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変異ウイルスの猛攻撃に東京・大阪が落城なのに 五輪アスリートにワクチン優先接種ってマジか!(2)

   新型コロナウイルスの変異株の感染拡大が止まらない。大阪府では2021年4月8日、ついに新規感染者が900人台に突入した。東京都と京都府、沖縄県も「まん延防止等重点措置」を、政府に要請する事態に陥った。

   これほど全国に感染が広がっているのに、政府は何が何でも東京五輪・パラリンピックを開催するつもりのようだ。なんと、五輪のアスリートに優先的にワクチン接種を行うことを検討しているという報道が流れた。

   加藤勝信官房長官は即座に報道を否定したが、ネット上では怒りが沸騰している。

「聖火リレーの強引なやり方を見ても、今の政府ならやりかねない」

   という見方が圧倒的だ。いったい、どうなっているのか――。

  • まん延防止等重点措置の適用を要請した東京都
    まん延防止等重点措置の適用を要請した東京都
  • まん延防止等重点措置の適用を要請した東京都

外国人選手と濃厚接触する選手にワクチンを

   そんななか、何が何でも東京五輪を開きたい政府は、五輪のアスリートに優先的にワクチンを接種させようとしているという。

   産経新聞(4月8日付)「政府、オリパラ日本人選手へのワクチン優先接種を検討 6月下旬までに」が、こう伝える。

「政府が夏の東京五輪・パラリンピックに出場する日本人選手を対象に、ワクチンの優先接種を認める方向で調整に入ったことが4月7日、わかった。来日する外国人選手らと濃厚接触するリスクから選手を守るためで、対象者は600人以上になるとみられる。ただ、死亡リスクが高い65歳以上の高齢者への優先接種より先行することに反発も起こりかねず、世論を見極めながら検討を進める」
「今回の大会に向け、国際オリンピック委員会(IOC)は、選手らにワクチンの接種を義務付けていない。選手らを隔離し、検査を徹底することで感染拡大を防ぐことができると判断しているからだ。しかし、政府や五輪組織委員会には、外国人選手と濃厚接触する可能性の高い競技の選手に限り、優先接種すべきだという意見も強い。ただ、政府や組織委が懸念するのは、貴重なワクチンを選手に優先接種させることで、開催そのものへの反対論が一層強まることだ。『死亡リスクの高い高齢者より選手を優先するのか』という批判も起きかねず、政府は世論の動向も踏まえて最終判断する」

   同様のニュースは、共同通信(4月8日付)も配信した。こうした情報について、加藤勝信官房長官は4月8日午前の記者会見で、

「五輪アスリートへのワクチンの優先接種は、検討したこともないし、今後も検討する計画はない」

   と打ち消しに大わらわだった。

「第三者機関に五輪開催の是非を諮ろう」

第三者機関で五輪開催の是非を問えと訴える国民民主党の玉木雄一郎代表
第三者機関で五輪開催の是非を問えと訴える国民民主党の玉木雄一郎代表

   こうしたドタバタ劇を見て、激怒したのが国民民主党の玉木雄一郎代表だ。4月8日の記者会見で、

「東京五輪・パラリンピックは、首都圏にまん延防止等重点措置が出される今の感染状況を客観的にみると、本当に開催できるのか。個人的には疑問に思う。第三者機関を設けて慎重に検討すべきだ。開催となれば、1万人近い医療関係者の投入が必要になる。きちんとした戦略を示さないと非常に厳しい。気合と根性で突っ切る状況は過ぎている」

   と訴えた。そして、アスリートのワクチン優先接種にも疑問を投げかけた。

「政府が、五輪選手のワクチン優先接種を検討しているとすれば、本当に国民的な理解と納得が得られるか疑問だ。政府が優先接種を開催ありきで無理やり順位を変えている気がする。選手自身が非常に後ろめたさを感じ、悩ませることになる」

   と語ったのだった。

一般国民のほとんどがワクチン接種できないでいる
一般国民のほとんどがワクチン接種できないでいる

   ちなみに、共産党の志位和夫委員長もすでに五輪中止を何度も強く主張している。

   今回の東京都のまん延防止等重点措置の適用について、ネットでは疑問の声が多く上がった。変異ウイルスの猛威に効果があるのか、というわけだ。

   エコノミストで経済評論家の門倉貴史氏は、こう指摘した。

「東京都の適用対象地域は、23区と多摩地域とする方向で調整しているということだが、経済活動の制限という点では東京都全体に緊急事態宣言を出すのとほぼ同じ内容になり、経済損失がほぼ同額になる。それならば、最初から「緊急事態宣言を出したほうが、感染対策の費用対効果は大きくなる。まん延防止等重点措置では、どうしてもアナウンスメント効果が弱いものになってしまう」

   こんな批判の声が相次いだ。

「2020年を振り返ってみる。
3月「この1か月が勝負」
4月「緊急事態宣言」
5月「GWも自粛」
7月「この夏は特別な夏」
8月「夏休みも自粛」
9月「この連休がヤマ」
11月「我慢の3連休」
12月「短期集中で自粛」「年末年始特別警報」「真剣勝負の3週間」
2021年も振り返ってみる。
1月「また緊急事態」
2月「延長」
3月「さらに延長」
4月「6月までが正念場」「これまでで最大の危機」
で、こんどは何ですか?
「まん延防止措置と緊急事態宣言は何が違うのでしょうか。まん延防止、まん延防止って、もうとっくに日本中にまん延しているじゃないか。強制力なき宣言は言葉遊びにしか映りません。死活問題から過料覚悟で時間を守らない店もあります、外出自粛も限界となっているなかこの先何を目標に発出するかを明確にしないと、いたずらに時間だけが経過するだけです。五輪を再検討する姿勢を示すなど具体的な方策・対策を講じないと止まりません」

アスリート自身も肩身の狭い思いを感じる

アスリートには優先的にワクチンを接種される?
アスリートには優先的にワクチンを接種される?

   五輪アスリートに優先的にワクチン接種するという情報については、怒りの声であふれた。

   東洋大学ライフデザイン学部・准教授の高野龍昭氏は、こう指摘した。

「ハイリスクの高齢者のみならず、医療従事者へのワクチン接種すら十分に見通せていない段階で、五輪選手への優先接種を検討することは、国民のコンセンサスが得られないと思われます。とりわけ、優先接種で『後回し』とされている全国約200万人の介護従事者は複雑な感情を禁じ得ないでしょう」

   弁護士の佐藤みのりさんは、こう指摘した。

「現状限られているワクチンを、誰がどのような順番で受けるかという問題は、国民の生命・健康、ひいては憲法が保障している国民の人権すべてに影響を及ぼす重要な問題です。五輪については『ワクチンを前提としなくても安全・安心な大会を開催する』と組織委員会の橋本会長も述べているところです。開催そのものについて賛否が分かれている今、本当に国民の理解が得られるのか、正しい政治判断が求められています」

   こんな怒りの声が相次いだ。

「オリンピック延期が決まった昨年3月24日の1日当たりの感染者数は、東京で約40人、全国で約70人、米国1万人、ドイツ4000人であったが、現在ではどこもその10倍以上。こんな状況でもオリンピック・ファーストとは狂っているとしかいいようがない」
「聖火リレーと並んで、もはやなりふり構わずとはこのことだな。アスリートたちもますます肩身の狭さを感じるだろうな。純粋に選手を応援しようとした国民も冷めて離れるのではないか」
「有森裕子さんが『アスリートファーストではない。社会ファーストだ』と言われていましたが、五輪より大切なものが他にもあるでしょう。まず国民の命を第一にするのが政府の責任です」

(福田和郎)