J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

生活習慣病リスクを高める脂肪肝 コロナ禍で増加!「お酒を飲まないから大丈夫」は誤解?

   自覚症状のない「沈黙の臓器」肝臓の病気に脂肪肝がある。肝臓に脂肪がたまり、フォアグラ状態に。日本人の3人に1人が罹っているとされる。

   肝硬変や肝臓がんへと進行することが懸念されたり、糖尿病や高脂血症、心筋梗塞、脳梗塞などの生活習慣病のリスクを高めたりすることもわかってきた。そんな脂肪肝のリスクが「コロナ禍で高まっている」。栗原クリニック東京・日本橋の栗原毅院長は、そう指摘する。

  • コロナ禍で脂肪肝が増えている!?
    コロナ禍で脂肪肝が増えている!?
  • コロナ禍で脂肪肝が増えている!?

お酒を飲みすぎより果糖が危ない

   「脂肪肝」とは、中性脂肪が肝臓に蓄積する病気で、肝細胞に中性脂肪が20%以上溜まった状態をいう。「中性脂肪が溜まる」というと、揚げ物などの食べすぎと思われがちだが、じつはご飯や麺、パン、果物、おせんべいにアメ玉、ジュース類など、糖質の摂りすぎによるところが大きい。

「食事で摂った糖質は、ブドウ糖に分解されて小腸から吸収された後、肝臓で速やかに中性脂肪に変化しまうのです。特に、ヘルシーなイメージがある果物の摂り過ぎが危ない。果糖は吸収が早く、肝臓で中性脂肪に変わりやすい。脂肪肝へ一直線です」

   栗原クリニック東京・日本橋の栗原毅院長は、そう指摘する。

   また一般には、お酒の飲みすぎが肝臓に悪いと思われているが、

「アルコールが原因で脂肪肝になることは案外少ないんです。飲んでしまうと、無意識のうちに糖質を一緒に摂ってしまうのがいけません」

と言う。

   コロナ禍で、食生活が乱れたり、運動不足だったりする人が増えていることから、脂肪肝に罹るリスクは高まっている。勢い、年末年始の宴会シーズに入り、ついつい暴飲暴食に走りがち。

   テレワークなど自宅で過ごす機会が多いと、無意識に果物や菓子に手が伸びるといったことも起こる。いまや当たり前になったオンライン飲み会は、帰宅時間を気にすることなく、飲んだ後にはすぐに眠れるので、つい飲み過ぎてしまうことも多い。結果として体重が2~3キログラム、なかには10キログラム以上も増えた。そんな人もいる。

「体重が増えて、単なるコロナ太りと思っていたのに、健康診断で脂肪肝による肝機能異常や高血糖などを指摘され、受診される方が目立ちます。通院の患者さんも、去年より肝機能や血糖値が悪くなった方が目立っています」

と、栗原院長は話す。

脂肪肝からNASHへの進行を抑える

   そんな脂肪肝は、症状が軽く改善しやすいアルコール性の単純性脂肪肝(NAFL)と、肝臓の炎症を伴う非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の2種類がある。NASHは放置すると肝硬変、肝細胞がんへと進行することが知られている。

   その頭文字から「ナッシュ」と呼ばれるが、「ナッシュは必ず脂肪肝から発症します。約3000万人の脂肪肝の方の、10人に1人が約10年かけて、ナッシュに進行することになります」と、栗原院長は説明する。

   脂肪肝からナッシュへの進展を抑えるには、ストレス対策が必要だ。「ナッシュの段階に進むのには、活性酸素が影響します。そのため、ストレスや喫煙、紫外線などから発生する活性酸素対策が大切。しかし、最も重要なことはナッシュになる前段階の脂肪肝から早く脱却することです」と指摘する。

   つまり、日々の生活から改善していくことが大切なわけだ。なかでも食生活は重要で、栗原院長は、「NAFL(アルコール性脂肪肝)はもちろん、飲酒を控えめにすることで改善できます。一方、ナッシュを克服するには過食をやめ、運動不足を解消することです。元凶は糖質の摂りすぎ。甘いものですね」。

カカオポリフェノールが肝機能を改善してくれる
カカオポリフェノールが肝機能を改善してくれる

   アルコールの飲みすぎより、ジュースや果物、甘いお菓子の摂りすぎのほうが脂肪肝にはよくないとういうのは意外だが、栗原院長によると、じつはお菓子でもカカオ70%以上のカカオを含む「高カカオ」チョコレートは脂肪肝に効果的というから驚きだ。

「糖質の吸収を抑える食物繊維が豊富で、カカオポリフェノールが活性酸素を消去していることによって、肝機能の改善に役立っていると考えています。食事をする直前に1片食べておくと小腸での吸収が遅くなり脂肪肝の予防ばかりか、治療にもなりそうなのです。脂肪肝の治療は思いのほか難しい。そこで、カカオ70%以上の高カカオチョコレートを外来通院中でなかなか改善しない方々に食べていただきました。すると、何と驚くなかれ脂肪肝のみならず、ナッシュにも効果的だったのです」

と、栗原院長。「1回5グラム、1日3回の食事の前と、午前10時や午後3時のおやつも含め、1日5回(合計25グラム)を食べることをオススメします。カカオ自体にも同じ効果はみられるので、カカオが入ったココアなどもいいと思います」と言う。

   カカオポリフェノールには、精神を安定させるリラックス効果があり、ストレス対策にもいいとされる。

急なダイエットは脂肪肝にはNG!

脂肪肝には高カカオチョコレートや緑茶がいい
脂肪肝には高カカオチョコレートや緑茶がいい

   高カカオチョコレート以外にも、脂肪肝にいいのが「緑茶」。気軽に飲めるのがいい。栗原院長は、

「緑茶に含まれるポリフェノールの一種カテキンが脂肪肝やナッシュにもよさそう。糖質の小腸での吸収を遅くすることで、脂肪肝を予防。また、カテキンが体内、特に肝臓で発生する活性酸素を消去してくれることがわかってきました。抗酸化作用があるので、ナッシュへの伸展を抑えてくれることが期待されます」

と勧める。

   コロナ禍で、ふだんから気をつけておくことの一つに体重の管理がある。栗原院長によると、太ったからといって、短期間で急激に体重を落とすダイエットは、脂肪肝には「NG」だという。「1か月に500グラム、4か月で2キログラムくらいが理想的です。ご飯や麺、パンといった糖質を少し減らす。『糖質ちょいオフ』を心がけましょう」と言う。

   ゆっくり食べること。また、ご飯や麺を食べる前に、野菜を食べる「ベジファースト」も有効で、無理なく継続できることを心がけることで、脂肪肝から抜け出せる。じつは、「内臓脂肪や皮下脂肪と違って、肝臓についた脂肪はとれやすいのです」(栗原院長)というから、これも驚きだ。


プロフィール
栗原 毅(くりはら・たけし)
栗原クリニック東京・日本橋院長。
北里大学医学部卒。医学博士。東京女子医科大学教授や慶応義塾大学教授などを経て、2008年、栗原クリニック東京・日本橋を開院。多くの脂肪肝や糖尿病患者の治療や指導を行い、薬からの脱却もサポートしている。