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熾烈さ増す!? QRコード決済競争、第2幕 手数料有料化のペイペイが次に狙うのは......

   スマートフォン決済大手のPayPay(ペイペイ)は、サービス開始から無料にしてきた中小事業者向けの決済手数料を2021年10月以降は有料にすると発表した。

   これまで、資金力と営業力をフル活用して利用者と加盟店を増やし、スマホ決済で国内最大手の地位を固めてきたが、事業そのものは経費の「持ち出し状態」で赤字が続いている。有料化を契機に、最大手の強みを生かしたビジネスを推し進め、収益源に転換していく構えだ。

   2018年10月のサービス開始から3年間は中小事業者向けの決済手数料を無料にすると表明しており、その後の対応が注目されていた。

  • ペイペイ、10月から中小事業者向けの決済手数料を有料化(写真はイメージ)
    ペイペイ、10月から中小事業者向けの決済手数料を有料化(写真はイメージ)
  • ペイペイ、10月から中小事業者向けの決済手数料を有料化(写真はイメージ)

ペイペイ、QRコード決済シェアで6割弱

   2021年8月19日にペイペイが発表した内容は、クーポンの発行機能などをセットにした月額1980円のプランでは手数料率1.6%、決済のみならば1.98%にするというもの。バーコードやQRコードを使うコード決済としては、他社の2~3%と比べてなお低く、交通系ICカードなどの電子マネーで主流となっている3%程度よりも水準を抑えた。

   同業他社にとって、ペイペイは引き続き手強い存在になりそうだ。

   ペイペイなどのQRコード決済を巡っては、スマホ本体の普及を背景にして2018年ごろから参入の動きが本格化した。相乗効果が期待できる携帯電話会社が特に注力しており、ソフトバンク系のペイペイをはじめ、NTTドコモはd払い、KDDIはauPAYを展開する。

   各サービスは取扱高を増やすために、キャンペーンを打って利用者を集める一方、地道な営業で加盟店を増やしていった。特にペイペイは「100億円キャンペーン」など利用に応じた大型還元で利用者を獲得。併せて中小事業者向け決済手数料を無料にすることで、街中の個人営業の店舗にも加盟店網を築き、加盟店網の厚さが利用を拡大させるという循環を生んでいる。

   こうした思い切った先行投資が奏功。QRコード決済そのものが政府の後押しもあって日本に定着していくなか、ペイペイはQRコード決済で6割弱のシェアを獲得した。

   他方、投資ばかりでは赤字垂れ流しになり、運営会社ペイペイの2021年3月期は726億円の営業赤字だった。

対抗する楽天ペイ、新たな中小加盟店の手数料を1年間無料

   最大手となったペイペイが、約束の3年の無料期間を終え、中小事業者の手数料も有料化して収益を改善しようとするのは、当然の流れだ。ただ、それだけでは激しい競争を勝ち抜ける保証はない。そこで、利用者に対してはペイペイのアプリで決済に絡むさまざまなサービスを展開する「スーパーアプリ」化を図る。

   すでにインターネット商店街「PayPayモール」やフードデリバリーの「UberEats」の注文・決済をペイペイのアプリからできるほか、お金を借りたり、PCR検査キットを購入したりすることも可能だ。

   それだけではない。スーパーアプリ化の布石として、ソフトバンク系の金融事業会社は名称をPayPayブランドへの統一を進めており、ジャパンネット銀行はPayPay銀行、ネット証券のOne Tap BUYはPayPay証券に社名を変更した。ペイペイに多額の先行投資を続けてきたのは、それが単なる決済アプリではなく、生活に関わるさまざまなサービスを提供する拠点として定着させ、リアルからバーチャルに移行している需要を囲い込む戦略があるからに他ならない。

   携帯電話大手系以外のスマホ決済サービスは長引く消耗戦で体力を奪われ、LINE PayはペイペイとQRコード決済を統合し、メルペイはd払いと連携を強めている。ペイペイの牙城を崩そうとする動きもあり、楽天グループが展開する楽天ペイは、ペイペイの手数料有料化のスキを突く形で、新たに加盟する中小店舗を対象に決済手数料を2021年10月から1年間実質無料にすると発表した。

   QRコード決済の熾烈な競争は、この秋、次のステージに移ることになる。(ジャーナリスト 済田経夫)