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ドコモ「アハモ」値下げで始まった携帯料金のガチンコ戦争!?「もう横並びには飽きた」という声が圧倒的だが...

   携帯電話料金の大手3社「横並び」の構図が崩れ、ついに仁義なきバトルが始まるのか!

   NTTドコモが2021年3月1日、新料金プラン「ahamo」(アハモ)を月額280円値下げすると発表した。

   これは20GB(ギガバイト)で月額2980円(5分間のかけ放題含む)で同じだったKDDI(au)とソフトバンクより1割近く安くなる。

   さあ、KDDIとソフトバンクはどう出る? また「後出しジャンケン」で同じになるなら、もうユーザーの支持は得られなくなるが......。

  • さらに値下げするNTTドコモの「ahamao」(公式サイトより)
    さらに値下げするNTTドコモの「ahamao」(公式サイトより)
  • さらに値下げするNTTドコモの「ahamao」(公式サイトより)

朝日新聞に「値下げしない」と明言したドコモ社長だが...

   これまで携帯電話大手3社の値下げの動きは、事前に主要メディアに漏れて、発表日までに具体的な金額まで報道されることが多かった。ところが、今回のNTTドコモの「ahamo」の値下げについては、ほとんど報じられなかった。テレビ朝日が(2月27日6時29分配信)「NTTドコモ『アハモ』さらに値下げへ」という見出しの速報で、こう報じたくらいだった。

「NTTドコモはオンライン専用の新プラン『アハモ』について、現在の20ギガバイト月額2980円から、さらに値下げする方向で調整していることが関係者への取材でわかりました」

   発表日までに主な大手メディアの後追いも見当たらなかった。それは、朝日新聞がNTTドコモの井伊基之社長にインタビューし、「値下げはしない」と明言した記事を、2月26日付で掲載したこともあったかもしれない。「ドコモ井伊社長『格安スマホと連携強化』」の記事中で、井伊社長は3月26日にオンライン専用で始める新プラン「アハモ」については、こう語ったのだ=写真参照

3日前の朝日新聞インタビューでは「値下げしない」と明言していたNTTドコモの井伊基之社長(2月26日付)
3日前の朝日新聞インタビューでは「値下げしない」と明言していたNTTドコモの井伊基之社長(2月26日付)
「『アハモ』については無料通話分を分割せず、料金はそのまま据え置く方針だ。オンライン専用プランをめぐっては、KDDIとソフトバンクは無料通話分をオプションとし、2480円で提供する。井伊氏は、アハモの料金見直しについて『やらない』と明言。『若い人でも、お店の予約などで固定電話にかけるニーズはある』と説明した」

   ちなみに、朝日新聞デジタル版(2月26日付)のほうの井伊社長のインタビュー記事の見出しは「格安スマホと連携強化/アハモ料金見直さない ドコモ井伊社長に聞く」となっており、値下げをしないことが強調されていた。

   井伊氏自ら「値下げはしない」と明言してから、わずか3日後に突然の値下げ発表である。何があったのだろうか――。ライバルのソフトバンクが新料金プラン「LINEMO」(ラインモ)を3月17日から、KDDIも23日から新料金プラン「povo」(ポヴォ)を提供する。これまで2度、3度と2社から「後出しジャンケン」をされたNTTドコモとしては、二度と後出しをさせる時間を与えないためのカムフラージュだったのだろうか。

税込み価格で「3000円」を切るインパクト

携帯電話料金はどこまで安くなるか
携帯電話料金はどこまで安くなるか

   NTTドコモが3月1日に発表した資料によると、新料金プラン「ahamo」(アハモ)を、従来の20GB(ギガバイト)で月額2980円(税別)から2700円(税別、以下同)に280円値下げする。

   ライバルのKDDI(au)やソフトバンクの新プランでは、5分以内の無料通話(月額500円)をオプションとして2480円としている。このため、5分間かけ放題という利用条件をそろえれば、3社は月額2980円で横並びだった。

   ところが、ドコモは今回の値下げでライバル2社より総額で280円安くなるうえ、税込み価格では「2970円」と3000円を切ることになる。今年4月から消費税込みの価格表示が義務付けられることになり、「安さ」を訴えるインパクトがいっそう強くなるわけだ。

   併せて、同社発行のクレジットカード「dカード」ユーザーへの特典も追加する。今年9月から「dカード」ユーザーの場合、月間データ容量を1Gバイト追加。dカードGOLDの場合、5Gバイトを追加する。また、dカードGOLDについてはahamoと組み合わせることで、dカードGOLDの利用金額の10%のdポイントを付与するという(上限額は300ポイント)。

   ネット上では、今回のドコモの値下げについて、応援のエールが非常に多い。 ケータイ・スマホジャーナリストの石川温(つつむ)氏は、こう説明した。

「4月より消費税込みの総額表示が義務化されるなか、通信業界内では『2980円をアピールできなくなる。税込み3278円ではインパクトが弱い』と懸念されていた。NTTドコモはこのタイミングでうまいことahamoを値下げし、総額でも2970円という3000円を切る設定で攻めてきた。次のポイントとなるがKDDIとソフトバンクがどう対抗するか。2480円の総額表示は2728円でかなり中途半端。ahamoとの料金差も小さくなった。KDDIとソフトバンクは2480円を値下げしてくるのか、それとも500円の5分かけ放題だけを値下げして、3000円を切る値段にするのか。サービスが開始されるまで、しばらく3社のにらみ合いが続きそうだ」

   フリーランスジャーナリストの山口健太氏も、こう指摘する。

「(ドコモの)5分かけ放題で税込み2970円は、他社より1割安い計算になります。dカードGOLDの10%還元も引き継がれ、ドコモユーザーはさらにお得になりそうです。対応機種はiPhoneがiPhone 6以降、Androidは72機種が発表されました。特にiPhone 11は、ahamoとセットで新規契約するとアップル直販より約2万円引きとお得です。サービス開始前に仕様変更が相次ぐことで混乱が増しているのは気になるところですが、他社がどう対抗してくるか注目です。3月後半に向けて、さらなる『後出し』があるかもしれません」

「5ギガの格安プランができれば大半が移行するのに」

   これでやっと本格的な「競争」になってきたと歓迎する声が多い。

「今までは『談合』としか思えない状況だったが、初めて競走らしきことになってきた。20Gも使わない人が多いのだから、もうひと声欲しいな」
「ここにきてさらに値下げは素直に凄いと思う。後出しで出したau、ソフトバンクはahamoを越えられなかったかなと思う」
「おおー、他より実質280円安いのか! これでもかと横並びにしてくる他社にいい印象がなかったですが、一歩抜きんでたのは素晴らしいですね。後出し有利な状況でしたが、先行して今回の流れを作ったドコモは応援したいです」
「ドコモはNTTと経営統合したことで、いまや実質政府の子会社ですもんね。そりゃ純粋な営利企業であるソフトバンクやKDDIと比べて強気にいけるわ」

   もっとも、ドコモに対する注文の声も多い。

「通常のプランをもっと安くしてくれないかな? すぐ乗り換えるユーザーを大事にするのは昔から同じだけど、本来は何十年も乗り換えずにとどまってくれるユーザーを大切にすべきでは?」
「たぶん多くの人にとっては破格のプランなのだろうけど、家族全員ドコモ継続17年、ドコモ光セット割、子育て応援などなどを利用している私にとってはそれらの割引やサービスがなくなるので、得なのか損なのかいまいちピンとこない」
「UQもワイモバイルも、3GBの次に一気に15GBに飛ぶので、この間を刻んで欲しい。3GBじゃ足りないからと15GBのプランにしたら、値段的にahomaとかと同じになっちゃうから、だったらこの20GBのプランにしようって思うけど、そもそも20GBもいらねーよと思う」
「3ギガは微妙に足りない。でも15ギガは多すぎるっていう人がほとんどじゃないかな。5ギガの格安プランができれば大半が移行すると思う」

   こうした声にはこんな反論が多かった。

「日本の携帯電話料金が高い高いという原因は、あのショップの広さと人の数。安い国は普通に駅のキオスクサイズの店に1人くらい。だからショップを利用しない人を安くするのは当然。あれこれ聞きたい人はその人件費を払うのが公平だ。毎回相談する人の分の人件費をみんなで持つなんてバカらしい」
「IT化が進むというのはこういうことです。店舗受付など手間のかかる高コストなサービスは高額となり、ahamoなどのネットに特化したサービスは便利で安価となる。消費者も知識を持って、ひと手間を惜しまずに行動しないと搾取され続ける。今後モバイル以外のさまざまなサービスでそうなっていくと予測されます。日本人は特に疎いのですが、サービスは有料なのですよ。良いか悪いかではなく時代の変化です」

(福田和郎)