳代は増えている。

   60歳以上の高齢者からの相談内容をみると、健康食品などの定期購入に関する相談が2018年度に比べて約2倍に増加。また、アダルトサイトなどを含む「デジタルコンテンツ」、「インターネット接続回線」などの情報通信関連のトラブルへの相談が、60歳以上のすべての年代で多く寄せられている。

   なかでも、60歳代、70歳代では情報通信関連の相談や通信販売に関する相談が多く、一方で、80歳以上になると「工事・建築」「新聞」などの相談が多く寄せられるほか、訪問販売や電話勧誘販売によるトラブルが多くなる傾向がある。

60~70歳代と80歳代はトラブルの内容が違う

   国民生活センターが60歳以上の高齢者から寄せられた相談について分析したところ、3つの傾向がわかったほか、60~70歳代と80歳代でトラブルの内容に違いがあることもわかった。

(1)架空請求の相談は減少したが、健康食品などの定期購入に関する相談が増加

   架空請求への相談【事例1】は2018 年度から19年度は大幅に減少したが、80歳以上の年代に限ってみると、年々相談件数が増加している。
【事例1】「大手通販サイトと弁護士をかたる相手からの架空請求で次々にお金を払ってしまった」(2020年3月受付、60歳代男性)

   一方、定期購入が条件であると認識しないままインターネット販売サイトなどで健康食品や化粧品などを購入してしまったといった定期購入【事例2】に関する相談が19年度に急増した。
【事例2】「お試しのつもりで購入したら定期購入だったが、表示が小さくて読めない」(2020年3月受付、70歳代男性)

(2)情報通信関連の相談が非常に多い

   60歳代、70歳代では、特にインターネットを利用した「デジタルコンテンツ」や「インターネット接続回線」などの情報通信に関連する相談【事例1、3、5】が多いほか、「ネット通販」【事例2】への相談も多い。
【事例3】「強引に光回線契約を勧められたが、インターネット環境がなく不要なので断りたい」(2020年3月受付、70歳代女性)
【事例5】「出会い系サイトに誘導され、求められるままお金を払ってしまった」(2020年1月受付、60歳代女性)

   また、インターネットや携帯電話などの情報通信機器の利用が幅広い世代で増えていることに伴い、80歳以上でもこれらに関する相談が増えている。高齢者にとって複雑でわかりにくい契約内容や、強引な勧誘方法などについてトラブルが起こっている。

   60歳代、70歳代にみられる主な相談事例には、
【事例6】「定年退職したことを理由に、賃貸アパートの契約者を変更するよう言われた」(2019年8月受付、60歳代女性)
といった内容の相談もあった。

(3)高齢になるにつれ、訪問販売や電話勧誘販売の相談の割合が高くなる

   70歳代、80歳以上と高齢になるにつれ、訪問販売や電話勧誘販売によるトラブル【事例3、4、7】が増えており、強引な勧誘などが目立つ。また、80歳以上になると判断能力が不十分と思われる人の契約時のトラブルも増えている。

   たとえば、リフォーム工事やふとんなどの訪問塩梅や通信販売によって契約させられ、生活に困っているといったトラブルが少なくない。
【事例4】「自宅を訪問した業者に勧められ、よくわからないまま電力会社を変更してしまった」(2019年6月受付、80歳代女性)
【事例7】「認知症の両親が、すでに実施していて不要なはずの屋根修理工事を契約していた」(2019年11月受付、80歳代男性)
【事例8】「母が、5年後から購読が始まるという内容の新聞の定期購読契約をしていた」(2019年12月受付、80歳代女性)

   高齢者になるにつれて家族などからの相談が増えており、本人以外からの相談では契約の詳細がわからないことが多く、そうした場合にはトラブルの解決が困難となることもあると指摘する。

   国民生活センターは、「消費者トラブルを防ぐには、周囲の方による見守りが大切です。不安に思った場合やトラブルになった場合は消費生活センターなどに相談してください」としている。