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給与のデジタル払い、26%の企業が「検討」 受け取る側は4割「反対」

   政府が解禁の方針を示している「給与のデジタル払い」。厚生労働省は2021年度のできるだけ早期に制度化を目指すことを表明している。

   給与デジタル払いは、スマートフォンの決済アプリに直接入金して銀行口座を介さない仕組み。議論が盛んになるなか、支払う側の企業を対象にした調査と、受け取る側の労働者を対象にした調査の結果が相次いで公表された。 その結果、企業の約26%がすでに導入を検討している一方で、労働者の約40%が「反対」していることがわかった。

  • 給与が「残高」になる?(写真はイメージ)
    給与が「残高」になる?(写真はイメージ)
  • 給与が「残高」になる?(写真はイメージ)

(中見出し)従業員へのポイント還元も

   ビジネスアプリケーションを手がけるソフトウエアメーカー、株式会社WorksHumanIntelligence(ワークスヒューマンインテリジェンス)は、大手企業247社を対象に、給与デジタル払いに関するアンケート調査(期間は2021年2~3月)を実施。それによると、給与のデジタル払いを検討しているか、あるいは検討を予定している企業は26.3%だった。

   「検討していないし、利用の予定もない」が72.9%と大多数を占め、「すでに検討していて、利用予定」は1社だけ。「検討しているが利用しない予定」と回答したのも1社だけだった=下の円グラフ参照

   企業が給与のデジタル払いを検討する場合、どんなメリットを考えてのことなのか。複数選択で回答を求めたところ、134社が回答。利用検討の目的としてトップになったのは「銀行振込手数料の削減」(55.2%)だった。給与のデジタル払いは、資金移動業者のサービスを使って給与を渡すことになり、各決済サービスの「残高」としてチャージされるので、手数料はゼロか少額になる見込み。コスト削減につながる可能性がある。

   次いで「第2口座などと同様な従業員への便益」で47.8%。給与デジタル払いでは、数回に分けた少額ずつの給与支払いが可能になる見込みで、たとえば従業員の希望に応じて給与を支払うことができるようになる。銀行振込では、手数料などのコスト削減から、ほとんどの場合が毎月1回の支払いに限定されている。そのほか、「イシュア(デジタル通貨の発行元)からのポイント付与による従業員への還元」との答えが22.4%あった。また、銀行口座を持たない外国籍の社員への支払いが便利になるという声も寄せられた。

   給与のデジタル払いを実施する場合に考えられる障壁を聞いたところ、「システムインフラの投資コスト」が63.2%と最も多く、次いで「担当者の対応工数」(60.0%)が挙げられた。

労働者側、年代上がるほど「反対」多く

   一方、給与のデジタル払いについて、給与を受け取る側を対象に調査したのは日本トレンドリサーチ。2021年4月6、7日の両日、事前調査で給与を「受け取っている」と回答した男女1000人にアンケートを実施した。4月9日の発表。

   「給与のデジタル払いについて、あなたはどう思うか」を聞いたところ、「賛成」22.1%、「反対」40.9%、「どちらとも言えない」37.0%という結果になった。

   年代別にみると、30代では「反対」が37.1%で、40代は40.2%、50代が40.5%、60代では44.0%と、年代が上がるにつれて「反対」が多くなった。

   「反対」理由をみると、

「家賃や公共料金など、現金での引き落としや振り込みで支払うものがあるから」(40代女性)
「いつも給料日に全額おろして、用途に分けているので」(60代男性)

など、振り込みがライフサイクルに組み込まれていることを挙げる意見が寄せられた。