J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

「カーボンニュートラル」実現までピットイン! F1撤退表明のホンダ、5回目の復帰はいつ?

   本田技研工業(ホンダ)が2021年シーズンを最後に、フォーミュラワン世界選手権(F1)から撤退することを発表した。10月2日に緊急オンライン会見を開き、八郷隆弘社長が明らかにした。

   八郷社長によると、撤退の理由は二酸化炭素(CO2)の排出量と吸収量を同じレベルにする、「2050年 カーボンニュートラルの実現」を目指すため。実現のためには、燃料電池車(FCV)やバッテリー式電気自動車(BEV)など将来のパワーユニットやエネルギー領域の研究開発に経営資源を重点的に投入する必要があるとしている。

  • ホンダがF1から完全撤退を発表(写真はイメージ)
    ホンダがF1から完全撤退を発表(写真はイメージ)
  • ホンダがF1から完全撤退を発表(写真はイメージ)

EVに舵を切るホンダ、「Honda e」を発売

   ホンダは、F1人気のけん引役だ。独特のエンジンの爆音がファンを集めF1全体のパワートレインともいえる存在だった。とくに日本グランプリ(GP)では観客動員に欠かせぬ存在。2019年の鈴鹿サーキットの開催では、「ホンダ応援席」を特設した。

   創業者、本田宗一郎氏の決意で1964年に初参戦。ライバルのトヨタ自動車に先んじること、38年。エンジン開発とともに、日本人ドライバーを育て、起用するなど、F1の存在を日本に広く知らしめた功績は大きい。

   ホンダは、FCVやBEVなど将来のパワーユニットやエネルギー領域の研究・開発のため、2020年4月に「先進パワーユニット・エネルギー研究所」を設立。八郷社長は、「F1で培ったエネルギーマネジメント技術や燃料技術、そして 研究開発の人材も同様にパワーユニット・エネルギー領域に投入し、将来のカーボンニュートラル実現に集中し取り組んでいく」と説明した。

   ホンダのそういった戦略は、すでに動いている。その一つが、多様な働き方やアート、デザイン、安心安全をテーマにした新型電気自動車(EV)「Honda e」を利用した、ライフシーンに応じたプロジェクト「『With』Project Honda e」だ。ホンダはEV「Honda e」を、2020年10月30日に発売する。

   「Honda e」は、衝突軽減ブレーキや誤発進抑制機能、後方誤発進抑制機能など「Honda SENSING」による安全機能を搭載しているほか、クラウドAIによる音声認識と情報提供を行なう「Hondaパーソナルアシスタント」や、専用アプリのダウンロードによってスマートフォンをデジタルキーとして使うなどの機能を搭載した。

   世界はガソリン燃料の代わりに、電気や水素などによる動力がクルマの駆動システムの主流になる方向で進んでいる。またEV分野でホンダは、日産自動車やトヨタ自動車に後れをとっていたこともあり、巻き返しを図る。

有望なドライバーもいたのに......

F1のレポートを公開しているホンダのホームページ
F1のレポートを公開しているホンダのホームページ

   とはいえ、ホンダのF1撤退表明は急だった。10月2日にはモータースポーツ専門サイトのTopNews.JPで、F2選手権で活躍している20歳の角田裕毅選手を、ホンダが2021年にF1デビューさせる可能性を模索していると報じられていた。

   角田選手は、ホンダの支援を受け、ホンダがエンジンを供給しているレッドブルの育成ドライバーになっている。そのわずか数時間後に、事実上の白紙になったわけだ。

   ファンにとっても撤退は寝耳に水。ネットではホンダの発表に、

「こういう(角田裕毅)選手がいるのに、ホンダが撤退するタイミングは理解できない...」

との恨み節もみられる。

   ただ、ホンダはこれまでにも撤退と復活を繰り返してきた。

   初参戦後の第1期は1968年を最後に撤退。米国で深刻化した大気汚染を食い止めるための大気清浄法(マスキー法)を受け、排気ガス規制のクリアに専念することを理由に82年まで13年間活動を休止した。

   1983年から、活動を再開して第2期がスタート。93年に再び撤退し、このときの休止は99年まで続いた。2000年に三度の参戦を果たしたが、この第3期がリーマン・ショックによる景気悪化で継続が困難になったことは記憶に新しい。

「ホンダファンはしばし待て」

   「完全に撤退であります。将来のことは白紙であります」――。2008年12月5日、当時のホンダの福井威夫社長は記者会見で、そう言ってF1からの完全撤退を発表した。09年シーズンから、レースへの参加を取りやめたほか、ドライバーとの契約も解消、エンジンの供給も取りやめた。

   世界的な金融危機の波及で、年間数百億円ともいわれる、巨額の経費がかかるF1事業が経営に重くのしかかった。このときはF1のエンジニア約400人を、今後の商品開発に振り分けるとしていた。

   しかし、その後のハイブリッド型パワーユニットが導入された翌年の2015年に復帰して、現在の第4期を過ごしてきた。そうしたことから、ネット上にはこんなコメントも。

「実験場としてF1に参戦しているんだから、現状のレギュレーションでは得るものがもうないという判断なのかな。これでF1が完全電動車に限るとなったら、また参戦するであろう。 ホンダファンはしばし待て。電池交換のピットイン時間だ」
「Hondaは60年代、80年代に撤退、参戦している。今回撤退して、またいつか帰ってくる日を信じましょう。F1がそれまで続いていたら良いな」