2024年 4月 19日 (金)

補助金だけ受け取りコロナ患者の入院拒否ってアリ? 厚労省がトンデモ病院の調査開始(1)

   新型コロナウイルスに感染しながら自宅療養を迫られている人が全国に10万人近くいるなか、補助金だけ受け取ってコロナ患者の入院を拒否する医療機関がかなりあるという。

   ひっ迫しているコロナ患者の病床を確保するため、厚生労働省は2021年8月20日、そうした「トンデモ病院」の実態にメスを入れるべく、補助金の使われ方の調査に乗り出した。

   新型コロナウイルスと戦う多くの医療従事者の陰で、そんな「悪徳医師」が本当にいるのだろうか――。

  • コロナと戦う医療従事者(写真はイメージ)
    コロナと戦う医療従事者(写真はイメージ)
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1床当たり2000万円近い補助金が病院に出る

補助金の使い道を調査すると公言した田村憲久厚生労働相
補助金の使い道を調査すると公言した田村憲久厚生労働相

   堪忍袋の緒を切った厚生労働省の動きを、NHKニュース(8月20日付)「新型コロナ病床確保へ 田村厚生労働相、医療機関への補助金適切か調査へ」が、こう伝える。

「新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、自治体が公表している確保病床数よりも実際の入院者数が少ないとして、田村憲久厚生労働大臣は、病床を確保した医療機関に支払われる補助金が適切に使われているか、東京都などと実態調査を行う考えを示しました。新型コロナへの対応をめぐり、政府は、新たに病床を確保した医療機関を対象に1床当たり最大で1950万円を補助していますが、東京都ではおよそ6000床ある確保病床のうち、使用率は60%余りにとどまっています」

   1床当たり2000万円近い補助金を病院に出しながら、使えない病床が4割近くも出ているという。東京都では8月22日現在、入院できずに自宅療養を余儀なくされている人が2万4704人もいるというのに......。

   加藤勝信官房長官も同日の記者会見で、

「医療機関が、正当な理由なく都道府県の要請に応じず、適切に入院受け入れを行っていない場合、病床確保料の対象とならないこともあり得る」

と述べた。「補助金の返還を求める」と脅したのだった。当然のことだろう。

   いったいなぜこんな事態になったのか――。日本経済新聞(8月20日付)「政府、コロナ病床実態調査へ 補助金受け消極的な病院も」が、こう解説する。

「日本は一般病床と感染病床が計88万9000床あり、世界的に多い。それでもコロナ禍では病床不足が常に問題になっていた。政府は今年3月、昨冬の感染者の2倍想定で病床の上積みを都道府県に求めた。確保病床は全国で年初の約2万8000床から約3万7000床に増えた。都では4000床から(6000床と)1.5倍になった。
足元では病状が悪化しても入院できない患者が相次ぐ。各地で病床使用率が6~7割の段階でひっ迫が始まる。自治体と病院が協議して確保病床数を決めたのに、受け入れられない病院がある。厚生労働省は2020年末以降、新規に病床を確保すると、1床につき最大1950万円を支給する制度を設けた。空けておく病床に1日最大約43万円を補償する事業などに1兆円を投じた」

   日本経済新聞はこう続ける。

「入院要請を『原則速やかに受け入れ、正当な理由なく断らない』ことが支給要件だが、拒否する例がある。人員不足や別の病気で患者が埋まっている場合も正当な理由に当たるからだ。厚生労働省は再三、入院を断らないよう求める通知を出したが、協力しない病院の実態をつかめていない。補助金が患者受け入れにつながったのか、効果を検証してこなかった。
厚労省が8月6日付の文書で、患者を受け入れない場合は、補助金の返還請求する可能性も示唆した。その後、都が170の重点医療機関のうち、受け入れ実績が低い施設に聞き取りをしたところ、患者の受け入れが増えた」

   これまで協力をしてこなかった病院の実態を調査してこなかった厚労省もうかつだが、補助金の返還請求をチラつかせた途端、入院の受け入れが増えたというのだから、病院側の態度豹変にも呆れるばかりだ。

   日本経済新聞はこう結んでいる。

「政府には悪質な病院名を公表する案もあるが、病院との関係を悪化させるとの慎重論もある。公金を投じて病床を整備したのは、コロナ禍でも命を守り、社会経済活動を続けられるようにするためだ。その病床がフル稼働できず、自粛や営業活動が続くのでは、社会の理解を得られない」
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