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「NHK受信料徴収に郵便局員が個別訪問」武田総務相がトンデモ提言「悪名高い同士が組んでどうする!」と猛批判(1)

   NHKと総務省の「受信料値下げ」バトルが激しさを増しているかのように見えるが、どうもこちらは携帯電話料金の値下げバトルに比べると、総務省側に「本気度」が欠けるようだ。

   そんななか、武田良太総務相のトンデモ発言が飛び出した。

「NHK受信料徴収の個別訪問に郵便局員を使えばよい」

と言うのだ。郵便局員の個別訪問に関しては、かんぽ生命の不正事件が大問題になったばかり。ネット上では、

「NHKと郵政グループ、悪名高い2つの個別訪問を組ませてどうする?」

と呆れ返る声が殺到している。

  • 郵便局員がNHK受信料を集金する?(写真は、NHK渋谷放送局)
    郵便局員がNHK受信料を集金する?(写真は、NHK渋谷放送局)
  • 郵便局員がNHK受信料を集金する?(写真は、NHK渋谷放送局)

「郵便局ネットワークを活用し、受信料徴収の経費を削減」

武田亮太総務大臣(首相官邸公式サイトより)
武田亮太総務大臣(首相官邸公式サイトより)

   武田良太総務大臣の「問題発言」が飛び出したのは2020年12月19日午前、地元福岡県のテレビ局「テレビ西日本」(TNC)の報道番組に出演中のことだった。テレビ西日本(12月19日付オンライン版)「武田総務相 NHK受信料の徴収『日本郵便との連携を提言』TNCの番組で初めて明らかに」が、こう伝える。

「武田良太総務大臣が12月19日の報道番組『CUBE』に出演し、NHK受信料の徴収業務について、日本郵便との連携を提言していることを初めて明らかにした。 武田大臣はNHK受信料の徴収業務に、年間700億円以上のコストがかかっていることを改めて問題視したうえで、こう述べた」
「武田総務大臣『せっかくある(郵便局の)ネットワークというものを、有効利用することによって、(徴収業務の)経費削減につなげることができないか、NHKは。そして郵便局会社というのは民間企業になりましたから、それが利益に結びつかないか、さまざまなことを両者に考えて頂きたいと思っています。総務省というか、私のアイデアを(NHKと日本郵便に)こうしたことを利用し合っては如何なものか、ということを研究してもらっているというのが実情です』」

というから、NHKと日本郵便が具体的な協議に入っているようだ。

   そして、テレビ西日本の記事は、こう結んでいる。

「武田大臣はこのように述べ、NHK受信料の徴収業務の一部を、日本郵便が担えれば、高いコストを削減でき、受信料を負担している多くの国民のためにもなる、という認識を示した」

   2019年に約4万2000人以上の被害者を出した「かんぽ生命の不正販売事件」では、日本郵政グループは12月14日に4度目の処分を発表。本支社幹部を含む処分人数が2050人に達したと明らかにしたばかり。さらに約1300人の処分が決まっていない状況だ。

   しかも不正販売の手口の多くが顧客宅の訪問販売だった。そんな組織の人間たちにNHK受信料の訪問をさせて大丈夫なのか。

   武田総務相はこの2日前の12月17日、東京都内で講演し、NHKに対する受信料値下げの圧力を、さらに強める発言をしている。主要メディアによると、こう訴えたのだった。

「NHKは公共放送だということであぐらをかいているような姿勢では、国民の非難が燎原(りょうげん)の火のごとく広がって存亡の危機に陥る可能性もはらんでいる。NHKには1280億円、子会社には900億円あまりの剰余金がある。コロナ禍で国民生活が厳しいなか、現金がありながら一向に思い切った(受信料の)料金改定をしようとしない。時限でもいい、2年でも3年でも。コロナを乗り切るまででも」

と語り、一時的な受信料値下げでいいから検討するよう求めたのだった。

沖縄県民の半分が受信料を払わない理由は?

(図表1)NHK受信料の都道府県別推計世帯支払率(北海道から愛知県まで。NHK公式サイトより)
(図表1)NHK受信料の都道府県別推計世帯支払率(北海道から愛知県まで。NHK公式サイトより)

   ところで、受信料を払わない世帯はどのくらいいるのだろうか。受信料の不払いが減らないことに業を煮やしたNHKは、2012年から毎年「都道府県別支払率の推計」を公式サイトで公開している。 今年6月に公開した最新の2018年&2019年データによると、2019年度末の全国の推計世帯支払率は81.8%で、前年度末の数値(81.2%)より0.6ポイント増と横バイ状態だ=別表(1)(2)参照

   おおむね、地方へ行くほど支払率が高くなり、大都市になるほど支払率が低くなる傾向がある。一番支払率が高いのは秋田県で98.3%。以下、新潟県98.1%、山形県96.0%、島根県95.3%と続く。一方、支払率が低いのは大阪府68.2%、東京都69.8%、北海道73.7%、福岡県78.0%、兵庫県79.4%、京都府79.6%など。

(図表2)NHK受信料の都道府県別推計世帯支払率(三重県から沖縄県まで。NHK公式サイトより)
(図表2)NHK受信料の都道府県別推計世帯支払率(三重県から沖縄県まで。NHK公式サイトより)

   この中でダントツに支払率が悪いのが沖縄県だ。全国平均を30ポイントも下回る51.8%だ。ワースト2位の大阪府より16ポイント近く低い。これには理由がある。沖縄県は1972年まで米国の統治下だったため、そもそもNHKを受信できず、無料の民放テレビ局が先に進出する状態だった。沖縄県民にはカネを出してテレビを見るという「習慣」がなかなか根付かなかったわけだ。

   その一方で、NHKは受信料不払い世帯を訪問して受信料契約を結ぶ「訪問営業」の評判があまりに悪いうえ、人員の確保などで莫大なコストがかかるため、見直しを表明したばかりだ。共同通信(12月3日付)「NHK、訪問営業を抜本見直し 受信料契約『トラブルも増える』」が、こう伝える。

「前田晃伸NHK会長は12月3日の定例記者会見で、受信料契約を結ぶための営業活動に関し、従来の訪問に頼る方法を『抜本的に見直す』と述べた。前田氏は、営業活動へのクレームが多く寄せられていることを認め『営業が頑張りすぎるとトラブルも増える』『成功確率が非常に低い』と指摘。各地のケーブルテレビ業者に案内を一緒に配布してもらうなどの代案を検討しているという。NHKはこれまで、職員以外にも各地の法人や個人スタッフに外部委託し、受信契約を締結するための戸別訪問をしてきた」

(福田和郎)